AI前提の起業が当たり前に、スタートアップ投資は次の局面へ──Gazelle Capital 石橋氏

AI前提の起業が当たり前に、スタートアップ投資は次の局面へ──Gazelle Capital 石橋氏

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2025年は、日本のスタートアップを取り巻く環境において、これまでの前提が静かに揺さぶられ、再確認される場面が増えた一年だった。こうした状況を経て迎えた2026年。投資家は今、どのような視点でスタートアップエコシステムを捉えているのか。KEPPLEでは、2025年の振り返りと2026年の展望について、スタートアップ投資家複数名へのアンケート調査を実施。

今回は、Gazelle Capital 代表パートナー・石橋 孝太郎氏の回答を紹介する。

VC群雄割拠時代に入った日本、シード投資の目線も変化

──2025年を振り返って、最も印象的だった出来事を教えてください。 (例:注目されたビジネスモデル、政策・規制など)

どの投資家の方々も口を揃えるかと思いますが、「AI」の進歩だったかと思います。

弊社は、シードVCのため、初回の資金調達の機会に相対させていただく機会が多くございます。2024年頃より顕著になってきましたが、2025年はAIを前提にしていない起業家の方はほとんどいなくなったのではないでしょうか。

個人的には、2024年、遅くとも2025年より以前に創業したAIを前提としながら、大きな市場でスタートを切り始めている起業家の方の一部が勝ち残っていくと考えています。

例えば、次のマネーフォワードやfreeeのような大きな会社になっていくのではないでしょうか。

Horizontal SaaSが広がりながら、それでは解決しきれない入り込んだ課題をVertical SaaSが解決して成長しているように、AIスタートアップも、もう少しニッチな市場などはまだまだAIによる参入余地は2025年以降にもあるかとは考えています。

──2025年の調達環境の変化をどのように捉えていますか?課題や気づきがあれば教えてください。

起業家としても、VCとしても、調達環境は、「二極化」と「悪化」が加速していると考えます。

2桁億円、3桁億円規模のスタートアップの調達が目立つように思えますが、社数で比率を出すなら、あくまでも一部のスタートアップの方々に資金が過集中していると思います。

その手前には、一部のVCが運営するファンド一つ当たりの規模を大規模にし始めたことが大きく誘因していると考えます。過去にはなかった大きなファンドがリターンを出すためには、当然、過去にはなかった大きな規模のリターンを生み出してくださる投資先が必要です。

当然ではあるのですが、結果、大きな市場で、大きなチャレンジをしている、優秀なチーム、その3つを満たす起業家に資金が過集中し、時価総額も、資金調達額も膨らんでいるように思います。

逆にいえば、その3つを満たさない、もしくは懸念があるような起業家に投資をする大規模ファンドが減り、多くの起業家の方々にとっては、相対的に、いわゆるシリーズAラウンドの難易度が高くなっていると考えます。

そのため、シリーズAラウンドまでに求められる事業規模やKPIも引き上げられていますが、反比例して株価は下がって、悪化してきています。

VC側も、各種レポートなどでも言われていますが、足元満期を迎え始めている多くのファンドが、ファンド投資家に対してリターンを十分に返せていないと言われています。

2010年代は、VCもプレイヤーが少なく、オープンイノベーションも流行りながらも、ノウハウが平準化されていなかったため、VCへの投資もニーズが強かったように感じています。

ただ、結果ノウハウは一定数平準化され、またファイナンシャルリターンも少ないとなると、ブランドのあるVCには、資金が集まり、そうでないところには集まらないというような二極化は進んでいるように感じます。

近年は、弊社などを含む独立系のファンドにチャレンジするプレイヤーも増えましたが、先輩VC含め、新興系プレイヤーの中にも、数年後には新規のファンド組成ができない方々も出てくるような、VC群雄割拠時代に入ったと考えています。

──2026年に注目するセクターとその理由を教えてください。(海外トレンドや国内の動向なども含めて)

弊社は、一貫して既存産業 × インターネットを標榜して、シード投資活動をしております。

止まらない労働人口不足、現場に定着しない効率化ツール・ソフトウェア。

印象的な出来事に、AIの進歩をあげさせていただきましたが、今までもこれまでもソフトウェアの進歩だけで全てがすぐに解決は難しいと感じています。営業の手法や、カスタマーサクセスの在り方の改善で一定数どうにかなる部分もあるとも思います。

しかし、結局はお客様のリテラシーに受け入れられやすいBPO形式や、コンサルティング形式。また主体的に実業を変えていくようなロールアップや、実業を自社で展開するビジネスなど。お客様目線では、基本に立ち返りながらも、知らぬところで進歩したAIの恩恵を提供し、結果売り上げも、何より利益を強く出そうとするスタートアップに変わらず投資していきたいと考えています。

──2026年の資金調達環境について、どのような見通しを持っていますか?また、スタートアップが備えておくべきポイントは何だと思いますか?

今後の見通しとしても、今年以降の資金調達環境は、足元2025年の大きなトレンドと変わらず、「二極化」と「悪化」だとは感じています。東証100億円規制などの話題もありますが、売上利益を健全に積み上げている会社は、適切な株価で一定の出口を迎えられるはずです。

二極化してきている今だからこそ、改めて自社がどうエクイティ市場に向き合っていくのか、エクイティ以外の手法も織り交ぜながら、資金調達をどのようにして実現していくのかを冷静に考える必要があると思います。

結果、長期間かけて大型のIPOを目指す、途中でM&Aに切り替える、そもそもエクイティではなく、手法も多様化してきた融資などでの調達にするなど、自社のモデルに適切な資金調達を事前に想定しておけるかがポイントになるのではないでしょうか。

──「スタートアップ育成5か年計画」発表からの3年を振り返り、2027年度に国内で10兆円規模の投資額を実現するうえでの課題や、必要なピースは何だと思いますか?

個人的には、10兆円にする必要あるのか?とは素直に思います。が、仮にそうなっていくのであれば、スタートアップ投資がもっと儲かるようになることが先決と考えます。

結果VCがさらに勃興するのはもちろん、様々なレイヤーの投資家が参入してこなければ難しいと考えているからです。そのための施策としては、圧倒的に内部留保が大きくなっている大企業の皆様が、よりスタートアップ企業を買収しやすくする、またM&Aの価格を上昇させやすくするための、会計基準の再整備。また、大きな上場規模に足る事業規模を築く時間を未上場期間に確保するために、未上場株式の流動性の向上なのではと思います。

スタートアップ投資が儲かるから、みんな参入してくる。結果流動性も高まり、多様性も上がり、多様な資金調達手段を活用しながら、多くのスタートアップが過去にみない規模に成長していく。結果またリターンが大きくなる、みたいなサイクルを作れない限り、現在の1兆円弱ほどの規模でも十分では?と思っています。

国が掲げた大きな方針は歓迎しつつ、日本ならではのスタートアップエコシステムについて、足元の状況を冷静に判断しながら、関係者の皆さまと一緒により良い循環を作っていけるよう、1VCとして引き続き尽力してまいります。

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