昆虫食で食料危機問題の解決を目指すスタートアップ5選

昆虫食で食料危機問題の解決を目指すスタートアップ5選

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KEPPLE編集部

世界的なタンパク質危機、救世主は昆虫食か

肉や魚等の需要が供給を上回りバランスが崩れる「タンパク質危機」は、2025年から2030年頃から始まると予想されており、今後世界人口の増加や新興国の経済成長によって問題はより現実味を帯びている。

対して、畜産や大豆などの植物性タンパク質の生産は環境負荷や持続可能性が懸念されているため、世界では代替タンパク質に焦点が当てられている。

新たなタンパク源として代替肉・培養肉・藻類などがあり、植物肉市場の市場規模は2022年には61億ドルと推計されている。しかし、2023年から現在にかけては減速が目立つ。

そんな中、プラントベース市場に新しい活路を見出そうとしているのが昆虫食だ。昆虫食は代替肉などと比較して、低コストで動物性タンパク質を効率よく摂取することに秀でている。市場規模は2019年時点で70億円と小さいが今後の拡大が予想されている。

今回はそんな昆虫食をいち早くビジネスとして取り組むスタートアップ企業について深堀りしていきたい。

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スタートアップ5選

グリラス株式会社

企業HP:https://gryllus.jp/

徳島大学発の「コオロギの自動飼育技術」と「ゲノム編集技術」を活かした消費者、食品事業者向けのベンチャー企業である。2019年に同大学バイオイノベーション研究所の講師を務める渡邉 崇人氏によって設立され、環境負荷の低い栄養源としてコオロギ関連食品とパウダー原料を各方面に提案している。

「グリラスパウダー」は同社の販売するコオロギ粉末であり、2020年に無印良品との共同開発「コオロギせんべい」によって一躍話題になった後、「C.TRIA」ブランドとしてスナックやコラボ商品を展開している。

2019年の設立以降、2020年12月に2.3億円の資金調達を実施、翌年2022年2月にはさらに2.9億円を調達し、合計5.2億円を調達した。2022年はコンビニやドラッグストアにてコーンスナックやプロテインバーの販売を行い、2023年にはコオロギの安定供給に向けてNTT東日本がスマート飼育の実現に向けて協力している。

Morus株式会社

企業HP:https://morus.jp/

カイコを利用したバイオ原料を産業別の用途に応じて供給している信州大学発のスタートアップだ。カイコ由来の抹茶プロテインを生産しており、シンガポールでの販路を拡大している。

MorSilk®︎ Powderは、従来利用されてきた乳成分由来のパウダーよりも環境負荷の低いプロテインを有しており、カイコ由来の機能性栄養素も付加価値として期待されている。

2022年に5000万円の資金調達以降、東京都やシンガポール等のアクセラレーションプログラムでの登壇を経て、2023年5月には2億円の資金調達を実施している。研究開発に関してはイリノイ大学と共同研究をメインで進めており、素材研究をより加速させる方針だ。

2024年の4月にはシンガポール支社の設立も発表し、アジア諸国での生産と販売を見据えている。

株式会社エコロギー

企業HP:https://ecologgie.com/

コオロギの輸入・加工・商品開発および養殖技術開発を行う原料メーカーである。CEOの葦苅 晟矢氏は東京農工大学の鈴木研究室とタッグを組み、研究成果を基に東南アジアで「コオロギ農家」の推進を行っている。

主力製品は、ハムスターや爬虫類の飼育飼料と栄養バーGrilloBarやコオロギ味噌/醤油などの飼料と食品がメインであり、原料のコオロギはカンボジア等の新興国で現地農家が指導の下で生産している。

2017年の設立以降、早稲田大学からのファンドから4100万円を調達し、飼料のドギーマンハヤシや発酵製品のマルマタしょう油などとの共同開発を行ってきた。2023年12月にはコオロギ粉末と乳酸菌を混合した際の免疫活性化に関する成果が特許出願され、今後の商品企画に期待される。

エリー株式会社

企業HP:https://www.ellieinc.co.jp/

カイコを利用したバイオ原料の研究開発をメインに、健康食品や高機能繊維の販売を行うスタートアップである。CEOの梶栗 隆弘氏は、大手食品メーカーに勤務後、京都大学や愛媛大学など複数大学の研究室とオープンイノベーションプログラムを経て、既存の食品事業を凌駕するイノベーションを目指している。

カイコを原料とした次世代食品「SILKFOOD」は、おいしさと栄養価の高さに着目した食品ブランドであり、ホワイトチョコレートやチップス、ドリンクなどの製品がある。

2017年の設立以降、2020年3月に4500万円の資金調達を実施。2022年1月には敷島製パン(Pasco)との提携関係を結び商品開発を行っている。研究開発に関しては2023年内に鹿児島大学・東京都立産業技術研究センター・学習院大学と共同研究を続々と開始しており、今後の研究成果が期待される。

株式会社BugMo

企業HP:https://bugmo.jp/

コオロギの養殖と生産管理システムの開発、品種改良、商品開発を食品事業者、消費者向けに行っているサービスだ。

過去にプロテインバーBugMo Cricket Barや食用こおろぎ粉の販売を行っていたが、現在はECサイトを閉鎖して新たに業務提携した旭合同(株)とともにコオロギ粉末を使った旨味調味料「こおろぎだし」の研究開発を行っている。

2018年に設立、4000万円の資金調達以降、2020年に旭合同(株)と資本業務提携を結ぶ。 2021年にはクラウドファンディングで3500万円の資金調達。2023年には年間1トン規模の自動化システムの開発を完了し、今後は2025年のIPOを目標にパートナーファームの展開と大量生産の準備を進めている。

加速する研究開発競争、多様な販売モデル

今回紹介したスタートアップ企業は、各大学や研究機関のカイコやコオロギ研究をベースに、事業化に向けた開発競争を繰り広げている。

取り上げたスタートアップは、それぞれ同じ昆虫を扱っている会社でも生産拠点は国内と海外で二分されている。販売拠点に関しても、国内メーカーに販売する会社から海外生産を現地消費するモデルまでさまざまだった。

タンパク質危機が数年後の世界に及ぼす影響にこれらの会社がどのようにアプローチするのか、新しいタンパク源の実現に向けた昆虫食スタートアップの取り組みに注目したい。

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The Good Food Institute「2022 Plant-Based State of the Industry Report

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  • #食品
  • #昆虫食
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