株式会社Wunderbar

株式会社WunderbarがシリーズAラウンドで約5億円の資金調達を実施した。これにより累計調達額は7億円を超えた。調達資金は、IPマーケティングプラットフォーム「Skettt」の開発強化、関連事業の拡大、地方企業へのサービス提供体制の拡充などに活用される見込みだ。
Wunderbarは2019年3月設立のIPテック企業である。主力サービスの「Skettt」は、有名タレントの肖像をテンプレート化し、中小や地方企業でも手軽にタレントを起用できるIPマーケティング支援を行う。また、IP活用やエンタメ業界のトレンドを紹介するメディア「IP mag」も運営している。
「Skettt」は、従来高額かつ複雑だったタレントキャスティングを月額20万円台からの定額制で提供し、参入障壁を下げている。2025年時点で150社以上の芸能事務所と提携し、5000名超のタレントが起用可能となっている。導入企業からは、広告効果や認知度向上、人材採用などの成果が報告されている。さらに、地方創生プロジェクト「JAPAN SKETTT. PROJECT」を通じて、地方企業と地元出身タレントのマッチングも推進している。
代表取締役CEOの長尾慶人氏は、芸能界での経験とIT・Web系企業でのキャリアを持つ。光通信系企業での営業職や、GMOインターネット、ディー・エヌ・エーなどのテクノロジー企業での勤務経験、さらに起業経験もある人物だ。創業は長尾氏によるものである。長尾氏のもとにはCTOの柳澤氏をはじめ、フィリピン拠点を含む多様な国籍・専門性を持つメンバーが集まっている。
IPビジネスおよび広告業界では、ここ数年でデジタル化や新しい広告フォーマットの登場、クリエイターエコノミーの拡大など大きな変化が続いている。従来型のテレビCMや紙媒体中心の広告手法から、SNSや動画配信など多様なメディアへの展開が求められる状況に変化している。こうした中、「IPの民主化」と呼ばれる動きが進み、知名度のあるタレントやキャラクターを中小規模の企業も活用できるサービスへの関心が高まっている。他方で、タレント肖像の利用範囲やレギュレーション、ブランド毀損リスクといった管理面での課題も指摘されている。
競合としては、タレント・インフルエンサーのマッチングやIP活用に取り組むレモネード、Bitstaなどのスタートアップや広告代理店が台頭している。加えて、電通、博報堂といった大手広告会社や、SNS領域でのUUUMなども多様なサービスを展開しており、業界全体で垣根の低下と多様化が進んでいる2022年の国内コンテンツ市場規模は約14.7兆円にのぼる。(ヒューマンメディア推計)IPビジネス市場の成長余地は大きいとされる。
今回の資金調達について、Wunderbarは三つの主な使途を説明している。第一に、プロダクト開発チームの人材採用と組織拡大。生成AIなど独自技術を活用したサービス開発を見据え、エンジニア採用や多国籍体制の強化を進める。第二に、IPホルダーとの提携ネットワークの拡充。すでに多くの芸能事務所と連携しているが、今後はさらなるIP保有企業との協業を目指す。第三に、地方・中小企業向けのプロモーション強化。広告予算を拡大し、地方企業のタレント活用機会を増やす取り組みを推進する。
シリーズAラウンドには、NOW(家入一真氏)、ディープコア、博報堂DYベンチャーズ、SBI新生企業投資、i-nest capital、コロプラネクスト、GENDA capitalなどが新たに出資した。調達方法は第三者割当増資とデットファイナンスで構成されている。
また、Wunderbarは国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS2025 LAUNCHPAD」への登壇を予定している。イベントでは、IPマーケティングや生成AIを活用したタレント起用ソリューションの最新動向について発表する計画だ。
今後はサービスの多機能化や提携スキームの最適化、サステナブルなタレント活用モデルの構築などを重点領域とし、エンターテイメントとテクノロジーの融合による新たな市場創出を図る方針である。