五常・アンド・カンパニー株式会社

2024年のスタートアップによる資金調達総額は8097億円(※プレスリリース情報に基づく速報値)で前年比15.5%増となった。対前年で落ち込んだ2023年から回復し、2022年比でも増加するなど、堅調な一年だったといえる。
(株)ケップルは、スタートアップの動向を把握するうえで、資金調達と同様に重要な指標として「従業員数」に注目。2023年12月~2024年12月の国内スタートアップの従業員数を集計し、スタートアップ動向レポート「従業員数から読み解く国内スタートアップの現在地2024」としてまとめた。今回は、レポートの中から金融セクターの従業員数推移や市場動向に関する解説を紹介する。
本記事で触れるセクター別レポートの全文は、ケップルが提供するスタートアップデータベース「KEPPLE DB」のスタータープラン(初期費用・月額無料)に登録することで閲覧できる。
新規設立数は減少傾向も、最新技術を用いたスタートアップが増加
2010年代を通じてフィンテックの台頭や投資環境の整備がスタートアップ企業の設立を後押しし、個人投資や少額融資などの分野に取り組むスタートアップが増加した。評価額100億円を超える企業には、決済、送金サービスである株式会社Kyash、後払いサービスを提供する株式会社Paidy、ファクタリング会社のOLTA株式会社などがある。
.png?auto=compress&fm=webp&w=1780&h=828)
注:上場したスタートアップや閉鎖企業などを含む
近年、キャッシュレス決済や家計簿アプリなど一部の金融サービス市場が成熟し、投資環境の不透明感も重なったことで、新規設立数は減少傾向にある。しかし2017年の改正資金決済法や2021年の金融サービス仲介業法などの法整備、規制緩和が進んだことにより、従来の金融機関を超えたソリューションの提供が可能となった。AIやデータ分析技術を活用した利便性の高いサービスを提供するフィンテックスタートアップが増加、従来の金融市場に変革が訪れている。
.png?auto=compress&fm=webp&w=1780&h=828)
注:2024年1月時点=100として指数化(セクター全企業の従業員数が対象)
支援インフラとBtoB領域の台頭で市場拡大
新興国における中間層の拡大、デジタル技術の革新、アンダーバンクト層への金融サービスの浸透などを背景に、フィンテック関連市場は今後も高い成長が期待されている。2021年の市場規模は2450億ドルに達し、2030年には1兆5000億ドルへと、約6倍の成長が見込まれている※1。
金融市場は国の規制に大きく影響を受けるため、成長の仕方は国によって異なる。例えばアメリカは、AIやデータ解析技術を駆使し、トレーディングやリスク予測、顧客体験の高度なパーソナライズを実現しており、超高速取引やリスク管理の分野が発達している。それに対して中国では、金融インフラが発展途上であったことからモバイル決済が急速に普及しており、「Alipay」や「WeChat Pay」といったスマートフォンさえあれば利用できるサービスが政府の後押しのもと広く浸透している。
特に欧米では、金融機関の基幹業務やサービス提供基盤を支援するスタートアップの存在感が高まっている。イギリスのFintechOSは、銀行や保険会社が自社のデジタルサービスをスピーディーに構築・提供できるよう、ローコード/ノーコードの開発プラットフォームを提供している。新たな保険商品や融資サービスなどを短期間で立ち上げることができ、既存の基幹システムと連携しながら段階的にデジタル化を進められる点が特徴だ。またアメリカでは、PEファンドやプライベートキャピタルによる中小企業買収が活発であり、地理的・業種的に分散した企業同士をつなぐためのM&A支援インフラ整備に取り組むスタートアップが増加している。Axial Networksは、中堅・中小企業向けのM&Aマーケットプレイスを提供しており、売却希望企業とPEファンドや企業買収担当者をオンライン上でマッチングする。仲介を介さず、当事者同士の直接交渉を促進する仕組みを構築し、スピード感が重視される米国のM&Aを支えている。
国内では規制緩和により事業領域が広がる
日本では、長年の規制の厳格さ、現金主義の根強さ、そして金融機関や利用者側のデジタルリテラシーの課題により、フィンテックの成長は他国に比べ遅れを取ってきたが、近年は規制緩和などにより新たな分野に進出するスタートアップが存在感を示す。五常・アンド・カンパニー株式会社は、マイクロファイナンスを中心とした金融サービスを新興国で展開しており、現地通貨による少額融資を通じて低所得層の生活向上を支援している。多様な決済手段や関連サービスを提供する企業も増加しており、株式会社UPSIDERはスタートアップやスモールビジネス向けに、法人クレジットカード「UPSIDER」を提供している。従来の枠組みにとらわれないスタートアップの台頭が、日本のフィンテック市場を再定義する転換点を迎えている。
.png?auto=compress&fm=webp&w=1689&h=413)
※プレスリリース情報に基づく
各セクターの詳細レポートが見られるのは「KEPPLE DB」だけ
本セクターの、2024年従業員数ランキング(2023年12月から2024年12月までの期間を集計)と主要なカテゴリーに属する国内外のスタートアップの動向、掲載企業の一覧は KEPPLE DB でご覧いただけます。
月額無料でご利用いただけるスタータープランにご登録いただくと、本レポートをはじめとした業界トレンド記事やスタートアップ企業情報を、チケットを使って閲覧することができます。
ぜひご登録ください。
Writer

高 実那美
株式会社ケップル / Data Analysis Group / Database Division / アナリスト
新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。
Tag