eiiconが資金調達で目指す、オープンイノベーションの全国展開

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KEPPLE編集部

目次

  1. イノベーションを意図的に生み出すプラットフォーム
  2. 取り組み広がるオープンイノベーション、一部では誤った解釈も
  3. アイデアはあっても協業先を探す手立てがない
  4. オープンイノベーションを当たり前に

オープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」を運営する 株式会社eiiconがシリーズAラウンド1stクローズにて、第三者割当増資による資金調達を実施したことを明らかにした。累計の資金調達額は、デット・エクイティをあわせて約13億円となる。

今回のラウンドでの引受先は、ゆうちょ銀行とSpiral Capital傘下のSpiral Innovation Partnersが共同で設立したゆうちょ Spiral Regional Innovation Fundとエンジェル投資家など。

今回の資金調達により各地域企業との取り組みを強化し、日本全国に向けたオープンイノベーションの波及を目指す。

イノベーションを意図的に生み出すプラットフォーム

同社が運営するAUBAは、オープンイノベーションに特化したWebプラットフォームだ。累計登録社数は3万2千社を超える。企業に限らず、大学や地方自治体などの法人が登録している。

登録法人は自社PRの掲載をするほか、プラットフォームに登録するパートナーを検索し、気になる企業とのメッセージによるやり取りができる。これまで、実際に事業創出に至ったのは1700件以上。

大企業向けには、オープンイノベーションに特化したコンサルティング事業も手掛ける。

今回の資金調達に際して、代表取締役社長 中村 亜由子氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

取り組み広がるオープンイノベーション、一部では誤った解釈も

―― AUBAについて詳しく教えてください。

中村氏:私たちは「イノベーション後進国からオープンイノベーション先進国へ」をビジョンに、中長期で重要な役割を果たす新規事業創出、中でもオープンイノベーション領域を支援しています。

その中で、意図的にイノベーションを生み出すための仕組みを企業が体得できるように運営しているのが、AUBAです。

登録すると、会社として目指すことや課題を細かくシステム上で質問されます。この「自社言語化」というステップが非常に重要です。とりあえず新規事業を始めるのではなく、得意としていることや使えるリソース、いつまでにどのような事業を生み出したいのかなどを整理しなくてはいけません。

質問に回答していくと、回答を反映し、共創パートナーの募集ページ用に編集されたページが自動で出来上がる設計になっています。自分たちのやりたいことを明確にした後に必要なのが、探索というステップです。

プラットフォーム上では、ニーズに合う企業と連絡ができます。他社との共創をベースに新規事業創出に向けて進んでいくので、進捗や次回面談設定、事業化に至るまでに必要なアクション数等を自己管理できるようになっておりし、進捗に応じてプラットフォームやオンラインコンサルタントから必要な支援を受け、実際の事業化まで実現できるプラットフォームとして提供しています。

―― オープンイノベーションという言葉を聞く機会は増えています。

オープンイノベーションは、新規事業創出の手段です。言葉としては2003年に定義されていますが、協業・共創といった言葉を用い、意図的に社外のプレイヤーと手を組んで事業を作っている企業は以前からあるのです。

日本では、戦後同一の製品を高いクオリティで大量に生産する方法を磨き、強みとしてきました。ところが、この大量生産に特化した仕組みはテクノロジーが非常に速いスピードで進化し、人々のニーズも多様化していく現代の世界的な潮流に合わなくなってきています。日本のこれまでのやり方が通用しない状況が露呈するなど、危機感を覚える企業が増えたことでオープンイノベーションへの取り組みも進みだしているのだと思います。

一方で、オープンイノベーションという言葉自体が誤った解釈をされていることもあります。ただ単純な資金調達や受発注関係を強化することはオープンイノベーションではありません。双方において自社単独では難しい領域へのチャレンジが効率的に行われ、単独よりもインパクトの大きな事業を生み出せる手段がオープンイノベーションです。

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―― AUBAを利用するとどのようなメリットがあるのでしょうか?

これまでは、自社技術を活用して他分野のプロダクトを作ろうとしても、その分野の企業とコンタクトする手段がありませんでした。受発注関係にある企業とすら、新規事業の窓口とは繋がれないことも多く、「新規事業創出に特化した仲介業者」は存在せず、暗中模索のような状態だったのです。

AUBAは、新規事業をやりたいと思っている法人のみが活用できるプラットフォームです。新規事業を前提にパートナー候補とやり取りでき、自分たちのニーズに合致する法人がプラットフォーム上でレコメンドされるため、企業同士が出会うきっかけを生み出しています。

アイデアはあっても協業先を探す手立てがない

―― AUBAで生まれた新規事業の事例について教えてください。

象徴的な事例としてあげられるのは宮崎県の水産業者の事例です。彼らはカツオの一本釣りをしていて、カツオが泳いでいる場所を発見できるかどうかが漁獲高に大きく影響します。

カツオのいる場所は、これまで漁獲作業の指揮をとる漁労長の勘所に頼っていた部分がありました。高齢化により漁労長が船を降りると、カツオのいる場所を発見できずに漁獲高が下がるという深刻な課題に直面していました。

AIを使って解決できないかというアイデアまでは思いついていたものの、宮崎県の漁業の会社が、AIの会社をすぐに探し出すことは簡単ではありません。そこで、AUBAの活用による東京都のAIベンチャーとのコラボにつながりました。

活用したのは漁労長の航海日誌です。航海日誌をAIで解析し、漁師の意思決定を補助できるようにすることで、カツオのいる場所を発見できないかと考え、実証を進めて成果を確認することができました。

―― 創業のきっかけは?

元々在籍していたパーソルで、2015年に事業を起案したのが発端です。知人の経営者が協業先となるパートナーを探す手立てがないことに困っていたのがきっかけでした。

人材は外から採用するのが当たり前なのにもかかわらず、事業づくりはあまりにもクローズドでした。当時はM&Aサイトなども出始めていましたが、オープンイノベーションのプラットフォームは存在していませんでした。地方企業が活気のあるうちに新規事業という次の一手を打とうとしている、その助けになるようなものがあればとAUBAを立ち上げました。

オープンイノベーションを当たり前に

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

今回は足元の資金というよりも、共にオープンイノベーションを日本全国に広めていける企業との「戦略的な事業提携」を前提とした資金調達になっています。

オープンイノベーションは非常に有効な手段ですが、まだまだ浸透していません。今回提携を発表したパートナーと共に、オープンイノベーションの取り組みを全国展開していこうと思っています。

海外企業との連携を支援するプラットフォームの構想も進めています。日本の人口が減っていく中、東南アジアなどの人口が増加している地域と日本企業のクオリティをうまく組み合わせることは非常に重要です。これは創業当初から思い描いていたことで、今回の調達資金の一部を充当する予定です。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

大切なのは、オープンイノベーションという手段を日本全国に根付かせ、誰もがその言葉の意味を理解していることです。少しでも早く取り組みを進め、2030年までの6年間で国内企業がオープンイノベーションを理解している状況を作りたいと思っています。

そのためには、プラットフォームの伸長が不可欠です。大企業の変革に加え、中堅企業も当たり前のオープンイノベーションという手段を取り入れ、AUBAの利用を促していきます。浸透するにつれ、他社の手掛ける業界特化型のプラットフォームも登場してくるはずです。

新規事業の創出手段を整理できている企業は多くありません。いい人材やアイデアがあれば、偶発的にイノベーションが起こる「かもしれない」といった温度感になってしまっていることも多くあります。まずは自社の現状を整理することが非常に重要です。新規事業創出に課題がある、手段を整理できていないと感じる方はぜひご連絡ください。

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