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KGモーターズ、シリーズA 1stクローズで13.9億円を調達ーー超小型EVで地域課題に挑む

広島県発のスタートアップ、KGモーターズ株式会社がシリーズAラウンドで新たに3.6億円を調達し、シリーズA総額は17.5億円、累計調達額は23.8億円となった。今回のラウンドには自動車部品メーカーの豊田合成やみずほリースCVCなどの事業会社、地域ベンチャーキャピタルが新たに加わった。調達資金は、1人乗り小型EV「mibot(ミボット)」の本格量産と市場展開を加速させるために活用される。
KGモーターズは2022年7月設立。事業の中心は1人乗りの超小型電気自動車「mibot」の開発・製造と、それに関連するMaaS(Mobility as a Service)事業の企画・開発である。mibotは、短距離移動や通勤利用を想定し、原付ミニカー区分(道路運送車両法に基づく保安基準を満たす1人乗り小型四輪車)で設計されている。家庭用100V~200V電源による充電、航続距離100km、最高速度60km/hを特徴とし、価格は税込110万円。デザインは1980年代のポラロイドカメラをモチーフとした前後対称の形状で、レトロさと現代的な印象を両立させている。車検が不要で、保険や税金面でもコスト負担が抑えられることから、都市部・地方ともに「日常の足」としての利用が想定されている。
mibotはSDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェアで定義される車両)として開発されており、利用履歴や走行データを活用して最適な走行やアシスト機能をソフトウェアで学習・拡張できる点が特徴。車両とサービスの連携を強化する設計となっている。
代表取締役CEOの楠一成氏は、かつて自動車アフターパーツ事業に従事し、2018年からはYouTubeを活用した情報発信を始め、ものづくりをテーマに20万人超の登録者を集めた実績を持つ。このオンラインでの影響力を活かし、開発・資材調達・人材採用などで独自のネットワークを構築してきた。楠氏は浜松にサテライトオフィスを設け、自動車関連分野のエンジニア採用や地元企業との連携を強化するなど、地方発スタートアップとしての体制づくりを進めている。創業以前から一人乗りモビリティの必要性や地方の移動課題への問題意識を持ち、自身の地元での経験が事業モデルの発想につながったと説明している。
超小型モビリティ市場を取り巻く環境として、日本国内では都市・地方を問わず公共交通の維持が難しくなりつつあり、マイカー依存の高まりとともに、高齢者や免許返納者による新たな移動手段への需要が顕在化している。国土交通省の2020年度データによれば、自家用車の平均乗車人数は1.3人と低く、日常の多くの移動が1人で行われている実態が示されている。路線バスの廃止や減便も進む中、より小型で低コスト、手軽に利用できるモビリティへの期待が高まっている。
今回のラウンドでは、豊田合成(自動車部品)、みずほリースCVC(リース金融)、鈴与商事(物流・エネルギー)、日本海ラボ(地域共創)、広島・山口の地銀系ベンチャーキャピタルなど、多様な業種のパートナーが出資に参加。それぞれ自社ネットワークやサービス網との協業を前提としており、事業領域を横断した体制となっている。資金は「mibot」の初期ロット量産試作や部材調達、設備投資、生産・品質管理体制の構築、ブランド認知施策、事業会社との連携基盤づくりなどに充てられる。また、予約ユーザーからの試乗フィードバックを重視し、ユーザーとともに製品開発を進める姿勢を維持する。
2024年8月下旬から開始した一般予約は1か月で1000台を突破し、2025年末から納車開始が予定されている。さらに、訪問介護や物流、工場・プラントの敷地内移動など、法人・公共需要にも対応を拡大する。今後は、協業パートナーとの連携による販売網・リース・アフターサービス体制の整備や、追加機能開発に取り組む計画である。大阪大学との自動運転技術やソフトウェア開発の共同研究も進んでおり、将来的な無人運転やMaaSサービスへの応用も視野に入る。
海外からの評価もあり、米経済誌Forbes Asiaの「100 To Watch 2025」に日本の有力スタートアップとして選出されたほか、Bloombergなど海外メディアにも取り上げられ、海外露出が増加している。
2025年末に向けて量産体制の構築と納車開始を計画し、超小型モビリティの社会実装に向けて事業基盤を強化している。
画像はKGモーターズ HPより
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