ゴーグル不要の没入体験—フォレストデジタルが1.3億円調達し事業拡大へ

製造業のデジタル化を支援する株式会社RUTILEAがシリーズBラウンドにて、第三者割当増資による2.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、リード投資家 Abies Ventures、サウジアラビア王国の政府投資ファンド Riyadh Valley Companyの2社。サウジアラビア王国は2030年までの経済改革計画において、国外の最先端技術への投資を表明しており、RUTILEAのAIソリューションや国際展開に着目し、出資に至ったという。
今回調達した資金は、新規アルゴリズムの開発、人員の採用によりフィールドセールスやカスタマーサクセスを中心としたビジネスサイドの強化に充て、収益の拡大を目指すとしている。
株式会社RUTILEAは、「『AIを簡単に。』すべての業務プロセスにAIが導入された社会の実現を目指す」をミッションに掲げ、プログラミング技術が不要なノーコードAIによって製造業における単純作業をAI化している。先進国の人口減少による労働力不足や、脱炭素社会に向けた二酸化炭素排出量の削減といった製造業界における課題の解決を目指している。
代表的なプロダクトは、製造業向けのAIマシンビジョン(※)「ImagePro」と、ノーコード動画分析ソフト「OMS」。プロダクトの特長としては、導入までの期間が短く、徹底的に属人化排除に取り組んでいる点だ。ImageProは、ノーコードAIの使用により検査、ピッキング、バックオフィスの帳票の読み取りなどを自動化する。製造工程での検査の効率化は、高品質が求められる日系の製造業では特にニーズが大きいという。
(※)マシンビジョン:産業用機器に視覚、分析、行動の機能を提供する技術。機械が視覚的に判断することにより、自動化や作業精度向上を可能にする。
今後本格的に販売を始めるOMSは、動画分析の効率化により、正解動画と照らし合わせて、人による作業の正確性を確認し判定することができる。国内での作業者の教育コストの削減や、海外における作業状況のモニタリング(ストライキ対策や生産性の向上など)をサポートする。
RUTILEAは2018年の創業以降、大手自動車メーカー、サプライヤーなど製造業を中心とした大企業に導入されている(2022年8月時点)。導入により、今まで複雑なプログラミングが必要だった検査AIの開発工数を80%削減を実現するなど、成果を上げているという。
RUTILEAの代表取締役CEO 矢野貴文氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
―― RUTILEAを始めようと思ったきっかけを教えてください。
矢野氏:元々は、研究者になろうと思っていました。京大工学部電気電子工学科に入学し、京大院の電気工学専攻の博士前後期連携プログラムで、MRIなどの信号処理の研究をしていました。しかし、日本のアカデミックの就労環境などを考えたときに、好きな研究をするためには、ある程度の経済基盤があったほうがいいと考えました。その費用の捻出のために、修士課程中に起業をすることにしました。
最初は中古ブランド品の買い取りプロセス効率化のためのソフトウェアを開発し、販売していました。中古ブランド品の買い取り会社に興味を持っていただき、グループ会社として共に上場を目指そうという話になり、2018年に上場しました。そのタイミングで、もう一度自分自身で新しいビジネスを始めたいと考え、日本の強みである製造業でその課題解決を目指し、RUTILEAを起業しました。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
長期的には、RUTILEAのミッションである「AIを簡単に。」を実現するために、ノーコードの先をいく新たなプロダクト「MVOps」の開発に力を入れています。今までAIプログラム作成する際には、全体の60%の時間をデータ収集に費やしていました。MVOpsのフレームワークを使用すれば、データ収集、ラベリング、トレーニング、評価、配置の一定の流れを並列化できるようになり、開発期間が大幅に短縮できます。
そのために直近のビジョンとしては、プロダクトの成熟度を高めることを最優先させていきます。国内での実績を積み上げていくのはもちろんですが、国内にプロダクトをマーケットフィットさせすぎると、国内でしか売れない製品になってしまう可能性もあるので、海外マーケットも見据えながら世界で売れるプロダクトにしていきたいと考えています。また、世界の先進事例を海外のコンサル会社とアライアンスして、協働で両者のソリューションを販売するプロジェクトも進めています。例えば、脱炭素のために二酸化炭素を削減するソリューションを協働で日本市場にローカライズさせることなどです。輸出、輸入ともに視野に入れ、世界中のパートナーとビジネスを拡大させていくことを目指しています。
株式会社RUTILEAは、ノーコードAIによる業務プロセスの自動化を実現するために、製造業向けのAIマシンビジョン『Image Pro』やノーコード動画分析ソフト『OMS』を開発する企業。これらのシステムにより、人が目視検査を行うことで生じる検査基準のバラつきや人手不足を解決する。
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