CUZEN MATCHAが変える抹茶体験、日本の伝統を世界へ

CUZEN MATCHAが変える抹茶体験、日本の伝統を世界へ

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KEPPLE編集部

家庭用抹茶マシン「CUZEN MATCHA」を開発・販売するWorld Matcha株式会社の米国親会社であるWorld Matcha Inc.が、デジタルガレージグループをリード投資家としたシリーズAラウンドにて約7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回の資金調達により業務用マシンの開発を進め、米国や日本のカフェ・レストランなどの施設へのマシン導入を推進する。

家庭で手軽に本格抹茶の体験を

CUZEN MATCHAは、専用の抹茶リーフを茶筒にセットして専用のカップに水を注ぎ、濃さを選択するだけで抹茶を抽出できる家庭用マシンだ。コーヒーのエスプレッソマシンを使うように手軽に利用できる。

CUZEN MATCHAの写真

抹茶版エスプレッソマシンともいうべき見た目のCUZEN MATCHA(写真:World Matcha提供)


同社がマシン用に販売する抹茶リーフには、100%国産のオーガニック茶葉を使用。一番茶のみ使用したプレミアムブレンドのほか、抹茶ラテに最適なリーフなど3種類が用意されている。

抽出した抹茶はさまざまな飲み方で楽しめる。ストレートに限らず、ミルクや炭酸、お酒で割るなど、気分にあわせて気軽にアレンジできる点も特徴だ。

CUZEN MATCHAは2020年10月に米国で販売を開始。2021年7月には日本で販売開始し、これまでに8000台以上を販売した。

2024年の秋頃には、ホテルやレストラン、カフェなどに向けた業務用マシンの販売を予定している。

今回の資金調達に際して、代表取締役 塚田 英次郎氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

海外で注目される抹茶の魅力

―― 米国における抹茶人気の高まりについて教えてください。

塚田氏:抹茶は、他の抗酸化食品よりも抗酸化作用が高くなっています。いつまでも元気で美しくいるために抗酸化作用の高いフルーツを摂る人の多い米国では、健康のために飲みたいという人が多くいます。

また、米国で問題になっていることの一つが、コーヒーを飲みすぎてカフェインの過剰摂取につながる「カフェインクラッシュ」です。対して抹茶は、コーヒーと比べてカフェインの効き方が緩やかです。リラックス効果を持つテアニンが含まれるため、若者を中心にコーヒーの代替飲料として抹茶にシフトする動きがみられます。

一方で、抹茶を家庭で飲むことには難しさがあります。抹茶を点てる習慣は米国にはありません。粉末で飲もうとしてもダマになってしまいますし、すぐに酸化して風味が損なわれてしまうのです。

手軽に抹茶を抽出し、さまざまなアレンジで楽しめる(写真:World Matcha提供)


―― CUZEN MATCHAは、日本のお茶農家が抱える課題の解決にも貢献しています。

日本における抹茶は、以前は一部の人が楽しむものでした。誰でも手軽にお茶を飲めるようにするにはどうすればよいか、そうした考えから日本で広がったのが、茶葉をお湯に浸して成分を抽出する煎茶です。

さらにそれがペットボトルで飲めるようになることで、これまでのように淹れたての煎茶を楽しむ人は減っています。そのため、ペットボトル向けの二番茶や三番茶の茶葉需要が安定しながらも、淹れたてを楽しむ高品質な一番茶の需要や価格は下がっているのが現状です。

その結果、品質の高い茶葉を作っても儲からないために、茶園を閉めるという動きが高齢な生産者を中心に起きているんです。

一方米国では、抗酸化作用やカフェインの過剰摂取問題を背景に、オーガニックで高品質な抹茶に価値を感じる人が増えています。日本国内の需要だけでは不十分でも、米国の抹茶人気をうまく取り込むことができれば、高品質な茶葉を適正価格で消費者に届ける、サステナブルな茶葉生産が実現できるはずです。

スタートアップスカウト

創業までの21年間、サントリーで商品開発や新規事業の開発に携わっていました。お茶のペットボトル飲料ビジネスに関わる中で、付加価値の高い製品を作り出せたと自負しています。

一方で、お茶をペットボトルで販売するには、1年間常温で保存できるようにするための熱処理が必要です。その過程でお茶の香りや風味が損なわれ、本来の魅力が失われてしまうことに違和感を覚えると同時に、ペットボトルを運ぶ際のエネルギーコストやCO2に関する問題も感じていました。

その後創業の大きなきっかけになったのが、サントリーで最後にサンフランシスコの抹茶カフェ事業に携わったことです。淹れたての抹茶を店舗で提供していたんですが、非常に美味しいと評判でした。

その時の経験から、良質な茶葉を使用し、殺菌せずに美味しいお茶を飲めるって素晴らしいことなんだと改めて実感しました。しかしながら、店舗を作るだけではその周辺に住む人にしか価値提供できません。今後ますます高品質な抹茶のニーズが高まる中で、エスプレッソマシンを使うような手軽さを抹茶でも実現できないかと、会社を設立して開発を進めました。

日本らしい抹茶体験を世界に

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

2024年の秋頃には、業務用マシンの販売を計画しており、今回の調達資金は開発や導入の推進に充当します。業務用マシンでは、羽根の形状を工夫するなどして、より繊細で上質な泡立ちを実現しました。これまで提供していた家庭用マシンと比べて1度に作れる抹茶の杯数が増え、短い時間で抹茶を提供できるようになっています。

開発中の業務用抹茶マシン(写真:World Matchaプレスリリースより)


業務用マシンを使えば、お店で抹茶ラテやカクテルなど、さまざまなメニューを気軽に提供できるようになります。各国の飲食店や宿泊施設のほか、日本ではインバウンド需要の取り込みを狙う観光地などでぜひ活用していただきたいと思います。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

業務用マシンの立ち上げを足がかりに、今後はアメリカや日本だけでなく、ヨーロッパや中東などの海外展開も視野に入れています。コロナ禍で落ち込んだ人々の移動が活発になり、日本に来る人も増えました。日本ならではの抹茶体験を提供することで、各国でも抹茶を広げていきます。

具体的には、茶葉が生産される地域を訪れる旅の企画や、ホテルやレストラン、カフェなどと協力した魅力的な抹茶メニューの共同開発などです。これにより、インバウンド需要を取り込みながら、美味しい抹茶などの日本らしい文化体験を提供できるよう、事業者とも手を取り合って取り組んでいきたいと思います。

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