「デジタル現金払い」でキャッシュレスを加速──Jammが約5億円を調達

「デジタル現金払い」でキャッシュレスを加速──Jammが約5億円を調達

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オンライン決済サービスを展開する株式会社Jammは、シードラウンドで第三者割当増資による約4.96億円の資金調達を実施した。このラウンドにはANRI、XTech Ventures、DG Daiwa Ventures、個人投資家の杉江陸氏(元Paidy CEO)が参加している。

Jammは2023年3月に創業された。日本市場では依然として現金決済やクレジットカードへの依存度が高い状況が続いているが、その中でオンライン決済の利便性とコストの両面から課題解決を目指してきた。銀行口座間の直接引落による「A2A(Account-to-Account)」決済のプラットフォームを構築し、サービス開始から1年余りで国内300以上の金融機関と連携を実現している。事業者と消費者の双方に向けて、導入の拡大を進めている。

「デジタル現金払い!Jamm」は、ECサイトやデジタルコンテンツ販売事業者が利用者の銀行口座から直接代金を受け取れるオンライン決済システムである。ユーザーは初回に登録を行えば、その後はすべての加盟店でワンクリックや生体認証による決済が可能となる。店舗側にとっては、決済手数料が2025年末まで1.8%、以降は2.5%と、一般的なクレジットカード決済手数料(3〜5%台)より低い設定であり、コスト負担を抑えられる点が特徴だ。加盟店向けにはダッシュボードや返金・キャンセル機能、各種SDKも提供されている。

さらに、サブスクリプション型取引やD2Cビジネス向けの継続課金機能も正式にリリースされている。本人確認2方式の提供や通知機能、専用モバイルアプリの開発も進められており、利用者の利便性向上を図る取り組みが続く。また、2025年12月以降に予定されている「アプリ外課金のオンライン対応解禁」にも、既にシステム面で対応を進めている。

Jammの代表取締役CEOは橋爪捷氏である。橋爪氏はニューヨーク生まれで、日本と米国の両市場に対する理解と経験を有する。マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタントを務めた後、不動産テック企業estieの事業開発を経てJammを創業した。米国での決済スピードや効率性を体験したこと、日本市場における手数料負担や現金偏重の課題認識が創業の契機となっている。Jammには、元GMOフィナンシャルゲート執行役員や大手メーカー・IT企業出身者など多様な人材が参画している。

キャッシュレス決済の国内比率は2022年時点で約36%にとどまり、韓国(約99%)、英国(約64%)など海外主要国と比較すると依然として低い。ECサイト運営者に対する調査でも、クレジットカード決済手数料の負担感や決済手段の多様化へのニーズが高まっている。特にZ世代(18〜24歳)では「クレジットカード以外の決済手段を求める」傾向が強く、Jammが実施した自社調査では10代の7割以上が「オンライン決済で困った経験がある」と回答している。

A2A決済は欧州や韓国、インドなどで普及している方式であり、Open Banking(金融機関API連携)を活用した新興決済サービスも拡大している。日本でも銀行APIのオープン化が進み、複数のフィンテックや銀行系事業者が類似領域に参入している。競合としては、GMOあおぞらネット銀行やPayPay銀行のAPI決済サービス、既存ペイメントゲートウェイ各社が挙げられる。Jammは金融機関連携数やAPIの拡張性を強みとする一方、加盟店の拡大や利用者の信頼獲得が今後の成長には不可欠となる。

今回調達した資金 は、アプリ外決済対応や複式簿記ベースの会計システム拡充、加盟店・ユーザー向け新機能の開発、事業基盤の強化に充てられる。インフラの拡張性やセキュリティ体制の強化、法規制への迅速な対応も重要な課題である。

すでに大手加盟店での導入も予定されている。今後は、「デジタル現金払い」が新たな決済手段として国内市場に定着するかどうかが、キャッシュレス化やデジタル金融インフラの進展において一つの指標となるだろう。

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