ポストISS時代に挑む──ElevationSpaceが11億円を調達し再突入技術を商業化へ

ポストISS時代に挑む──ElevationSpaceが11億円を調達し再突入技術を商業化へ

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宇宙スタートアップの株式会社ElevationSpaceは、2025年9月にプレシリーズBラウンドで、第三者割当増資と融資による総額11億円の資金調達を実施し、創業以来の累計調達額が37億円に達した。この資金は、宇宙から地球への回収型輸送サービスの開発強化や、日本初となる民間主導による再突入衛星「あおば」のフライトモデル製造、回収サービスの事業化推進に充てられる。

ElevationSpaceは2021年2月設立。主に宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」と、有人宇宙拠点からの高頻度物資回収サービス「ELS-RS」の開発・提供に取り組む。東北大学やJAXAとの連携を生かし、宇宙空間での研究開発や製造品を地球に持ち帰るための小型再突入衛星技術を進めてきた。2026年後半以降には、小型再突入衛星「あおば」の打ち上げを計画しており、民間主導として日本初の再突入・回収技術の実証と商業化を目指す。

事業背景には、国際宇宙ステーション(ISS)が2030年末までに運用を終了予定であることが挙げられる。ISSは基礎研究から産業利用まで広く活用されてきたが、その後継となる宇宙実験・環境利用の場の確保が国際的な課題となっている。ElevationSpaceは「ポストISS時代」を見据え、フリーフライヤー型衛星を活用した高頻度かつ柔軟な回収・実証サービスを提供し、宇宙と地球の間で双方向の物流循環を実現するインフラ構築を事業の核に据えている。

代表取締役CEOは創業者の小林稜平氏。秋田高専在学中の19歳で宇宙建築に出会い人生が転機を迎える。その後、東北大学で建築学と宇宙工学を専攻し、修士号(工学)を取得。在学中には人工衛星開発プロジェクトや次世代宇宙建築物の研究に従事し、宇宙建築分野で日本1位・世界2位を獲得した。複数の宇宙ベンチャーを含む企業でインターンを経験したのち、ElevationSpaceを起業。共同創業者の桒原聡文氏は東北大学教授として超小型人工衛星の研究開発に従事し、15機以上を開発・運用してきた。創業期にCTOを務めたほか、複数企業の技術顧問やUNISEC理事を兼任している。

世界の宇宙産業市場は、公的機関の推計によれば今後数十兆円から100兆円超規模への成長が見込まれる。ロケットによる「宇宙へのアクセス」技術は近年進展しているが、「宇宙からの帰還」分野は依然として参入事例が少なく、商業サービスは途上段階にある。米国ではSpaceXやSierra Spaceなどが有人・無人のカプセル型再突入機を開発しているが、小型再突入機の高頻度運用やエンドユーザー特化型サービスは限定的である。国内でも観測・通信衛星の活用は広がる一方で、宇宙からの成果物回収やリターンサービスは限定的である。

ElevationSpaceは再突入カプセルの全システムを自社開発し、東北大学やJAXAとの共同研究によるハイブリッドスラスタの精密帰還制御、豊田自動織機と耐熱材料の共同開発、南相馬市との回収体制構築など、産学官連携のエコシステムを形成。技術面では燃焼試験や海上回収実験などを重ね、信頼性向上に注力している。

今回の資金調達ラウンドにはBeyond Next Ventures、Genesia Ventures、東北大学ベンチャーパートナーズ、FFGベンチャービジネスパートナーズ、みらい創造インベストメンツ、Z Venture Capital、ごうぎんキャピタル、新日本空調などが参加。融資面ではJA三井リースも加わり、資金基盤を強化した。

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