テックドクターがシリーズBで12億円調達ーーAI×dBMの社会実装を本格化へ

テックドクターがシリーズBで12億円調達ーーAI×dBMの社会実装を本格化へ

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デジタルバイオマーカー開発のテックドクターは、シリーズBラウンドにおいて第三者割当増資および銀行融資を組み合わせ、総額約12億円の資金調達を実施した。これにより累計調達額は約18億円に達した。

今回のラウンドには、既存株主のジャフコ、三井住友海上キャピタル、日本ベンチャーキャピタルに加え、大和企業投資、ミライドア(あすか製薬)、山口キャピタル、りそなキャピタル、小野デジタルヘルス投資、ライオンなどが新たに参加。調達資金は、AI関連の研究開発体制強化や、デジタルバイオマーカー(dBM)の医療・ヘルスケア現場での社会実装推進に充当される見通しである。

2019年6月に設立されたテックドクターは、医療・ヘルスケア領域におけるデジタルバイオマーカーの開発と運用に特化したスタートアップである。デジタルバイオマーカーとは、ウェアラブルデバイスや医療用センサーなどから得られる生体データをAIや機械学習によって解析し、疾患の兆候や治療の効果、生活の質(QOL)向上の指標を客観的に可視化する技術を指す。近年、医薬品開発やヘルスケアサービスにおいてもその活用が広がっている。

同社は独自のプロダクト群として「SelfBase」「SelfDoc.」「Health Portal」などを展開している。SelfBaseは、複数のウェアラブルデバイスや医療機器から取得される長期間・連続的なバイタルデータを解析・可視化するプラットフォームであり、製薬・医療機関向けの研究支援やサービス開発に用いられている。SelfDoc.は、個人の生体データを日常的に把握・共有することでメンタルヘルスケアに役立てるセルフモニタリングツールであり、精神科医療現場での実証も進んでいる。Health Portalは、これらのバイオデータを活用し、SaMD(プログラム医療機器)やデジタルヘルス関連サービスの構築を支援する開発基盤である。

これらのプロダクトは、精神疾患や慢性疾患などの領域における医師と患者のコミュニケーション支援、治療の質や予防ケアの向上を目的に活用されている。連続的なデータ取得とAI解析によって、体調変化の早期発見や在宅支援、健康コミュニティの形成といった多面的な効果が期待されている。

代表取締役の湊和 修氏は、IT企業において米国子会社の副社長や新規事業責任者を務めた後、慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室の研究員・研究プロジェクトリーダーとして複数の研究を主導してきた。特に、ウェアラブルデバイスを含む大量の生体データを用いた精神科領域での臨床研究や、メンタルヘルス領域におけるデータ活用を中心に活動を展開している。その後、2019年にテックドクターを設立。以降、AIと医療・ヘルスケアの融合によって、精神疾患や慢性疾患に対する新たな支援モデルの構築を目指している。

デジタルヘルス分野は、テクノロジーの進展や高齢化社会の進行を背景に、国内外で市場拡大が続いている。特に慢性疾患やメンタルヘルス領域では、患者や家族の医療アクセスやサポート体制に課題が残されている。グローバルではApple WatchやFitbitなどのウェアラブル端末が広く普及し、国内においてもソニーやオムロン、他のベンチャー企業がウェアラブルデータやリモートモニタリング技術を活用したサービスを展開している。一方で、日本では医療データの標準化やプライバシー保護、保険診療との連携、医療現場のITリテラシーのばらつきなど、いくつかの障壁が存在している。

デジタルバイオマーカーは、医療機関だけではなく製薬企業による治験の効率化や、未病・予防分野での活用も進んでいる。しかし、臨床的な意義や運用体制の確立、科学的根拠(エビデンス)の構築が業界全体の課題とされている。日本政府もデータヘルス推進を目的に政策を展開しており、2023年度の厚生労働白書では「PHR(パーソナルヘルスレコード)」活用が国家戦略として示された。こうした流れのなかで、データ取得から解析、サービス実装までを一貫して手がけるスタートアップへの期待が高まっている。

今回の資金調達について、AIを活用した新たなソリューションの開発や、医療現場・提携企業との共同研究の拡大に資金を充てる方針を示している。特に、生活習慣病やメンタルヘルスケア、進行期疾患のQOL向上を支援するアルゴリズム開発、自治体や医療機関と連携したデータ医療モデルの実証が重点分野とされる。また、同社はすでに100件を超える企業や研究機関と連携実績を持ち、今後はさらにネットワークの拡大を進めていく計画だ。

画像はテックドクターHPから

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