EC市場の変遷、拡大するEC構築支援の需要とは

EC市場の変遷、拡大するEC構築支援の需要とは

written by

高 実那美

本記事では、株式会社ケップルのアナリストが作成したレポート「【独自調査】EC運営を支えるスタートアップ(EC構築編)」の内容を基に、EC関連市場の動向を解説する。

なお、本記事では、当レポートで解説されている15種類のカテゴリーのうち、EC運用サポートのカテゴリーを抜粋している。

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目次

  1. EC構築関連市場の動向
  2. EC運用サポート
  3. おわりに

EC市場において長年不動の地位を獲得してきた米国Amazonに対し、中国発新興ECが脅威的な追い上げを見せるなど、EC業界へ変化の波が訪れている。

Amazonが2023年12月に発表した20ドル以下のアパレルアイテムの販売手数料引き下げは、SHEINやTemuといった低価格でアパレルを始めとした豊富なアイテムを販売する中国発ECへの対抗措置と見られている。特にSHEINはトレンドに敏感なZ世代を中心に米国市場で急成長を遂げており、2024年には上場するとの情報が出るなどAmazonにとって脅威的な存在となっている。勢力図の変化をはじめ、転換期を迎えるEC市場へ注目が集まっている。

BtoB、BtoCを含めた世界のEC市場規模は、2022年に約13.5兆米ドルとなり、2023年から2030年のCAGR(年平均成長率)は15.0%で推移すると予想されている※1。国別では、中国が世界最大の市場で、2024年には3.56兆米ドルの規模になると予想され、BtoCにおいては世界的な取引全体の半数を占めている※2

インターネットの利用者数が10.5億人を超えネット普及率74.4%※3と高い点や、Alipayをはじめとしたモバイル決済が浸透していることが背景にある。

EC構築関連市場の動向

また、独身の日とされる11月11日には、世界最大規模のECセールW11(ダブルイレブン)が開催され、ライブコマースやSNSの活用により買い物ムードが高まり売上が激増する。こうしたイベントの盛り上がりも中国ECの拡大を下支えしている。

中国における主要ECプラットフォームのシェアは、1位がTaobaoやTmallを運営するAlibaba(42.7%)、2位JD.com(19.1%)、3位Pinduoduo(15.5%)の順となっている※4。中国の勢いは国内だけに留まらず、TemuやSHEINといった中国発ECの利用が米国で拡大するなど、消費するだけでなく販売する側としても世界的な存在感を強めている。

中国の次にECの市場規模が大きいのは米国だ。米国内の事業者別シェアは、1位Amazon(37.6%)、2位Walmart(6.4%)、3位Apple(3.6%)の順で、長年Amazonが不動の地位を獲得している※5。次いで英国、日本、韓国の順となっており、中国を筆頭にアジアがECにおける主要市場だと言える※6。国内のBtoC ECの市場規模は、2022年に前年比約10%増の22.7兆円に拡大している。またBtoB ECは約420兆円で前年比約13%の増加となった※7

国内の主要プラットフォームは、1位楽天、2位Amazonジャパン、3位Yahoo!ショッピングの順となっている※8

市場の拡大に伴い、さまざまなビジネスモデルの構築が進んでいる。例えば、商品を仲介業者や店舗を通さずECサイトで消費者に直接届けるD2C(Direct to Customer)モデル、オンラインとオフラインを区別する事無く消費者の購買体験を支援するOMO(Online Merges with Offline)やオムニチャネル、サブスク構築支援、SNSとECを掛け合わせて販売を行うソーシャルコマース、ライブ配信による販売を行うライブコマースなどが挙げられる。

EC市場の拡大を受け、ECサイトの構築・運用を支援するサービスへの需要が高まっている。従来、EC構築にはシステム開発や運用に専門的な知識やスキルが必要であったが、近年ではSaaS型ECサイト構築サービスや専門企業などが増え、簡単にECサイトを構築・運用できる基盤が整ってきた。それにより、中小規模事業者や個人でもECサイトを活用したビジネスを行うことができるようになり、構築支援サービスの利用者の裾野が広がっている。特に、サイトの機能やデザインの高度化、顧客接点の多様化に対応したサービス、物流、ペイメントなど関連分野でのビジネスが台頭している。

世界のECソフトウェア市場は、2023年に71億米ドルとなる見込みで、2028年には135億米ドルになると予想されている (CAGR13.8%)※9。EC市場の成長はパンデミック時の急速な伸びと比べ鈍化しており、また参入企業が増えたことにより競争が激しくなっている。そういった中、顧客獲得や売上向上施策への需要が増しており、企業がECでの顧客獲得に掛ける費用は過去5年間で60%以上増加したというデータもある※10

EC運用サポート

このカテゴリーでは、ECを運営する企業に対して売上向上支援や購買データの分析、運用代行などを行う企業を挙げている。

自社でDtoCブランドを運営した知見を強みとして、ECに関するトータルソリューション事業を行うSUPER STUDIOは、ビジネスのEC化を支援するECプラットフォーム「ecforce」を開発する。

DtoCの 運営から得た課題を機能開発へ活かし、例えば、CVR(コンバージョンレート)向上が期待できるチャット型対話式フォーム「ecforce efo」や顧客の属性や行動を一元管理するパーソナライズシステム、EC特化型マーケティングオートメーションツール「ecforce ma」などの運営を行っている。

2023年10月には、「マーケティングからサプライチェーンまで、ブランド運営における全ての工程でデータを活用した最適なPDCA運用の実現を目指す」次世代EC構想として、オフライン市場への進出を掲げ、三井不動産などから約14億円の追加資金調達を行ったと発表した。

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この他には、ECモール上での消費者購買行動分析サービスを運営するマインディアや、運営や受注処理に関する業務を代行するアプロ総研など、ECの運営をサポートするさなざまな業態の企業を挙げている。

おわりに

EC構築や運用代行など、各企業のEC運営に必要なサポートを提供するスタートアップが国内外に多く存在することで、ECへの門戸が広がり、中小企業でもEC事業に参入できる環境作りに大きく貢献している。EC構築から運用まで全て一貫して代行業者に任せるほか、オムニチャネルやSNS支援など、自社の課題点となっているポイントの支援を強みとするサービスに頼ることもできる。

日本のEC化率は世界の水準に達しておらず、今後も伸びていくことが想定される一方で、EC構築領域でのサービスを提供するスタートアップも増え、競争が激化するだろう。既に特定の産業に特化してサービスを提供しているスタートアップが存在するように、今後ますます分業化・専門化が進むと想定される。

また、EC需要の成長を支えるためには、サプライチェーンの品質維持も重要な鍵である。物流でのテクノロジーにより、効率化・省人化を推進することが今後も重要な課題となるだろう。

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新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。

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  • #eコマース
  • #ec化支援
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