ドローン開発のAirKamuyが切り拓く、防衛×スタートアップの道

JAXA発スタートアップの武蔵スカイプラス株式会社が、シードラウンドにおいて総額2億円の資金調達を実施した。今回のラウンドにはFrontier Innovations、Incubate Fund、IF Everlastが出資している。
武蔵スカイプラスは2019年12月設立。JAXA航空技術部門で蓄積された航空技術や知的財産を基に、固定翼型小型無人航空機システムを開発している。主な製品には、固定翼型小型無人航空機「UARMS」や垂直離着陸型のVTOL(Vertical Take Off and Landing)機「QTW」などがある。これらは安全保障、防災、物流といった幅広い分野での利用を想定し、実証実験やプロトタイプ開発が進められている。
同社の特徴は、機体ハードウェアからフライトコントロール計算機(FCC)、地上局連携用ソフトウェア、自律飛行や運用支援のためのシミュレーターなど、関連技術を自社で一貫して開発・国産化している点にある。こうした純国産技術は、セキュリティ要件や信頼性が重視される分野への応用が期待されている。また、顧客の用途や要望に応じたカスタマイズや追加開発にも一貫体制で対応できる点が強みとされる。
代表取締役社長の藏並昌武氏は、日立製作所や三菱商事でのエンジニアリング・新規事業開発経験を経て、JAXA航空技術部門で産学官連携プロジェクトやベンチャー設立を主導してきた。2019年末に武蔵スカイプラスを設立し、JAXAとの兼務で事業を牽引している。
小型無人航空機の市場は、国際情勢の変化や安全保障政策への関心の高まり、災害対応の高度化ニーズなどを背景に拡大傾向にある。2023年度のドローンビジネス市場は、約3854億円となった。これまで日本のドローン市場は、DJI(中国)といった海外大手が大きなシェアを持っていたが、セキュリティや国内サプライチェーンの観点、政府調達基準の強化により国産技術への需要が増している。物流やインフラ点検、自然災害対応、安全保障などの分野で、国内の技術開発力を活かした事業者の存在感が高まりつつある。
一方で、国内外のスタートアップや重工系企業、大学発ベンチャーによる新規参入も相次ぐ。日立造船は大型ドローン開発を進めており、ACSL(自律制御システム研究所)は商用物流領域で事業を展開している。また、ソフトウェアや衛星データを活用した新興ベンチャーも加わり、競争環境はより激しくなっている。
ドローン分野では、ソフトウェア・制御技術・通信基盤を含めた技術覇権をめぐる国際競争が激化している。政府や自治体、民間インフラ運用者の間では、セキュリティ、メンテナンス性、コストを含めた国産ドローンへの期待が高まっている。今後は、制御技術の高度化、有人機との協調運用、AI技術の導入などを通じて、技術開発とビジネスモデルの進化が求められる。あわせて、法制度や運用ルールの整備も重要なテーマとなっている。
今回の資金調達を通じて、より高性能で多様なニーズに対応する機体および周辺システムの開発・提供を進め、国産小型無人航空機システムの製品化と社会実装をさらに加速する方針だ。
画像は武蔵スカイプラスHPより
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