株式会社Bizibl Technologies

株式会社Bizibl Technologiesは、ウェビナーマーケティングに特化したSaaS「Bizibl(ビジブル)」を提供するスタートアップである。このたび、栖峰投資ワークス、Adlib Tech Ventures、きらぼしコンサルティングなどの新規投資家、および既存投資家のPRIMALCAPITAL、F Venturesを引受先とした第三者割当増資と、三井住友銀行と日本政策金融公庫からの融資を通じて、総額約2億円の資金調達を実施した。
同社が展開するBiziblは、ウェビナーの企画から運営、アーカイブ、データ活用までを一元化し、BtoBマーケティングや採用領域における成果の最大化を目指すSaaSプラットフォームである。月間2500件以上のウェビナーが開催され、累計申込数は30万件を突破するなど、急成長を遂げている。
花谷燿平CEOは、「ウェビナーは単発の施策として終わることが多く、せっかくのコンテンツが“使い捨て”になってしまう。この非効率性を解消するために、再配信やアーカイブ、CRM連携まで含めた一連のプロセスを支援するツールを目指してBiziblを開発した」と語る。また、「BtoBマーケターが月に10回以上ウェビナーを開催するケースもあり、複雑なオペレーションやデータ活用の課題を一気通貫で解決することが急務だった」とも述べた。

代表の花谷氏は大学院在学中に起業し、当初は転職メディアを運営していた。事業開発の一環で、対面型の転職フェアに参加して企業の採用活動を観察した経験が、Bizibl構想のきっかけとなったという。
「東京から大阪に出張して、ブースで毎回同じ説明を繰り返す。その労力に見合うだけの成果が得られていない現場を見て、非効率だと強く感じた。動画やオンラインで代替できるはずだという確信を得た」と振り返る。
競合との差別化については、「取得できるデータの粒度と、CRMやMA(マーケティングオートメーション)ツールとの自動連携」が強みだと説明。単に参加有無だけでなく、視聴時間、流入経路、購買意欲の変化までを可視化する設計が、マーケティング施策としての活用を後押ししている。
現在はSaaSベースのプラン体系で提供しつつ、一部では有償の企画支援も行っている。サービス導入後のカスタマーサクセス(CS)によるノウハウ支援が評価され、導入企業の解約率も低いという。

今回調達した資金の使途は、既存SaaSの機能拡張および販促活動の強化に加え、オンデマンド動画やポッドキャストなど、新たなコンテンツ形式への対応にも向けられる。花谷氏は「今後は3〜4つの新機能をリリースし、企業のマーケティング施策全体を支援するプラットフォームへ進化させたい」と語った。
さらに、資本面での連携に加えて、今後は広告代理店やマーケティング支援会社など、上流のコンテンツ制作を担う業界とのCVC連携も模索していく考えだ。地方でのウェビナー活用拡大を見据え、地銀など地域金融機関との提携にも意欲を示しており、「東京一極集中から全国展開へと移行するなかで、地元企業との接点創出を支援する販売網の構築を進めたい」と花谷氏は述べている。
将来的には、企業がウェビナーや他のデジタルコンテンツを通じて蓄積する1st Party Data(自社で取得した顧客データ)と、AI技術を掛け合わせることで、コンテンツ制作から商談獲得までを一貫して支援する“垂直統合型”のサービス構築を構想中だ。単なる配信ツールにとどまらず、マーケティング全体の生産性を高めるプラットフォームを目指す。
すでに150社以上への導入実績があり、今後はコンテンツマーケティングの上流から下流までを網羅する機能拡張を進める計画だ。中長期的にはARR(年間経常収益)50億円、導入企業数1000社を目標に掲げ、IPOも視野に入れている。「見込み顧客との関係構築を支援する“正しいコンテンツマーケティング”の仕組みを、企業の武器にしてもらいたい」と花谷氏は語る。
ウェビナーの価値が見直されるなかで、Bizibl Technologiesは単なるツール提供にとどまらず、企業のマーケティング基盤として機能する存在を目指している。今後は国内外を問わず、企業の“伝える力”を支えるプラットフォームとして、その存在感を一層高めていく構えだ。
