はじめに
海外だけでなく日本でも、女性の健康問題にテクノロジーを活用するフェムテック企業(FemTech)が注目を集めている。生理周期のトラッキング、妊娠に関連したテクノロジー、性の健康、更年期のサポートなど、フェムテック市場は多岐にわたるセグメントで成長している。
矢野経済研究所※1によると、2021年のフェムテック市場規模は前年比107.7%の642億9700万円となり、勢いを増している。また、日立コンサルティング※2では、フェムテックの経済効果は2025年時点で年間およそ2兆円に上ると推測されている。
Global Gender Gap Report 2023※3では、日本のジェンダー指数は146か国中125位となり、他国が格差解消の取り組みを進める間、日本は足踏みしてきたと言える。妊娠や不妊、月経、更年期など女性特有の課題をあらゆるサービスで解決し、女性が暮らしやすい国へと変えていきたいところだ。
スタートアップ6選
この領域の上場企業としては株式会社エムティーアイが挙げられるが、今回は非上場のスタートアップ6社を紹介する。
オモテテ株式会社
生理用品をあらゆるトイレで配布するサービス「unfre.」を提供する。ユーザーは、アプリから生理用品の設置場所を調べ、画面を操作することでボックスから無料で生理用品を取り出すことができる。利用状況や生理用品の補充は遠隔で管理する。
現在は各社と実証実験を重ね、サービス改善やユーザー調査、その他将来的な協業の検討を進めている。2022年にはマイクロソフトのスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」、JR東日本スタートアップ主催の「未来変革パートナーシッププログラム」第二弾などに採択された。
株式会社ステルラ
妊活グッズの定期便サービス「Myera」、妊活・不妊治療のクリニック検索予約プラットフォーム「婦人科ラボ」を運営する。
Myeraは妊娠を望むユーザー向けのサービス。葉酸サプリ、排卵検査薬、産婦人科医監修の妊活スタートブックなど妊娠のために必要なモノが毎月まとまって届くほか、LINEで専属看護師のサポートがいつでも受けられる。婦人科ラボでは、妊活・不妊治療に関する情報を提供する。クリニック検索、医師監修の妊活コラムや動画の視聴、LINEでの無料相談もできる。
2020年6月には、シードラウンドにて第三者割当増資による資金調達を実施した。2023年7月には、⽇本総合研究所と提携し、ダイバーシティ推進のための取り組みを開始。働きやすく、能力が発揮しやすい環境づくりを目指す。
企業HP:https://sutelura.jp/
わたし漢方株式会社
オンライン漢方相談サービス「わたし漢方」を提供する。ユーザーは薬剤師にLINEで相談し、自分に合った漢方薬を配送してもらえる。最初の問診は無料で、24時間相談可能だ。漢方薬局で購入すると通常は一月あたり2~6万円かかるところ、同社サービスではLINEでの相談に特化しているため定額1万円台で購入可能だ。購入後も、体質の変化に合わせて随時LINEで相談でき、漢方薬の変更も無料となっている。
2021年3月には、シードラウンドにて第三者割当増資による資金調達を実施した。2023年1月時点で、LINE公式アカウントの友達登録者数は10万人を突破し、直近半年間で約2.5万人増加し、昨年比では約2.2倍となった。
株式会社WRAY
女性向けセルフケアブランド「WRAY」を運営する。 WRAYは、シルクウォーマー(パンツ型腹巻)・サプリメント・デリケートゾーンソープ・吸水ショーツ等の女性向けプロダクトを手掛けるブランド。また、LINEを使用した月経周期トラッキングや情報コンテンツなどで女性のセルフケアをサポートしている。
創業からのべ約1万人のユーザーを獲得し、2022年3月期の売上高は初年度比約600%となった。
2022年7月には、KIRIN HEALTH INNOVATION FUND、HIRAC FUNDを引受先とする第三者割当増資および金融機関からの融資により、1.4億円の資金調達を実施した。
企業HP:https://wray.jp
株式会社MEDITA
女性特化型健康経営プラットフォーム「Aidy」を運営している。Aidyは、女性特有の総合健康チェック、女性専門家による健康相談、OTC薬品や生理用品の非対面入手が可能なサービスとして、働く女性を支援できるサービスを提供している。また、女性向け商品、研究のコンサルティング支援や企業などの配置薬の在庫管理なども行う。
2021年1月には、Beyond Next Ventures、Velocity LLPを引受先とする第三者割当増資により、1.2億円の資金調達を実施。2023年5月には、Aidyのサービスでオンライン診療の連携を開始しオンラインピルの配送や産婦人科・婦人科のオンラインでの診療が可能となった。また、2023年8月には、配置薬販売業の許可も取得した。
Flora株式会社
妊産婦向けメンタルケアサービスを開発・運営する。 助産師や保育士などの専門家と提携し、グループセラピーやオンラインサロンを開催。また、個人にあった生理周期の解析、月経痛の緩和方法、妊活サポート、体温記録等ができる「flora app」を開発。2022年11月時点で、ダウンロード数約5万人を達成。生理痛、PMSに次いで労働損失の原因とされている更年期症状にフォーカスし、女性が長く社会で活躍できるようサポートしていくことを目指す。
2022年11月には、ブリッジラウンドにて、Social Entrepreneur 3投資事業有限責任組合等を引受先とした資金調達を実施した。2023年3月には、ChatGPTを活用し、女性の健康課題に特化したチャットアシスタント機能「Flora AI」を開発。
おわりに
今回紹介した企業は、女性がより働きやすく、生活のしやすい社会の実現を加速させている。今後も、フェムテック関連のスタートアップの動向にはさらに注目が集まりそうだ。
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参考:
※1 矢野経済研究所「フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査を実施(2022年)」
※2 日立コンサルティング「第3回 フェムテックで変わる未来」
※3 World Economic Forum「Global Gender Gap Report 2023 INSIGHT REPORT JUNE 2023」