デジタル証券、シリーズAで3億円調達──ブロックチェーン活用でサービス拡充と市場浸透へ

デジタル証券、シリーズAで3億円調達──ブロックチェーン活用でサービス拡充と市場浸透へ

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デジタル証券株式会社は、シリーズAラウンドの2ndクローズとして総額3億円の資金調達を実施した。今回のラウンドでは、SBI Ventures Three、三菱商事、三菱UFJキャピタルが引受先として参加した。これにより、同社の累計調達額は12億円となった。

デジタル証券は、2020年に設立されたスタートアップで、ブロックチェーンなどのデジタル技術を活用した証券の小口取引サービスを展開する。「renga」は不動産やインフラといった機関投資家向けだった大型資産を、少額から投資可能なファンド商品として個人投資家にも開放するプラットフォームである。ブロックチェーンによる権利管理を活用することで、効率的な取引と透明性を実現し、これまでアクセスが難しかった未上場資産への投資機会を個人に提供している。

同社の事業モデルは、証券の組成・運用・販売までを一貫して担う「製販一体型」の体制を特徴とする。プラットフォーム上では、プロのファンドマネージャーが選定した安定的な資産を投資対象とし、コストの低減や投資家の利回り向上も志向している。また、金融商品が複雑になりがちな中、投資初心者にも分かりやすい情報提供に注力している点も特徴だ。

代表取締役CEOの山本浩平氏は、2020年の創業者である。山本氏は金融庁や財務省での政策企画・資金調達分野の実務経験を持ち、弁護士としてロビイングや規制設計にも携わってきた経歴がある。スタートアップや上場企業での法務責任者やFintechサービスの実務責任者経験も有し、デジタル証券事業においては規制と技術両面で立ち上げを主導した。

デジタル証券(セキュリティ・トークン)は、従来の有価証券をブロックチェーンなど分散型台帳技術によって電子的に発行・管理する仕組みである。資金調達手法としてはSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)が主要な位置を占める。日本でも2021年頃から不動産を中心とした事例が増加し、2022年末には国内発行額が212億円に達した。グローバルでは2025年に市場規模が30兆円規模に拡大するとの予測もある。デジタル証券の特徴として、完全電子化による取引の迅速化や透明性、24時間取引への対応可能性などが挙げられる。不動産クラウドファンディングと比較しても、権利管理の面で違いがある。

今後は不動産やインフラ資産に加え、未公開株(プライベートエクイティ)、アートやワインなど希少資産のトークン化が見込まれている。投資対象の多様化が進むことで、個人投資家による資産運用のハードルが下がり、市場のセカンダリー取引活性化などの効果も期待される。一方で、投資家保護や情報開示、KYC(顧客確認)などコンプライアンス体制の厳格化も求められる状況であり、今後の法改正や市場インフラの整備動向に注意が必要である。

今回の資金調達により、同社は金融大手や商社との連携を深めながら、デジタル証券市場におけるサービス拡充を進めていく方針だ。

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