人生の意思決定を阻む「壁」を壊す──リプロネクスト、初の資金調達で1.2億円

人生の意思決定を阻む「壁」を壊す──リプロネクスト、初の資金調達で1.2億円

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体験型デジタルスペース「Roomiq(ルーミック)」と対話型AIコンシェルジュ「NOIM(ノイム)」を提供する株式会社リプロネクストが、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により1.2億円を調達した。進学・就職・転職・移住・住宅や車の購入といった人生の転機に関わる意思決定を、デジタルで支援する新たなデジタル体験基盤の構築を目指す。

創業2017年、新潟発のスタートアップとして9年間にわたり外部資本を受け入れずに事業を継続してきており、今回が初めての外部調達となる。Roomiqは、NTTグループから事業を承継したメタバース基盤をベースに展開し、累計26万以上の空間データを保有するという。自治体の移住促進や大学のデジタルオープンキャンパスなど、幅広い領域で導入が進む。

代表取締役の藤田献児氏に、事業の背景から今後の展望までを訊いた。

メタバース・AIコンシェルジュで「夜10時に開いている会社」を実現する

──まず事業内容を教えてください。

藤田氏: 私たちは「人生の大きな決断」を支える2つのプロダクト「NOIM」と「Roomiq」を展開しています。

NOIMは対話型のAIコンシェルジュで、ユーザーの不安や疑問を対話形式で整理し、検討を前に進めます。Roomiqは施設やサービスを3D空間で可視化し、オンラインで疑似体験できる環境を提供するものです。料金モデルは構築の初期費用と、月額利用料としています。

私たちが向き合っているのは、人生の転機における意思決定の場面です。進学・就職・転職・移住・住宅や車の購入といった選択は、本来であれば現物を見たり、現地に足を運んだり、関係者に話を聞いたりしながら進めるもの。一方で、多くの社会人は昼間に働いているため、情報収集や検討は夜間に行うことになります。ところが、その時間帯には会社も施設も大学も閉まっていて、体験も相談もできない。この「時間の壁」が大きな課題だと考えています。

──顧客はどのような企業・団体になりますか。

大学や事業会社の採用担当部署、住宅会社、車のメーカーや販売会社、自治体の移住・観光を担う部署などが主なターゲットです。現在は自治体が約半数を占めますが、自治体は全国で1700程度と数に限りがあるため、今後は事業会社の比率を高めていく考えです。

──AIコンシェルジュ「NOIM」とChatGPTなど汎用AIとの違いはどこにあるのでしょうか。

スマートフォンが普及したように、今後は誰もがパーソナルAIを持つ時代になると思います。こうしたAIは、たとえばシャンプー選びのような日常的な判断には向いている。一方で、キャリアや住まいといった大きな意思決定には正解がありません。「汎用AIに勧められたから」というだけでは、なかなか決心はつかないはずです。

大きな意思決定の場面には、相談したい相手がいる。入社を検討している会社、購入を考えている住宅の担当者に、直接話を聞きたいわけです。私たちのNOIMはまさにその部分を担っています。汎用AIが転職先候補を5社に絞るところまで支援するとすれば、私たちはその先、実際に体験・相談して意思決定する場面に寄り添うプロダクトです。

NOIMのUI:チャット形式で相談することができる。(画像:同社ウェブサイトより)
NOIMのUI:チャット形式で相談することができる。(画像:同社ウェブサイトより)

──NOIMの特徴的な機能を教えてください。

一般的なチャットボットは「営業時間は何時ですか」といったFAQ対応が中心です。NOIMが重視しているのは、ユーザーの不安を先回りして整理し、問いを立てることです。

たとえば移住を検討している方が「何を準備すればいいですか」という漠然とした場合、完全移住なのか二拠点生活なのか、地域との関わり方はどの程度を希望するのかといった問いを順に立てていきます。家族構成や、コミュニティとの密な関わりを希望するかどうかなどの要素に応じて、適切なイベントなどの情報を提供します。

NOIMとのやり取りは朝8時など出勤前の時間帯や、夜間など、相談窓口が開いていない時間帯に行われることが多いです。導入先にとっては、窓口が閉まっている時間帯にもユーザーとの接点を持てるため、営業時間を大きく広げるような効果が期待できます。

なお、NOIMは既存のAI基盤モデルを活用しつつ、各自治体・企業のRAGデータを組み合わせた設計です。ハルシネーション(誤情報の生成)が起きないよう、分からないことは分からないと答える設計にしています。

「人生3万日」が起業を後押しした

──創業の背景を教えてください。

幼少期の経験から漠然と「人生を通して社会に貢献したい」という想いを持っていました。

そんな時にふと「人生は約30000日」というフレーズを目にして、自分が間もなく生まれて10000日目を迎えることを知り「次の10000日は、人の役に立とう」と10001日目をリプロネクストの設立日にしました。

「BREAK THE WALL」というビジョンは、その時からずっと変わっていません。距離の壁、時間の壁、心理の壁——人生の意思決定を阻む壁を壊していくという意志を、社名とともに掲げてきました。

──最初からVR事業でスタートしたのでしょうか。

そうです。日本は人口減少が続いていて、何もしなければ経済は縮小していく。距離の壁をなくすビジネスができれば、その課題に向き合えるのではないかと考えてVR事業からスタートしました。

ただ、1年目は週5日アルバイトをしながらの状態で、仕事はほぼない。最初の5年ほどはWeb制作でもチラシ作成でも、仕事があれば何でも引き受けました。

その中で、大学のオープンキャンパスをメタバースで開催するようになって見えてきたのが、時間のミスマッチです。大学は昼間にイベントを開きたいけれど、高校生は学校がある。転職活動をする社会人は夜に企業のことを調べたいけれど、企業は閉まっている。この構造的なずれを解決しようと、約2年前からNOIMの開発に着手しました。

──Roomiqの経緯についても伺えますか。

Roomiqの前身は、NTTグループが手がけていたメタバース基盤です。私たちはもともとそのプラットフォーム上で空間の制作を行っていました。

ところが、NTT側がその事業を終了する決定をしたんです。プラットフォームがなくなればこちらも成り立たない。「ならば買い取らせてほしい」と交渉し、約半年かけて昨年5月に事業を承継しました。現在は累計26万以上の空間データを保有しています。

Roomiqでは、イベント会場のブースに資料やウェブサイトのURLを設置したり、音声会話をしたり、美術展を開催したりするなど、幅広いことができる。(画像:同社ウェブサイトより)
Roomiqでは、イベント会場のブースに資料やウェブサイトのURLを設置したり、音声会話をしたり、美術展を開催したりするなど、幅広いことができる。(画像:同社ウェブサイトより)

9年間の自己資本経営を経て、一気にスケール目指す

──今回、外部資本の受け入れに踏み切った理由は。

市場と技術の両面で、スケールできると確信が持てたからです。スピードを持って事業拡大していくためには、自己資本では限界があると判断しました。

周囲の起業家からは「ここまで自己調達でやってきたなら、そのまま自分のペースで続けた方が楽しく生きられるんじゃないか」という声もありました。資金調達により、投資家に求められる成果やスピード感が変わることへの懸念でした。ただ、創業時から「社会で一番インパクトを出せる事業をやる」と決めていた。今ここで踏み込めれば、本当に世の中を変えられるチャレンジができると思っています。

──今後の展望をお聞かせください。

Amazonが「何でも買えるプラットフォーム」になったように、人生の転機となるような決断や大きな買い物をする際には、必ずNOIMやRoomiqに触れてもらえる状況をつくることが最終的な目標です。

学生がアルバイト終わりの夜10時にスマートフォンを開いたら、気になる会社のデジタル空間が目の前に広がっていて、NOIMが迎えてくれる。まるで採用担当が自分一人のためだけに会社説明会を開いてくれているような体験です。

今は会社や大学が決めた場所・時間・プログラムに人が合わせる場面が多いです。今後は行きたい場所へいつでもアクセスでき、聞きたいことをいつでも聞けるような環境をつくりたい。それが私たちが実現したい世界観です。

車や住宅など、業界を絞って深く入るという選択肢もあります。ただ、長い目で見たときに、住宅業界のためのサービスでも、観光業界のためのサービスでもなく、その人個人の人生の意思決定のタイミングに寄り添うプロダクトにしたい。当面は、NOIMやRoomiqが実際の意思決定につながるかを重要な検証テーマとしながら、導入領域を広げていきます。

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