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核融合技術で未来を変えるスタートアップ5選

株式会社EX-Fusion(代表取締役社長:松尾一輝)は、シリーズAエクステンションラウンドでJX金属、パーソルベンチャーパートナーズ、SBI新生企業投資を引受先として、総額4億円を調達した。これにより、シリーズAでの累計調達額は30億円、創業以来の総調達額は60億円に達した。
同社は、二酸化炭素を排出せず無尽蔵のエネルギーを生み出す「レーザー核融合」の商用化を目指す日本発のディープテック企業。脱炭素化とエネルギー安全保障の両立が世界的な課題となる中、同技術は安定供給可能なクリーンエネルギーとして注目を集めている。特にレーザー核融合は、複数ある核融合方式の中で唯一エネルギー純増を実験的に達成しており、既に本格的な実用化フェーズに入りつつある。
CEOの松尾一輝氏は、大阪大学在学中から高速点火方式核融合の研究に取り組み、従来方式より効率的な核融合プラズマ加熱を実証。博士課程修了後の2020年にカリフォルニア大学で研究を続け、2021年にEX-Fusionを設立し。
EX-Fusionは設立以来、「日本発の技術で未来のエネルギーをつくる」という理念のもと、光制御、ターゲット供給、高出力レーザーといった要素技術を自社開発し、商用炉実現に向けた研究開発を進めてきた。今回の資金調達は、これらの技術を統合し「1秒間に10回の核融合反応を連続発生させる」連続運転の実証を目指す重要なステップと位置づけられている。核融合の連続反応を安定的に制御できれば、発電炉としての商用化に向けた大きな前進となる。さらに、開発過程で培われる高出力レーザーや精密光制御技術は、医療・宇宙・精密加工など他産業への応用も期待されており、EX-Fusionは「レーザー核融合を起点に新たな光産業を創出する」ことを掲げている。
今後、同社は三つの軸で事業を展開していく。
1. 国内でのレーザー核融合実証機の構築
2027年度までに「1時間連続中性子発生」の実証をマイルストーンとし、要素技術の統合、実証機の設計・製作・試験を進める。自社開発技術を核に、国内でのレーザー核融合技術のハブとなることを目指す。
2. 国内外の連携による社会実装体制の構築
国立研究機関、大学、民間企業との連携を強化し、研究開発から社会実装までを見据えた持続可能なエコシステムの形成を推進。
3. 光技術の産業応用展開
核融合研究で得た高出力・高精度の光技術を、精密加工、半導体製造、医療、宇宙観測などの分野に展開。すでに大手企業との共同研究や応用システム開発が始まっており、次世代光産業の創出を目指す。
レーザー核融合エネルギーは、高レベル放射性廃棄物をほとんど出さず、海水から採取できる燃料を用いる持続可能なクリーンエネルギーである。原子炉並みの発電能力と再生可能エネルギー並みの安全性を併せ持ち、レーザー照射の頻度を変えることで電力需要の変動にも柔軟に対応できる点が特徴だ。EX-Fusionは、こうした技術の社会実装を通じて、エネルギー供給の構造転換と産業競争力の強化を目指しており、「日本から世界を変える核融合スタートアップ」として期待が高まっている。
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