採用マーケティング支援サービス「talentbook」を運営する株式会社PR TableがシリーズDラウンドにて、第三者割当増資による3.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、三井住友海上キャピタル、博報堂DYベンチャーズ、りそなキャピタル、Beyondge、NEWONE、エッグフォワードなど。
今回の資金調達により、talentbookの機能拡充と組織体制の強化を目指す。
働く人のストーリーで求職者を惹きつける
talentbookは、企業の採用における課題を解決するPRプラットフォームだ。talentbookに「働く人」のストーリーを発信することで、求職者に対して企業の魅力を伝える。
現在、多くの企業が求職者へのアプローチに悩み、採用に関する課題を抱えている。求職者も自分に合った働き方を模索する中で、企業の情報発信がますます重要視されている。
企業は、PR Tableが提供するCMSでコンテンツを制作・公開する。累計7500記事以上の制作実績を蓄積し、記事の最適な構成案をシステムが提案することで、ノウハウが不足する担当者の記事制作を支援する。
制作したコンテンツはtalentbookやパートナーメディアに展開される。費用は月額10万円から。そのほかにも取材やコンテンツ制作の代行、コンテンツの広告運用や採用サイトの立ち上げなど、企業の採用広報を包括的に支援している点が特徴だ。
導入社数は約1200社。大手企業からスタートアップまで広く利用されている。
今回の資金調達に際して、共同代表取締役 大堀 航氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
働く場の魅力とカルチャーの積極的な発信の重要性
―― 採用市場の現状や、企業が抱える課題について教えて下さい。
大堀氏:現在では転職志向が高まり、早い段階から将来のキャリアについて考える人が増加しています。新社会人による4月の転職サイト登録数は10年で約30倍に増加し、約1000万人もの転職希望者が存在すると言われるほどです。
一方で、自分に適した仕事がわからず、転職活動をしていたとしても結局は転職をしない人も多くいます。こうした転職迷子は、自分が求める仕事や働き方が実現できるのか、不安に感じているんです。
企業は、これまで人材紹介会社に頼り切って採用をすることも少なくありませんでした。一方で、労働人口の減少と個人の価値観の多様化が進む中、適切な人材を見つけて採用することが難しくなっています。
ただ待っているだけでは人材は来てくれません。そのため求職者に対する長期のブランディングとして、働く場の魅力やカルチャーなどの発信が重要視されています。しかしながら、多くの企業では発信するリソースやノウハウが不足しています。
―― 求職者には、どのような情報が求められているのでしょうか?
求職者は、転職に失敗したくないという思いに加えて、キャリアの可能性を広げたいという思いを持っています。自分が求める仕事や働き方が実現できるのか、どんな人と働くのかということに不安を感じる中、働く人のリアルなロールモデルや働き方に関するストーリーが企業の魅力を伝える源泉になっています。
こうしたリアルな情報は、これまで主に人材紹介会社やキャリアアドバイザー、友人や知人に依存していました。今では、インターネットやSNSを通じて広く発信することができます。求人票だけでは伝えきれない、働く人の魅力を積極的に発信することが企業に求められています。
―― talentbookのアイデアを着想したきっかけについて教えてください。
学生時代にデザイン交流イベントを主催した経験が、私にとって広報の世界への最初の一歩となりました。広報活動に深く関わる中でPRという仕事に魅了され、新卒で総合PR会社のオズマピーアールに入社しました。
種苗企業のPRを担当していた際、全国紙で研究員の研究内容を取り上げてもらいたいという要望がありました。会社には多くの研究員が存在し、それぞれが想いを持って働いています。彼らがどんな人で、どんなことにやりがいを感じているのかという人に焦点を当てたPRを行ったところ、とても大きな反響があったんです。
その後、レアジョブで広報を担当する中、さまざまな職種の人が協力して1つのプロダクトを創り上げるために働く様子を見て、「広報コンテンツとしての人」に改めて可能性を感じました。
これまでは情報発信のきっかけとしては、新製品発表などのニュース性のある情報が主でした。一方で、人のコンテンツであれば社員の数だけストーリーがあり、採用だけでなく営業にも繋がります。こうした人のコンテンツを効果的に発信できる場所があれば面白いと感じたことが、サービス着想のきっかけです。
転職希望者の居場所となるプラットフォームへ
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
今回、シリーズDラウンドで3.5億円の調達となり、累計調達額は17億円に達しました。
調達資金をもとに、talentbookのプロダクト開発と採用の強化を行う予定です。具体的には、求職者が読んでいるコンテンツに応じて、次に読むコンテンツをレコメンドするなど、個人に適したコンテンツを引き出せるような機能拡充を行います。
また、現在では大企業を中心に採用マーケティング支援のニーズが拡大しています。HRやデジタルマーケティングへの知見があるメンバーを強みに、顧客支援の体制を整える予定です。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
引き続き企業が抱える採用課題を解決し、採用マーケティング支援において着実に提供価値を高めます。2030年前後には、何らかの採用プラットフォームを活用する約3万社の企業にtalentbookを使っていただくことが目標です。
今後も、社員に焦点を当てたコンテンツは広がり続けると考えています。人的資本経営やダイバーシティ、ウェルビーイングなどへの企業の取り組みを伝えるには、社員を通じて発信することが不可欠です。そんな中で、talentbookが水や電気のように、採用のインフラとなることを目指しています。
等身大の働き方やキャリア情報を提供し、1000万人の転職希望者の居場所となるプラットフォームを創っていきたいと思います。