ユビ電、シリーズCで10億円調達──マンション向けEV充電「WeCharge」普及加速へ

ユビ電、シリーズCで10億円調達──マンション向けEV充電「WeCharge」普及加速へ

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マンション向けEV充電サービス「WeCharge」を展開するユビ電株式会社は、シリーズCラウンドで総額10億円の資金調達を実施した。今回の調達にはスパークス・アセット・マネジメントがリード投資家として参画し、環境エネルギー投資、東邦ガス、三井住友信託銀行が新たに加わった。これにより累計調達額は27.5億円となった。

ユビ電は2019年に設立され、分譲・賃貸マンション向けのEV充電サービス「WeCharge」を提供している。事業の特徴は、マンション管理組合や理事会への導入提案から補助金申請、設計・施工、さらに充電利用者向けの決済・遠隔管理まで一貫して担う点にある。この仕組みにより、マンション居住者が自宅駐車場でEV充電を行う際のハードルを下げている。実際、同社のサービスを導入したマンションでは、全国平均を上回るEVおよびプラグインハイブリッド車の普及率が確認されている。

「WeCharge」では、各駐車区画ごとに専用の充電コンセントを設置し、利用者ごとに課金する仕組みを採用している。これにより、集合住宅特有の管理・費用負担の問題を受益者負担方式で解消し、管理組合や管理会社の業務負担軽減と投資回収性の両立を実現している。サービスは24時間365日の体制で運用されており、主要ディベロッパーへの納入実績も増加傾向にある。加えて、法人や自治体向けの自動車保有者用管理・集計システムの提供も進めている。

ユビ電の代表取締役社長、山口典男氏はKDD、HP、ソフトバンクでの経験を持ち、ソフトバンクの社内起業制度を活用した事業化実績がある。通信インフラ分野で培ったノウハウをもとに、「携帯電話ビジネスの個人課金モデルをエネルギーサービスに応用できるのでは」との発想からEV充電サービス事業を立ち上げた。

EV充電インフラ市場全体では、2024年の日本国内の乗用車に占めるEV比率が約3%自販連調べ)と過去最高を記録している一方、特に集合住宅での充電インフラ整備が市場拡大の障壁となっている。政府は2035年までに新車販売の電動化100%を目標に掲げ、東京都では2025年以降の新築マンションに充電設備設置を義務化するなど、普及施策が進む中、業界各社は管理組合・デベロッパー・自治体向けの提案を強化している。競合にはENECHANGE、パナソニック、オムロン、テラモーターズなどが挙げられるが、ユビ電は管理支援から設置後の遠隔課金管理、既存住宅への全区画型設置といった点で独自の強みを示している。

今回の資金調達は、スパークス・アセット・マネジメント(未来創生3号ファンド)主導のもと、環境エネルギー投資、東邦ガス、三井住友信託銀行による第三者割当増資等で実施された。今回調達した資金はWeChargeの普及拡大に加え、新料金体系やAIを活用した充電制御機能の開発、提携先となる管理会社や施工業者とのネットワーク強化に充てる計画だという。すでに阪急阪神不動産、日鉄興和不動産、大和ハウス、野村不動産、三井不動産などの新築・既築マンションで導入実績があり、2024年度第1四半期時点で導入マンションのEV充電契約率は全国平均の数倍(5.0%)に到達している。東京都の「チャレンジZEV2030プロジェクト」にも参画し、都市型基幹インフラとしてのEV充電設備の整備を官民で推進している。

今後、ユビ電は補助金制度や設備義務化の流れを背景に、マンションおよび集合住宅向けの提案をさらに強化し、「駐車中EVをエネルギー需給調整源とする」AI・IoT技術を活用した新サービスの開発に注力する。エネルギー会社との連携や自治体との協業、老朽化したマンションへの後付け設置モデルの拡充など、さまざまな課題への対応を進める方針だ。本格的な普及には管理組合や住民の理解、補助金制度の安定的な継続などが欠かせず、市場・法制度・エネルギーマネジメント分野の動向に応じた柔軟な事業運営が求められている。

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