店舗運営を革新する自律ロボット、MUSEが創造する小売業界の新常識

店舗運営を革新する自律ロボット、MUSEが創造する小売業界の新常識

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KEPPLE編集部


近年、さまざまな業界でロボットの活用が進んでいる。たとえば、物流業界では倉庫や工場での入出庫、ピッキング、仕分けを行う「物流ロボット」が普及している。高齢化による人手不足や、ECの普及による流通増加への対応の期待から、その需要が高まる。

矢野経済研究所によると、2021年度の物流ロボティクス市場は前年度比127.5%の242億9000万円で、2022年度には299億8000万円まで増加すると予測されている。EC需要や物流業界の人手不足を理由に、物流倉庫内の自動化ニーズは今後も高まり続け、2025年には604億円規模にまで成長するとしている。

ロボティクスの需要が高まり、倉庫や工場、飲食店でのロボット利用が増加する中、小売業界への活用には課題が残る。店舗では買い物客の通行も多いことや、ロボットに求められる機能要件が多いことなどが要因として挙げられる。

こうした小売店舗での品出し業務に最適化したロボットを開発するのが株式会社MUSEだ。

小売店舗に最適化したストアロボット

MUSEが開発する「Armo」は、小売店舗での利用に最適化された自律移動ロボットだ。同社が主なターゲットとする、大型の小売店舗内における品出しの搬送作業を自動化することで、スタッフは商品の積み替えや陳列作業に専念することができる。

Armoイメージ
形状はロボット掃除機に似ており、小型だ。Armoに搬送ユニットを取り付けて利用することで、バックヤードと商品棚の間の搬送を自動化する。

搬送ユニットのほか、複数の拡張ユニットを今後開発予定だ。撮影ユニットに付け替えることで売場を巡回し、リアルタイムな欠品検知や商品の補充に活用することもできる。

売場情報の収集
また、同社は売場画像可視化サービス「Eureka Platform」を開発する。Armoを通して撮影された売場情報をデータ化し、取得・分析したデータを本部などの管理部署と共有することで、リアルタイムでの課題発見、解決につなげることが可能だ。

すでに国内の大手小売企業3社とArmoの実証実験を進めている。2023年4月より、大手食品スーパーマーケットチェーンのベルクでは、Armoを活用することで品出し作業の作業生産性が約1.5倍になった。Armoは2023年11月より先行予約を開始しており、2024年以降の出荷を予定している。

削減イメージ
MUSEは、2022年10月にシードラウンドで総額約1億円の資金調達を実施した。調達資金をもとに製品開発や実証実験を進めるほか、今後は海外への展開も計画している。

今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 笠置 泰孝氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

人手不足でもロボット活用が進まなかった小売業界

―― 小売業界が抱える課題について教えてください。

笠置氏:人手不足による影響は大きな問題になっています。人手が足りないことで、品出しによる欠品のタイムリーな補充や売場管理ができず、売上のロスが生じています。

人手不足により、本部が決めた棚割り通りに売場を作ることもできません。適切な売場が出来なければ、メーカーや卸企業とトラブルになることもあります。こうしたトラブルを避けるための店舗巡回には、年間1000億円もの費用がかかっているとされています。

小売店舗では、業務の約40%を品出しが占めていると言われています。。受発注業務やレジ業務ではDX化が進む一方、品出しでは有用なソリューションがなく、多くの店舗では手作業により品出し業務を行っています。ロボットの活用が有効であるにも関わらず、導入は進んでいません。

―― なぜ小売店舗ではロボットの導入が進まないのでしょうか?

店舗では顧客が買い物をしていることから、ロボットには安全性やデザイン的な観点での要求が多くなります。すでに活用が進む工場や倉庫向けに設計されたロボットを、そのまま小売に転用して導入することが難しいのです。

搬送や棚の画像データ収集など、単一の機能を持つロボット自体は多く存在します。一方でそれぞれのロボットを導入しても、走行システムや操作方法が異なるため、スタッフの学習コストもかさみます。

これでは折角ロボットを導入しても、十分な導入効果を得ることができません。そのため、結果的にロボット導入を見送る企業も少なくありません。

一つのロボットで複数の業務を省人化

―― Armoの特徴について教えてください。

ロボット自体をコンパクトにし、ユニットと組み合わせることで多様な業務で利用できる点が大きな特徴です。今後は商品の搬送に限らず、ユニットと組み合わせて売場の監視や買い物客の案内など、活用の幅を広げる予定です。

拡張ユニット
小売企業は、自社のブランディングを非常に重視しています。多種多様なロボットが店舗内を動き回っていると顧客は落ち着かないですし、店舗の統一感もなくなってしまいますよね。性能が良くても、自社ブランドにマッチしなければそもそもロボットの導入検討が進みません。

その点、Armoはベースとなるロボットを提供し、ユニットは自由にカスタマイズ可能な設計にしています。キャラクターやデコレーションを施すなど、カスタマイズ性の高さはご評価いただいているポイントです。

また、Armoで撮影された売場画像は、Eureka Platform上にデータとして蓄積されます。蓄積したデータを本部やメーカー卸会社と自由に共有し、実店舗に訪れずとも正確に情報を把握することで、売場の課題解決にも貢献します。

Eureka Platform
これらの小売店に特化したロボットと、データプラットフォームを組み合わせてソリューション提供する企業は極めて少なく、弊社の強みです。

―― Armo開発の背景や創業のきっかけについて教えてください。

学生時代から起業には関心があったのですが、愛知万博に訪れた際に、あたかも命があるかのような自律的な動きをするロボット作品を多く目にしたんです。直線的で継続的な動きをする、従来の機械の概念が大きく変わる様子を目の当たりにし、衝撃を受けました。

それから、ロボットビジネスについて個人でも研究を進めていましたが、監査法人や投資銀行への勤務を経て、自動運転技術を活用した事業を行うZMPにジョインすることになりました。ZMPでは、主に倉庫や工場向けの物流ロボット事業の立ち上げや量産体制の構築に携わりました。

代表取締役CEO 笠置 泰孝氏


その中で小売企業からの引き合いもあり、品出し業務の搬送で使いたい、という声が多かったんです。私自身も関心があり試行錯誤したものの、店舗向けに満足のいくソリューション提供はできませんでした。

ロボットを導入したくてもできない小売企業が多い中で、店舗に最適化したプロダクトを作ろうと、ZMPで物流ロボットの開発責任者をしていた当社CTOの石川と共同でMUSEを創業し、Armoの開発を開始しました。

―― 開発を進める中で、課題となったのはどのような点でしたか?

ロボットを小型化するほど、運搬できる重量が制限されてしまいます。ハードウェアの改良を行うことで、ロボット掃除機とほぼ同程度のサイズ、約10kgのロボットに小型化し、一度に最大100kgまで運べるよう運搬能力を高めました。加えて、ロボットを店舗内で違和感なく制御して動かすことは、地味でありながらも難易度が高く重要なポイントです。

ロボティクス技術で魅力ある店舗運営へ

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

2024年にはArmoの出荷開始を予定しており、同時にEureka Platformのリリース予定です。それに向けて実証実験を進めながら、買い物客向けの案内機能など、追加の機能開発にも注力する予定です。また、追加の資金調達も2024年に計画しています。

今後は海外展開も見据えており、主に米国向けのテストマーケティングを開始しようと考えています。店舗内のオペレーションは日本と共通する部分も多いことに加え、米国では、大きな店舗面積や人件費高騰を背景に、人手不足が大きな問題となっています。小売分野でのテクノロジー投資が盛んなこともあり、米国への展開には大きなポテンシャルがあると考えています。

また、拡張ユニットの幅を広げ、陳列やピッキング業務など、高度な業務を担えるように開発していくことも検討しています。マルチユース型のArmoとEureka Platformを組み合わせた独自の強みを活かして、今後も取り組んでいきたいと思います。

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参考:
※矢野経済研究所 「物流ロボティクス市場に関する調査を実施(2022年)


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