ショート映画配信サービス「SAMANSA」、総額7.4億円を調達 ──オリジナルIPと海外展開を強化

ショート映画配信サービス「SAMANSA」、総額7.4億円を調達 ──オリジナルIPと海外展開を強化

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ショート映画配信サービス「SAMANSA」を展開する株式会社SAMANSAは、2025年9月にDG Daiwa Venturesをリード投資家とする第三者割当増資、および北國銀行によるデットファイナンスを通じて、シリーズAラウンドで総額7.4億円の資金調達を実施した。これにより累計調達額は約11億円となった。新規投資家にはEX Innovation Fund、Cygames Capital、Apollo Capital、バンダイナムコエンターテインメント、Hakuhodo DY ONE、ごうぎんキャピタルなどが参加している。

SAMANSAは2021年に設立され、2022年より短編映画をサブスクリプション形式で配信する動画配信サービス「SAMANSA」を展開している。2025年9月時点で配信されている作品は600本を超え、サービスの提供範囲は北米、韓国、タイ、インドネシアなどへ拡大している。取り扱う作品は世界各国の映画祭上映作や新進気鋭のクリエイターによるものが多く、翻訳や編集も社内で一貫して実施している。月額料金は490円で、多様なジャンルを取りそろえている。

SAMANSAの特徴は、クリエイターとの直接交渉による一括版権契約と収益モデルにある。再生数連動型が主流の動画配信業界において、映像作家の収益安定を志向した取り組みとなっている。さらに、作品や脚本の募集プログラムやオリジナル映画制作プロジェクトも実施しており、自社企画の映画制作も進めている。配信事業に加え、映画祭やオフラインイベントとの連動も行うなど、多面的な展開を進めている。

代表取締役の岩永祐一氏は、リクルートでの勤務経験や映像制作会社での活動、米国での映画演出学習を経て2021年にSAMANSAを創業した。自身も映画監督として活動した経歴を持つ。日本とアメリカの映像流通の違いや、日本国内で映像クリエイターが直面する課題への認識が事業立ち上げの動機となった。共同代表の遠山孝行氏もコンテンツ業界での経験を持つ。

ショート映画市場は近年拡大傾向がみられる。背景にはスマートフォン普及による映像視聴の多様化や短尺コンテンツ需要の増加がある。YouTubeやTikTokといった無料プラットフォームは主にUGC(ユーザー生成コンテンツ)が中心だが、有料サブスクリプション型で映画水準のクオリティを担保するサービスは国内では少数にとどまる。

SAMANSAは多言語翻訳や字幕対応を進め、アジアを中心に国際的なショート映画流通の基盤構築を目指している。競合にはShortsTVやVimeo On Demandなどがあるが、アジア市場に焦点を当てたローカライズやオリジナルIP開発など独自の取り組みを進めている。

今回の資金調達によって、SAMANSAはプラットフォームの機能強化、英語圏を含む海外事業の本格展開、オリジナル映画および自社IP事業の拡大に投資を集中させる方針だ。また、SNS経由で収集したユーザーデータ解析を活用し、作品と観客を最適につなぐ仕組みを強化するとしている。

将来的にはサブスクリプション以外の多様な収益チャネル拡大も検討しており、作家性の強い小規模映画や新規才能の発掘を支えるパートナーシップ構築を進めている。今後はアジア・北米市場での会員基盤拡大や、オリジナルIPから生まれる長編作品およびメディア展開の実現が期待される。ショート映画が新たな市場を形づくる可能性に大きな注目が集まっている。

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