CaTeが15.8億円調達、遠隔心臓リハビリ医療機器で社会実装へ

CaTeが15.8億円調達、遠隔心臓リハビリ医療機器で社会実装へ

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遠隔心臓リハビリプログラム医療機器の開発を手がける株式会社CaTeが、2025年8月にシリーズBラウンド・1stクローズとして、第三者割当増資による総額15.8億円の資金調達を実施した。

今回のラウンドには、未来創生3号ファンド(スパークス・アセット・マネジメント)やみずほキャピタルがリード投資家として参画し、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、未来創造キャピタル、きらぼしキャピタル、フジタ・イノベーション・キャピタル、トーカイなどのベンチャーキャピタルや事業会社、さらにサムライインキュベートやジャフコ、東京ウェルネスインパクトファンドといった既存投資家も加わった。これにより累計調達額は23.9億円(研究費1.9億円を含む)となった。

CaTeは2020年に設立されたスタートアップで、心疾患患者が自宅で安全に運動療法を継続できる医療機器およびサービスを開発・提供している。AIやIoTといったデジタル技術を活用し、心臓リハビリテーションプログラムを遠隔で実施できる仕組みを築くことを事業の軸とする。具体的には、従来の心臓リハビリで用いられてきたエルゴメーター等の専用器具を必要とせず、立位運動を中心に自宅の限られたスペースでもリハビリが継続できるのが特徴だ。患者はスマートフォンなどの汎用デバイスを用いてバイタルデータや行動データを記録し、食生活のサポートやAIによる通知機能も組み合わせることで、行動変容を促す設計となっている。さらに、医療従事者が遠隔で患者を管理・指導できるシステムも備える。

代表取締役の寺嶋一裕氏は現役の循環器内科医であり、2020年3月にCaTeを創業した。寺嶋氏は臨床現場で心疾患患者の退院後の予後管理の難しさや、外来心臓リハビリの普及率の低さを課題と認識し、現場での経験を活かしてプロダクト開発に携わっている。経営陣にはエンジニアやCFOなど多様な専門人材が参画しているほか、藤田医科大学や名古屋大学などとの産学連携にも取り組む。

心疾患は日本の死因の第2位に位置し、年間で23万人以上が亡くなっている。退院から1年以内の再入院率は29.4%、1年総死亡率も高く、長期的な治療介入の仕組みが求められている。心臓リハビリテーションは再入院や死亡のリスク低減、QOL(生活の質)改善などの効果が医学的に示されているものの、日本における外来心臓リハビリの参加率は7%程度にとどまる。背景には、リハビリ施設や医療スタッフの不足、患者側の通院負担の大きさなどがある。新型コロナウイルス感染症の影響で医療現場の制約が強まり、こうした課題はさらに顕在化した。

医療業界全体では、デジタル治療機器(DTx:デジタルセラピューティクス)による慢性疾患管理がグローバルに広がっている。高血圧、糖尿病、高血圧、体重管理/肥満、喫煙依存などで導入が進んでおり、心疾患領域でもリモート型のアプローチへと需要が高まっている。米国ではLivongoやOmada Healthといった企業が競合として存在し、日本国内でも保険診療の認可取得や臨床研究の推進といった動きが活発化している。ただし、運動療法のリアルタイム管理や個別最適化、安全性の確保については業界全体で引き続き課題が残る。

CaTeによれば、2024年に同社の遠隔心臓リハビリ医療機器を用いた特定臨床研究が終了している。6分間歩行距離およびPeak VO2(最大酸素摂取量)などの主要評価指標において、既存治療と同等の有効性が示唆されたという。安全性に関しても、リスクイベントの発生はなく、プログラムの継続率も高かった。これらの研究データをもとに、今後は検証的治験の開始、社会実装の本格展開、新規事業開発や組織体制の拡充などを計画している。

今回調達した資金は、社会実装に向けて検証的治験を開始、組織体制の一層の強化、新規事業開発を進める計画だ。

本件は、スタートアップによる現場課題起点のプロダクト開発と社会実装の取り組みとして、医療DXやウェルネス分野における今後の動向を示すものとなった。臨床現場や患者の受容性、保険・医療制度側の評価、市場競争など、複数の要素が今後の事業展開に影響を与える見込みである。

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