EX-Fusion、シリーズAで26億円調達ーーレーザー核融合の連続運転実証へ本格始動

EX-Fusion、シリーズAで26億円調達ーーレーザー核融合の連続運転実証へ本格始動

xfacebooklinkedInnoteline

核融合発電技術の社会実装を目指す株式会社EX-Fusionが、シリーズAラウンドで総額約26億円(第三者割当増資23億円、融資3億円)の資金調達を完了した。これにより、創業からの累計調達額は56億円となった。引受先として、大阪大学ベンチャーキャピタル、MPower Partners、三菱 UFJ キャピタル、みずほキャピタル、フジクラなどが参加している。

EX-Fusionは2021年7月に設立された大阪大学発のスタートアップで、主にレーザー核融合方式を用いた発電商用炉の開発に取り組む。レーザー核融合は、直径数ミリメートルの燃料ペレットに高出力レーザーを照射し、重水素と三重水素(トリチウム)による核融合反応を人工的に起こす技術だ。発生するエネルギーを発電に活用することが狙いで、レーザーの高精度制御や連続照射システムの構築が不可欠とされている。2024年4月には、静岡県浜松市に実証研究施設を新設している。

代表取締役社長は松尾一輝氏。松尾氏は大阪大学で高速点火方式核融合の研究に従事し、米カリフォルニア大学サンディエゴ校でも核融合領域の研究経験を有し、2021年にEX-Fusionを創業した。

核融合発電は、脱炭素化やエネルギー安全保障の観点から世界的な関心が高まっている分野である。日本国内でも核融合スタートアップ4社の企業価値が合計1000億円超という推計もあり、産業集積の兆しが見られる。日本のエネルギー自給率は2022年度で12.6%にとどまり、燃料資源の多くを海外に依存している現状があるため、核融合発電への期待が強い。なお、核融合の燃料となる重水素は海水から容易に得られるという特性がある。

核融合技術には大きく分けて二つの方式が存在する。一つは磁場閉じ込め方式(代表例として国際熱核融合実験炉プロジェクトITER)、もう一つがレーザーを用いた慣性閉じ込め方式である。後者は燃料ペレットに瞬間的に高エネルギーのレーザーを照射し、核融合反応を繰り返し起こすことで発電を目指す。電力系統における需要変動に柔軟に対応できる点が特徴とされる。競合としては、米国ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)が2022年、レーザーによる核融合点火・燃焼に成功した。レーザー出力の増強や照射回数の拡大、コスト低減など、課題はグローバルに共有されており、世界各国が開発を加速している。

脱炭素化とエネルギー安全保障の両面から、CO₂を排出せず、無尽蔵のエネルギーを自国で生産できる核融合技術への期待が高まっている。EX-Fusionは「日本発の技術で未来のエネルギーをつくる」という強い意志のもと、光制御・ターゲット供給・高出力レーザーといった要素技術の開発を進めている。レーザー核融合はエネルギー純増を実験的に達成した唯一の方式であり、ピーク電源からベースロードまで柔軟に対応可能な将来の電力インフラの中核技術と位置づけられる。

今回の資金調達は、1秒間に10回の核融合反応を連続して発生させる「連続運転」の実証に向けた重要な一手である。高出力レーザーや精密光制御技術は発電にとどまらず、加工、医療、宇宙などの産業分野への応用も視野に入れているという。

今後の展望としては、下記の3つの軸を中心に事業展開を進める。

1.国内におけるレーザー核融合実証機の構築:2027年度の「1時間連続中性子発生」実証をマイルストーンとし、要素技術を統合した実証機の設計・製作・試験に取り組む。自社開発技術を中核に据え、国内におけるレーザー核融合技術の中核拠点を目指す。

2.国内外の連携による社会実装体制の構築:国立研究機関、大学、民間企業との連携を国内外で強化し、自社技術の付加価値を高めながら、社会実装に向けた持続可能なエコシステムを構築する。

3.光技術の産業応用展開:レーザー加工など高出力・高精度が求められる分野に対し、核融合開発で培った光技術を展開。一部では大手企業との連携による応用技術のシステム開発も進行中。

今後も、レーザー核融合を起点に、新たな光産業を創出し、エネルギーと産業の構造そのものを変革することを目指す方針だ。

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

投資家向けサービス

スタートアップ向けサービス