株式会社Z-Works

介護現場でのデジタル化を手がける株式会社Z-Worksは、第三者割当増資およびベンチャーデットによる総額7億円の資金調達を実施した。今回の引受先には慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、大和企業投資、あおぞら企業投資が参加している。
Z-Worksは、介護業界の人材不足や業務負担増加といった課題に対し、IoTとAI技術を活用した見守り支援システム「ライブコネクト」を開発・提供してきた。ライブコネクトは、利用者の居室に設置したセンサーとAIによる解析を組み合わせ、入所者の生活や健康状態をリアルタイムで「見える化」する仕組みを持つ。特徴は、工事が不要なLTE搭載型の設計や、複数センサーによる転倒や異常の早期検知である。設置の簡易さとコスト面での優位性を背景に、導入施設数は直近3年間で総床数ベースで約4倍に伸びたという。
代表取締役社長の高橋達也氏は、業界大手ICTベンダーでのシステム開発経験を持ち、2015年にZ-Worksを創業した。高橋氏は、介護現場観察や関係者との対話を通じて現場スタッフの負担軽減やケアの質向上の必要性を見出し、起業に至った。Z-Worksは創業時からハードウェアとソフトウェアを自社で一体的に開発する体制を敷いている。
介護業界では高齢化の進行により人材不足が深刻化しており、厚生労働省の推計では2025年に約32万人の介護職員が不足する見込みとされる。これに対応して、業務負担の軽減やサービス品質の維持・向上が業界全体の喫緊の課題となっている。こうした背景から、介護領域でのICT・AI・IoT技術の活用、いわゆる「介護DX(デジタルトランスフォーメーション)」が官民を挙げて推進されている。業界内では、見守りAIや記録自動化、遠隔リハビリテーション、介護ロボットといった多様なプロダクトが登場している。Z-Worksは初期投資を抑えたシンプルな設計を特徴とし、価格面での優位性を活かした市場拡大を目指している。
今回調達した資金は、営業・サポート体制の強化、既存サービスの機能拡張、研究開発への投資に用いられる予定である。加えて、在宅介護や海外市場への展開、ライブコネクトで取得したデータを活用した医療・学術機関との共同研究も進める計画である。将来的には、医療分野での新たなプロダクト展開も視野に入れている。
引受先となった慶應イノベーション・イニシアティブは、大学発技術系スタートアップへの投資・育成を行うベンチャーキャピタルで、医療・健康分野の社会課題解決型企業への投資実績を持つ。大和企業投資、あおぞら企業投資も、それぞれベンチャー投資や社会的インパクトを重視した投資活動を展開している。
介護関連市場では、公的補助金や科学的介護情報システム(LIFE)対応などの制度変化が進んでいる。自治体によるICT導入支援や、データに基づくサービス改善の普及も拡大傾向にある。こうした環境下で、IoT・AIを活用したベンチャーは医療・介護連携の強化など新たな事業機会を模索している。
Z-Worksは今後、調達資金を活用し、営業・サポート体制の拡充、在宅および海外事業の展開、AI・データ利活用の深化を進める考えである。介護現場の課題に対し、データとテクノロジーを組み合わせたサービスの社会実装が進む中、同社の動向が業界内外で注目されている。