株式会社ROMS
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物流・製造業向けに自動倉庫などの自動化ソリューションを提供する株式会社ROMSは、総額13億円規模の資金調達を実施した。今回の調達では、既存投資家であるDNX Ventures、UTEC、Spiral Innovation Partners、BRICKS FUND TOKYOに加えて、新たにGLPグループ傘下のMonoful Venture Partnersが参加。また、4社の金融機関からのベンチャーデット調達も含まれる。
ROMSは2019年創業のスタートアップで、EC・物流・製造業を中心とした企業に対し、100〜500㎡規模の小型自動倉庫システム「Nano-Stream」や、ロボットによるピッキングステーション、自動仕分け機「Nano-Sorter」などを自社で開発・販売している。ファブレス体制を採るが、ハード・ソフト・UIすべてを内製化し、短納期・柔軟性・日本製という特徴を武器に市場を開拓してきた。

同社の取締役 経営戦略室長 阿部翔太郎氏は、外資系投資銀行、ラグジュアリーブランド、MBA、戦略コンサルティングファームを経て2021年にROMSに参画。現在は経営戦略、事業開発・パートナリング、マーケティング/PRを統括している。
阿部氏によれば、自動倉庫市場はこれまで大規模案件に偏っていたが、人手不足に悩む中堅・中小企業からの需要が顕在化しており、ROMSは「スモールスタート可能な自動倉庫」としてその受け皿となることを目指しているという。「大手が対応しない100㎡からの設備投資に応えられる、日本製かつ短納期の自動化ソリューションが求められている」と阿部氏は語る。

ROMSのソリューションは、柔軟な構成と拡張性を特長としており、AGVやクレーンの追加導入が容易で、繁忙期のみのレンタル対応も可能だ。さらに、汎用品の活用により保守・調達面での可用性が高く、日本製への信頼感も顧客から評価されている。また、内製比率の高さにより導入後のカスタマイズ対応力も高く、「要件定義から運用支援まで一貫して対応できる体制」がROMSの大きな競争優位性となっている。

現在の顧客構成は3PLや製造業が中心で、「装工」と呼ばれる工場構内物流などへの導入も進んでいるという。導入実績は年間5〜6件の案件受注ペースを維持しており、リードタイムの長い大型設備ビジネスにおいては順調な成長といえる。
今回の資金調達は、前回ラウンド(2022年)以降に主力の提供先を小売業から物流・製造業へと拡大した変化を踏まえたもので、事業の方向性がより明確になったことへの評価が背景にある。特に、新たに参画したMonoful Venture Partnersとの提携により、GLPが展開する大規模物流施設との連携が見込まれており、倉庫不動産とのネットワーク活用を通じた事業加速が期待される。
阿部氏はまた、今後の展望として「工場自動化(FA領域)や米国市場への進出」を視野に入れており、米国にはすでに事務所を開設したことも明かした。現在は日本市場に売上の大半を依存しているが、3〜5年後には物流とFA領域の売上バランスを均衡させ、国内外市場の双方でスケールを図る構えだ。特に、自動車産業をはじめとする製造業との連携を強化し、工場内のライン自動化などにも対応していく方針だという。
プロダクト面でも、来期には新たな次世代モデルの発表を予定しており、「短納期で導入できる自動倉庫の進化系」を自社内で開発中だ。これは、海外勢が毎年のように新製品を投入する中、日本発スタートアップとしての開発力を示す重要なマイルストーンになる。
業界では「物流の自動化」が語られることが多いが、実態はまだ1%程度の現場にしか導入が進んでいないと阿部氏は指摘する。「ハードウェア起点のディープテック・スタートアップとして、地道に現場と向き合いながら社会課題の解決に貢献していきたい」と今後の意気込みを語った。
