Eco-Pork、14億円調達でグローバル展開を本格化──生産性向上と環境配慮の両立を推進

Eco-Pork、14億円調達でグローバル展開を本格化──生産性向上と環境配慮の両立を推進

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養豚における生産性と環境配慮支援を行う株式会社Eco-Porkは、慶應イノベーション・イニシアティブ、カクイチ、ひがしん-SNETI投資事業有限責任組合、辻庸介氏(マネーフォワード代表取締役社長)を引受先とした第三者割当増資、Siiibo証券を通じた社債発行、各種金融機関等からの融資を合わせ、総額14億円の資金調達を実施した。

さらに2025年5月には、 FUNDINNO PLUS+を通じて特定投資家向け銘柄制度(J-Ships)を活用し、複数の特定投資家を対象とした第三者割当増資を実施。これにより累計調達額は53億円となった。

Eco-Porkは2017年設立の養豚テックスタートアップで、主力事業はクラウド型養豚経営支援システム「Porker」の開発・提供である。IoTセンサやAIカメラと連携し、飼養データや環境データの一元管理を可能にするほか、記録情報の即時共有や遠隔管理、省力化による生産性向上を支援する。さらに、豚舎環境コントローラーや餌料コスト管理など周辺サービスも展開している。

Porkerは国内シェア約15%を占め、導入農家では初年度平均7%の生産性向上を実現。2024年にはJ-クレジット制度において、養豚を対象としたプログラム型カーボンクレジット事業の運用も開始した。食肉需給ひっ迫、生産性と環境負荷低減の両立といった産業課題に対し、持続可能な畜産経営の基盤構築を目指している。

代表取締役CEOは神林隆氏。外資系コンサルティングファーム出身で、大学在学中に国際協力NGOに所属し食料・環境問題の解決に取り組んだ経験を持つ。統計解析やAIの活用による新規事業開発を経て、2017年にEco-Porkを創業した。養豚業の課題に学生時代から関心を抱き、「2050年にも肉を食べられる社会を実現したい」という思いから起業に至った。

神林氏は、「今年、当社はアメリカにおいて世界最大規模の養豚展示会『World Pork Expo』に日本企業として初出展し、またウクライナの養豚産業復興支援への取り組みも開始しました。さらに、ブラジルで開催されたCOP30や日ASEANシンポジウムへの登壇、JETRO『J-StarX』プログラムによるヨーロッパ養豚における技術連携の検討など、グローバル展開を本格化しております。今回の調達を通じて、この挑戦をより拡大し、人と食と環境が調和する畜産の未来を形にしていきます」とコメントしている。

国内の養豚業界は飼養頭数がおよそ879万頭(2024年)で推移しつつ、経営の大規模化が進展している。日本養豚協会の「2024年度養豚農業実態調査報告書」によれば、2万頭以上を飼養する農場が全体の16.2%を占め、わずか419戸の農場が国内の出荷頭数全体の47%を担っているとされている。こうした大規模経営体への集約傾向は、業界の効率化や持続性向上の観点から今後も続くものとみられる。一方、Eco-Pork 「Impact Report 2025」によると、国内豚肉生産額は約6000億円の規模に達しており、食肉需要の安定維持が生産拡大を後押ししている。加えて、環境負荷低減の社会的要請が高まる中、温室効果ガス排出の抑制や現場業務の省力化を企図したDX・自動化技術の導入も加速している。配合飼料・飼料添加物市場の拡大や、主要企業間の競争活発化も見られ、養豚業の生産・流通構造には今後も変革の動きが見込まれる。

本ラウンドで調達した資金は、AIカメラ「PigDataStation」による豚の頭数カウントや体重推計技術の高度化、データ活用型DX豚舎の実装、カーボンクレジット事業の拡張などに充当する計画だ。これらの取り組みにより、国内外の養豚現場で生産性向上と環境負荷低減を両立するモデルを確立し、グローバルな畜産サプライチェーンの変革を目指す。持続可能な畜産の実現を通じて、世界的なタンパク質不足への対応、温室効果ガス削減、途上国における農業高度化など、地球規模の課題解決にも貢献していく構えだ。

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