Helical Fusion、ヘリカル型核融合炉の商用化を目指しシリーズAで23億円を調達──「Helix Program」で2030年代の実用発電実証へ

米国のスタートアップ、Commonwealth Fusion Systems(CFS)が累計約30億ドルの資金調達を完了した。今回のラウンドでは新たに8億6300万ドルのシリーズB2調達を実施し、日本の大手12社によるコンソーシアムほか国内外の投資家が出資した。調達資金は核融合実験炉「SPARC」の建設と、初の商業用核融合発電所「ARC」の開発に活用される。
CFSは2018年、マサチューセッツ工科大学(MIT)のプラズマ科学・核融合センターからスピンアウトする形で設立された。代表は共同創業者のBob Mumgaard氏で、核融合研究に長年従事した経歴を持つ。創業時には複数のMIT出身科学者・エンジニアが参画し、Bob Mumgaard氏が技術開発と事業推進の両面を統括してきた。
CFSは独自の高温超伝導(HTS)磁石技術とコンパクトなトカマク型炉の組み合わせによる核融合装置開発に取り組む。従来の大型核融合実験炉と比較し、効率性と経済性の両立を図る設計思想が特徴だ。現在建設中のSPARCは2027 6年の稼働を予定し、核融合エネルギーの実収支(Q値)1超の達成を目指す。
商業用発電所ARCはバージニア州チェスターフィールド郡で2030年代前半の運転開始を目標に開発が進められている。運転開始後にはGoogleとの契約に基づき、最大200MWの長期電力供給を行う計画である。
経営体制はBob Mumgaard氏(CEO)が統率し、科学、工学、資金調達分野の専門家が集結している。創業チームには多数の機関投資家・有識者が関与している。
世界的な電力需要増加やAI・データセンターの拡大を背景に、次世代エネルギーとしての核融合への関心が高まっている。IEA(国際エネルギー機関)は2050年の世界電力需要が現在の約2倍に達すると予測しているが、再生可能エネルギーには安定供給や需給調整の課題があり、従来型原子力発電には建設費や安全性、廃棄物管理のハードルが存在する。
核融合発電は、燃料として重水素や三重水素(水素の同位体)を用い、運転時にCO₂を排出しない、理論上暴走事故が生じないといった特徴がある。ただし、極めて高温のプラズマを安定的に制御・閉じ込める技術や経済性の壁がこれまでの課題とされてきた。
核融合分野のグローバル市場では、欧米を中心に官民連携による大規模投資が進展している。2024~2025年の世界累計投資額は約90億ドルと推計されている。
民間資金の流入も拡大しており、エネルギー大手やテクノロジー企業、金融機関などが積極的に関与している。主要な競合にはHelion Energy(米、2028年にMicrosoft向け発電開始予定)、TAE Technologies(米)、First Light Fusion(英)などが挙げられる。
今回の資金調達ラウンドには、三井物産、三菱商事、日本政策投資銀行、フジクラ、JERA、日揮、三井不動産、商船三井、NTT、三井住友銀行、三井住友信託銀行、関西電力の計12社が出資した。これら出資者は、世界的な電化やAI・データセンター対応に伴う電力需要増への対応策として、核融合発電の商業化が重要だと認識しているという。
このほか、NVentures(NVIDIA傘下)、Morgan Stanley、Googleなども参加しており、CFSのグローバルな資本構成がさらに強化された。累計調達額30億ドルは、民間核融合企業に対する世界全体の投資額の約3分の1に相当し、同分野で最大規模の資金力を形成している。
商業用炉ARCの初号機建設費は最大で数十億ドル規模が見込まれているが、Googleとの電力購入契約(PPA)を通じて事業リスクの分散と拡張性の確保を図る。またGoogleはデータセンターの電力需要増大に対応するため、CFSへの追加出資を実施している。データセンターの消費電力は2030年までに世界全体で2倍になるとされ、電力効率(PUE)の向上やCO₂排出量削減への対応が求められている。
日本国内では2024年にフュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)が設立され、京都フュージョニアリングなどのスタートアップも台頭しつつある。日本は戦略整備が前進する一方、投融資は今後の拡充が課題であり、グローバルな競争下で日本企業が核融合サプライチェーンの競争力を保持・強化するには、民間リスクマネーの動員や規制整備の加速が課題となっている。
CFSは、SPARCの実証結果が商業炉ARCの開発進捗に直結するとしており、今後は技術検証および工業化プロセスの確立が焦点となる。最初のグリッド送電は2030年代前半を目指しているが、核融合発電の本格的な普及にはコスト低減や技術進展、国際的な協調体制の強化が不可欠となる見通しである。
画像はCommonwealth Fusion System HPより
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