株式会社ハイヤールー

エンジニア向け採用プラットフォームを展開する株式会社ハイヤールーは、シリーズAラウンドのセカンドクローズとして、プライマルキャピタルやクレストスキルパートナーズ、個人投資家4名、銀行融資を引受先に約2.2億円の追加資金調達を実施した。これにより、同ラウンドでの累計調達額は約5.3億円となった。あわせて、スキル保証型採用のβ版のリリースを開始した。
ハイヤールーは2020年12月に設立され、ソフトウェアエンジニア採用領域でスキル評価とマッチング精度の向上を目的としたコーディング試験プラットフォーム「HireRoo」を主軸に事業を展開している。プラットフォームは出題・管理画面ともに英語対応しており、国内外双方のエンジニア採用ニーズに対応する設計となっている。
主力サービスの「HireRoo Skill Interview」では、事前課題と面接時ディスカッションを組み合わせることで、コーディング力のほかソフトスキルも定量的に評価可能とし、採用プロセスの効率化と選考の公平性を追求している。これまでに200社以上への導入実績や、約5万件の採用選考利用、売上の前年度比10倍成長など、急速な事業拡大が続いている。さらに、2025年9月には企業と候補者のマッチングを支援する新規サービス「HireRoo Skill Hiring」を正式リリース予定とし、採用・評価・育成をつなぐエンジニアリング組織向けプラットフォームへの発展を計画している。
ハイヤールーの代表取締役である葛岡宏祐氏は、バックパッカーとして世界一周を経験後、独学でiOS旅行アプリ「AminGo」を開発・リリース。2018年、AIエンジニアとしてディー・エヌ・エー(DeNA)に入社し、社内外のイベントにも多数登壇した。2020年2月にはメルカリにテックリードとして参画し、画像検索プロジェクトを担当。同年12月、在籍中にハイヤールーを創業した。
ITエンジニア採用市場では、技術力だけでなくコミュニケーション能力も重視される傾向が強まっている。一方で、日本企業の多くでは学歴や職歴による選考バイアスが根強く残っているのが実情だ。採用ミスマッチによる企業側のコストは一件あたり500~700万円、場合によっては1000万円以上に上るとの調査結果もある。ミスマッチを経験した企業は8割を超えており、人材の最適配置は企業成長を左右する課題となっている。こうした背景から、公平なスキル評価・選考プロセスの実現は業界全体にとって重要なテーマとなっている。
コーディング試験プラットフォームの分野では、グローバルではHackerRankやCodility、日本国内ではTOPSICなどが競合として存在している。HireRooは「受験者提出試験数による従量課金制」や「18種類のプログラミング言語対応」(2022年時点)など、導入コストや柔軟な料金体系を特徴としている。加えて、日本語・英語双方のユーザーインターフェース、ネイティブ監修による問題、SSO(シングルサインオン)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証といったセキュリティ要件にも対応している。
今回調達した資金は、既存事業であるコーディング試験サービスの拡大および新たに展開予定のマッチング事業の開発資金として活用される。採用プラットフォームとしての基盤強化に加え、2026年には社内人材評価領域への進出も計画している。サービス提供体制の強化として、人員を30名体制へ拡大する予定である。
今後の課題としては、新規事業におけるプロダクトマーケットフィット(PMF)の獲得や、従来の人事評価や採用の慣習変革の促進が挙げられる。また、競合サービスと比較した際の機能拡張性、多言語対応、法規制適合といった点も引き続き注視すべき項目となっている。
ハイヤールーは、コーディング試験サービスからエンジニアリング組織のインフラを目指す成長段階にある。今後もエンジニア人材の可視化や最適配置、採用・評価・育成を一体化するソリューションの展開に取り組んでいく方針だ。