TikTokを中心としたマーケティングサービスを運営するNEL株式会社が、シリーズAラウンドにて資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、W fund、SMBCベンチャーキャピタル、WONDERTAINER FUND、アドウェイズ・ベンチャーズの4社。
今回の資金調達により、プロダクトサイドへの投資と、さらなるクリエイター支援を目指す。
短尺動画を中心に企業のマーケティングを支援
NELは、TikTokを中心とした企業向けマーケティング支援と、クリエイター向けのバックオフィスプロダクトサービスを提供している。
TikTokマーケティングエージェンシー事業として、短尺縦型動画を中心とした企業のマーケティングを支援。また、TikTokなどのクリエイター向けに、バックオフィス支援やプラットフォームサービスを展開する。
TikTokを活用した企業のマーケティング支援は、2021年12月の事業開始以降、安定的にビジネスを伸ばしている。2023年2月現在で、累計実施プロモーション再生数は1億900万回に達しており、クリエイターネットワークは7,000名、クリエイター還元額は8,000万円を超えている。
今後は、クリエイター支援サービスをより広く展開していき、よりクリエイターや個人にフォーカスしたプロダクト開発を目指していくという。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 西田 陸氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
共感してくれる人に届ける
―― これまで、縦型・短尺動画を通じたマーケティングには、どのような課題感がありましたか。
西田氏:昨今のマーケティング業界では、スマートフォン向けの縦型短尺動画が発展しています。一方で、「作った動画をどう届けるのか」「どのような動画がユーザーに届きやすいのか」というSNSのアルゴリズムに対する課題感を抱える企業も少なくありません。
最近の消費行動の変化として、消費者が情報に対して、時間対効果を求めるようになっています。情報収集の手間を省くために、現状消費者に最も刺さっているのが、縦型で短尺の動画です。そこに、インフルエンサーやクリエイターのおすすめが加わることで、お墨付きの安心感が出て、その結果として失敗が少ない購買行動ができる、というのが大きなトレンドです。
これまでは、フォローしている人のコンテンツを見たり、自分の好きなものを検索したりという流れが主でした。しかし、現在のSNSでは、偶然自分の画面に流れてきたものを見るという受動視聴が伸びてきています。それにより、100万を超えるフォロワーを持つようなインフルエンサーだけでなく、マイクロインフルエンサーと呼ばれる一般人に近い人でも、コンテンツさえよければ再生回数が伸びるという現象が起こるようになりました。今後はSNS各社のアルゴリズムを理解し、フォロワー以外にも動画を届ける工夫が必要な一方で、その方法がわからない企業は多いです。
NELでは、それらを踏まえたマーケティングをクライアントに提案しています。特に推奨しているのは、「エンゲージメントエコシステム」です。エンゲージメントエコシステムとは、消費者が動画を見て好きなものに出会い、それを買って、配信して、その動画にまた色々な人がコメントやシェアをすることでコミュニケーションが生まれ、それらが循環することによって、リーチを実現する仕組みのことです。
コミュニケーションが生まれるコンテンツを作ることによって、より深いコミュニティでブランドを届けることができると考えています。
―― マーケティング支援のサービスを始めようと思ったきっかけを教えてください。
クリエイターに限らず、個人という広い枠組みで応援したいという思いがきっかけです。
以前、noteを使って個人が稼げるコンテンツプラットフォームを作る事業をしていましたが、トレンドと合っていなかったことから断念をしました。その後、色々な事業を模索していた時に、ほのぴすさんというクリエイターと出会いました。彼らには、クリエイターとしてこうなりたいという明確な夢がありましたが、夢を語れる人材や職種が少ないという悩みがあったのです。そこで我々が支援できないかと考え、2021年の夏頃にTikTokを活用したマーケティング事業をスタートしました。当時はTikTokは国内プラットフォームとしては大きくありませんでしたが、彼らが仕事としてお金が稼げる仕組みが作れるように広告代理店として参入して、サポートしたのです。
最近は、マーケティングの支援やクリエイターとの繋がりを持っている企業も多くなりました。NELが当初から一貫しているのは、クリエイター目線でクリエイター集積化の手伝いをしているというスタンスです。現在のTikTok市場では、初期からやっていてかなり認知度もある人であれば事業として運営できていますが、その一方で裾野が広がっていないという課題があります。そこで、マイクロクリエイターと呼ばれる方々の収益を手助けすることによって、それをマーケティングとしてクライアントに提供するのが当社の特徴であると考えています。
クリエイターのためのプロダクトカンパニーを目指す
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
現在開発中の、クリエイター向けのプロダクトに投資を行います。当社は元々、単なるTikTokの広告会社ではなく、クリエイターを支援する会社として大きくしていきたいという目標がありました。そのため、プロダクトへの投資をメインに考えており、開発エンジニアに対する人件費が必要です。具体的には開発エンジニアを3〜4名ほど採用する予定です。
また、TikTok広告の代理店事業も伸びているので、代理店サイドの事業責任者や営業部長の採用も強化したいと考えています。
―― 今後の展望を教えてください。
TikTokのトレンドは少なくとも今後1〜2年は続くと考えているため、マーケティングの支援を続けていきます。また、NELはクリエイターのプロダクトカンパニーとして成長していきたいという考えを持っています。そのため、長期的にはプロダクトを主軸とした事業展開を行います。クリエイターが職業として認められるよう、クリエイター向けのバックオフィス支援や、稼ぐためのプラットフォームに投資を拡大し、クリエイターの産業創造に貢献することを目指していきます。
NEL株式会社
NEL株式会社は、企業向けに「TikTok」クリエイターによるマーケティングサービスを運営する企業。 同社は、企業の課題や目的に合わせて「TikTok」クリエイターをキャスティングし、マーケティングを企画・制作進行。データの収集や効果測定、次回施策に関する提案も行う。またクリエイターに対しては、企業との窓口業務や進行管理などをサポートする。
代表者名 | 西田陸 |
設立日 | 2017年12月14日 |
住所 | 東京都渋谷区渋谷2丁目6番6号 |