巣ごもり需要拡大で伸長した物販分野、16カテゴリーから見るEC市場動向

巣ごもり需要拡大で伸長した物販分野、16カテゴリーから見るEC市場動向

高 実那美

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本記事では、株式会社ケップルのアナリストが作成したレポート「【独自調査】EC運営を支えるスタートアップ(EC販売編)」の内容を基に、EC関連市場の動向を解説する。

なお、本記事では、当レポートで解説されている16種類のカテゴリーのうち、EC運用サポートのカテゴリーを抜粋している。

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アナリストによるEC関連スタートアップの各事業分野の詳細な解説
国内外151社を16カテゴリーに分類したカオスマップ
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Index

  • EC関連市場の動向
    • ハンドメイド領域
    • ギフト領域
  • おわりに

EC関連市場の動向

コロナ禍を経て多くの層でECでの購買行動が浸透したことにより、Amazonや楽天をはじめとした大手ショッピングモール型だけでなく、スタートアップなどによる分野ごとに特化したECサイトが誕生するなど、ECの多様化が進んでいる。

世界のBtoC領域のEC市場規模は、2022年に約4.4兆米ドルと評価され、2023-2030年のCAGR(年間平均成長率)は9.7%で推移すると予測されている※1。 AlibabaやAmazon、Rakutenをはじめとしたマーケットプレイスでは多種多様な商品の購買が可能で、消費者にとって利便性の高いサービスとなっている。

一ヶ月あたりの訪問者数は、1位のAmazonが約48億、2位のeBayが約12億※2で共に米国企業であるが、最近ではTemuやSHEINといった中国発ECの利用が米国で急速に拡大し脅威となっている。2022年には、SHEINの四半期単位のアプリダウンロード数がAmazonを越え、2023年3Qは前年比70%増と急成長している。

家電やアパレル、生活雑貨を販売するTemuとトレンド感を抑えたファッションアイテムを展開するSHEINの共通点は、徹底した流通網の管理により低価格と流行を抑えた商品展開を両立させていることだ。米国ではインフレにより経済的に余裕のない消費者や流行に敏感なZ世代を中心にユーザーが増加している。配送日数はAmazonに比べ長いが、不便さよりも価格の安さを優先する消費者心理が伺える。またクーポンやタイムセールに関する通知を頻繁に送ることで、ユーザーが何度もアクセスしたくなる仕組みを作り上げている。

これに対してAmazonは販売価格を合わせるような措置は講じていないが、20ドル以下のアパレルアイテムの販売手数料引き下げを発表しており、低価格アイテムの出品者を囲い込む狙いがあると考えられる。さらに今後どのような対応を行うかが注目される。

TemuとSHEINは共に日本をはじめとしたアジア諸国への進出を果たしている。資源の高騰や円安による生活必需品の値上げもあり、高品質で値段の高いものより低価格の商品を購入しようとする消費者は多いと考えられ、今後も拡大が予想される。

一方で、低価格を実現するために、低賃金や劣悪な労働環境で運営しているのではないかといった懸念があり、長期的に発展していけるかどうかは、こうした課題を消費者に理解できる形でクリアできるかどうかに掛かっている。

ECの市場規模拡大に伴い、企業のEC構築を支援する様々なサービスが誕生している。それにより中小企業や個人でもEC事業へ参入することが可能となり、EC市場のさらなる拡大を後押ししている。

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企業がECへの参入を検討する場合、①Amazonや楽天といった大手ショッピングモール型ECに出店する、②自社サイトにECを組み入れる、という2つの選択肢がある。①のメリットとして、集客が期待でき構築や運営が簡単で物流支援などが充実している点が挙げられるが、出店料がかかり規定も多くブランドの独自性を確立しにくいといったデメリットがある。②のメリットとしては、自社運営のため利益率が高く、マーケティング施策が自由に行えるためブランディングしやすいといった点が挙げられる。一方で初期費用が高く集客に時間が掛かるといったデメリットがある。

双方のメリット・デメリットを踏まえた上で、現在では②に関連して特定の商品に特化したプラットフォームやDtoCブランドが注目されている。例えば、ペットフードやギフトに特化したプラットフォームでは、商品情報や関連情報が豊富で商品選びがしやすいといった利点がある。またDtoCでは、仲介業者が存在しないため、中間コストを削減できると同時に、ブランドのコンセプトが消費者へ伝わりやすいといったメリットが挙げられる。

国内のBtoC-ECの市場規模は、2022年に22.7兆円となり前年比9.9%増と拡大している。このうち食品や生活用品、衣類などを含めた物販系が約14兆円となり、61.7%を占めている。旅行をはじめとしたサービス系分野は約6.1兆円、オンラインゲームや音楽配信を含むデジタル系分野は約2.6兆円となっている※3。物販系分野はコロナ禍による巣ごもり需要の拡大により、特に食品関連で前年比9.2%増と最も需要を伸ばしており、新たにEC事業へ参入する企業も増え、ECで食品を購入するという消費者行動も定着してきた。

本記事ではKEPPLE REPORTで触れる16カテゴリーのうち、ハンドメイド、ギフト領域の事業について紹介する。

ハンドメイド領域

ハンドメイド市場の世界規模は2022年に約9160億米ドルとされ、2030年にかけてCAGR10.1%で推移すると予想されている※4。 成長の背景にはECによる流通が普及したことにより、個人作家でも商品の販売が簡単に行える仕組みが整ったことや、大量生産品ではなく一点ものの商品に対する購入ニーズの高まりがある。

また、ハンドメイドマーケットはCtoCのマーケットプレイスに分類されるが、同じくCtoCのマーケットプレイスとされるメルカリをはじめとしたフリマアプリでも、中古品に加えハンドメイド品の売買が行われている。本カテゴリーでは、作品の世界観やストーリーを消費者に伝えることができ、出店へのサポートも充実しているハンドメイドに特化したEC企業を挙げている。

国内の代表的なマーケットプレイスには、GMOペパボが運営する「minne」や2020年に上場を果たしたクリーマが運営する「Creema」が挙げられる。ハンドメイドによるアクセサリーやバッグ、衣類、生活雑貨などに加え食品の販売・購入を行うことができる。また大規模なハンドメイドイベントの運営も行っている。クリーマの登録作家は24万人、登録作品数1400万を越え、クリエイターの活動を支援するクラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」も運営している。

国内スタートアップでは、個人や小規模生産者による手芸品、アンティーク、食品などのマーケットプレイスを運営するiichiを挙げている。出店は3万ショップ、40万アイテムと「Creema」などと比較して規模は小さいが、小規模事業者の出店が多く完成度の高い作品を購入することができるとされている。

海外では米国発の上場企業Etsyが代表的なマーケットプレイスとして知られている。設立から10年の2015年に上場した同社は、ジュエリーや生活雑貨、ビンテージアイテム、ギフトといった様々なハンドメイド作品を売買するマーケットプレイスを運営している。2022年のアクティブ作家数は747万人、アクティブ購入者は約9600万人とされ※5、2022年の流通取引総額は133億米ドル※6で世界最大のハンドメイドマーケットとなっている。機械翻訳を活用し作家と購入者の言語の障壁を解消することで、円滑なコミュニケーションを行うことができるため、国境を越えたオーダー品やカスタム品の取引も拡大しているとされる。2021年にはリセール市場への拡大を目指し、ロンドン発で古着売買のECプラットフォームを運営するDepopを買収している。

ギフト領域

2021年の国内ギフト市場規模は約10.1兆円(小売金額ベース)となり、2023年は約10.7兆円に増加すると予想されている※7。お歳暮やお中元といった儀礼的な贈り物は減少傾向にあるが、クリスマス、誕生日といった年間行事や、結婚、昇進といった個人のライフイベントに際し、カジュアルなギフトを送る流れが加速している。

代表的な上場企業では、住所を知らない相手にもオンラインで簡単にギフトを送るECサイト「giftee」を運営するギフティが挙げられる。シーンや商品カテゴリーごとにデジタルギフトを含め数百円から商品を選ぶことができ、気軽にギフトを送り合える仕組みを構築している。法人向けサービスでは、販促キャンペーンや福利厚生に利用できるデジタルギフトプラットフォームの運営も行っている。

スタートアップでは、ギフトモールがAIレコメンド機能を搭載したギフト専門ECプラットフォーム「GiftMall」を運営しており、名入れやメッセージ対応などパーソナライズサービスに力を入れている。この他には、ギフトパッドが企業や自治体向けにメールやSNSで簡単にギフトを送ることができるサービスの運営を行っている。販促やマーケティング、株主優待、福利厚生などステークホルダーとの関係を保つのに役立つ仕組みを構築している。

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おわりに

EC構築領域でサービスを展開するスタートアップが増えるに連れて、自社のリソースが限られているスタートアップや中小企業でも、以前より容易に、そして費用を抑えながら自社製品をECとして提供することができるようになった。ECを用いて自社製品の販売を行う企業が増えるに連れて、各社差別化を図るために、特定の領域に特化して専門性を深めたり、他社と提携して周辺サービスも提供するなど付加価値構築への動きが目立っている。

消費者にとっては、「特定の商品を買うだけ」であればAmazonや楽天など、商品や価格を比較しながら購入する方が各社の自社ECサービスを使うより便利なことも多い。スタートアップにとって、商品を販売することを中心に、顧客が共感するストーリーや、多角的にエンゲージメントが生まれる周辺サービスの提供が今後差別化の鍵となるだろう。

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Writer

高 実那美

株式会社ケップル / New Business Development Manager

新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わる。

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