コーヒーの楽しみ方を革新するスタートアップ4選

拡大するコーヒー消費と多様化する消費者ニーズ

世界的なコーヒー消費は近年堅調に拡大しており、国際コーヒー機関（ICO）によると、2023-24年シーズンには1000万トン以上が消費された。 2023年時点で世界第4位の消費量を記録している日本でも安定したコーヒー消費が続いており、家庭用や外食を通じた需要が底支えとなっている。

近年では、特に都市部の若年層やカフェ利用者を中心に、風味やスタイルへのこだわりが強まり、高級志向のスペシャルティコーヒー^※に注目が集まっている。

さらに、抽出器具や抽出方法が多様化し、サブスクなどの新サービスが登場するなど、コーヒー体験の幅は一層広がっている。

このように品質や体験価値を重視した選択肢への移行が進む中で、コーヒー体験に変革をもたらすビジネスを展開するスタートアップを4社紹介する。

※スペシャルティコーヒー：生産～流通まで徹底した品質管理が行われているため風味が優れており、産地等の情報が明確で追跡可能なコーヒー

スタートアップ4選

株式会社モカブル

企業HP：https://www.mokable.jp/

見た目と口溶けがまるでチョコレートのような食べるコーヒー豆「モカブル」の開発・販売などを行う企業。 同社は、「大切に育てられたコーヒー豆の個性を余すことなく楽しんでいただきたい」という思いから始まった、コーヒーをまるごと食べることができる製品「モカブル」の開発・製造・販売を行う。コーヒー豆の約70%がフィルターに残ってしまう「飲む」スタイルに対して、同社は豆をまるごと微粉砕し、サステナブルな植物油脂と組み合わせることで、香りや味わいをそのまま楽しめる食品としてコーヒーを提供している。豆が持つ豊かな香りやおいしさなどの貴重な成分をとりこぼさず、無駄なく楽しむことができるという。

2025年4月に設立された同社は、2025年10月に創業ラウンドとして総額1.5億円の資金調達を実施した。

POST COFFEE株式会社

企業HP：https://postcoffee.co/

顧客の好みに合わせたコーヒー豆のサブスクリプションサービス「PostCoffee」およびコーヒー豆等のECサイトを運営する企業。 サブスクリプション利用者は、「コーヒー診断」で好きな食べ物等の質問に答えることで、好みの焙煎度や酸味の強さ等を診断することができ、それに応じたコーヒー豆が毎月宅配される。

同社は2025年2月にシンガポールのVC、Joyance Asiaより資金調達を行った。アジア市場を中心としたグローバル展開を進め、世界中のロースターのコーヒーを購入することができるECプラットフォーム・サブスクリプションサービスの構築を目指す。

株式会社New Innovations

企業HP：https://newinov.com/

OMO（Online Merges with Offline）を軸に、AI やロボティクスといった先端技術でさまざまな業務の省人化・自動化を実現する事業を展開している。自動調理ロボットの開発・提供を進める中で、需要予測AIを搭載した無人カフェロボット 「root C」 を展開している。

「root C」は、AIが時間帯ごとの利用者数を予測し、注文が入る前から最適なタイミングで豆を挽き、抽出を開始。ロボット内部で一杯ずつ丁寧に仕上げることで、待ち時間を最小限に抑えつつ、できたてのスペシャルティコーヒーを提供する。利用者はアプリで事前注文し、受け取りに向かう仕組み。

完全無人で注文から提供までを完結できるため、運営コストを抑えつつ小さなスペースにも出店可能。これまでカフェの出店が難しかった場所にも、高品質なコーヒー体験を届けられる、新しい形のコーヒースタンドとして注目されている。

ストーリーライン株式会社

企業HP：https://storyline.co.jp/

独自のカフェイン除去技術「ZEN Craft Decaf Process」の開発や、コーヒー店「CHOOZE COFFEE」などの運営を行うスタートアップ。 同カフェイン除去技術について、東北大学と共同研究開発を行う。

従来のカフェインレスコーヒーには、カフェインを除去する過程でコーヒー本来の香りや旨味が失われてしまうという課題がある。「ZEN Craft Decaf Process」は、超臨界流体技術を活用し、コーヒー豆のアロマや旨味成分を残したまま安全にカフェインを除去することが可能だという。

同技術を活用し、「CHOOZE COFFEE」では顧客がコーヒーに含まれるカフェイン量を3〜5段階から選んでスペシャルティコーヒーを注文することができる。