クラウドPTA活動⽀援ソフト「polyfit(ポリフィット)」を運営するpolyfit株式会社がシードラウンドにて、J-KISS型新株予約権発行による4000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、ANRI、シーシーエス・プラス・ホールディングス。
今回の調達資金は人材採用に充て、プロダクト開発、自治体との実証実験を推進する。
PTA活動の業務効率化を支援
polyfitは、PTA向けの名簿管理ソフトウェアだ。PTAは大規模なボランティア組織であり、地域ならではの伝統や一年程度の短期間な任期などの要因から、その変革は難易度が高い傾向にある。実際にはアナログな手法での集計や名簿作成、保護者への連絡により、作業に時間を要することも多く、担当するメンバーの負荷となっている。
同サービスは、独自のテンプレート入力で簡単に検索性の高い名簿を作成でき、専用のフォームを個別に作成する必要がない。また、反映されたデータはメール送信にも利用することが可能。複雑な役員選考ルールを変更せずにデータを整備できるため、一気にデジタル化が推進でき、PTA活動全体の効率化と負担軽減を実現する。
一般会員は名簿を見ることができない仕様となっており、権限を持つ担当者のみが個人情報を管理できる。情報セキュリティ面での安全性も担保されている。
導入プランは人数に合わせて価格設計されており、小規模校向けには月額4980円からサービスを提供している。
また、同社は地域住民が安全に学校活動に参画できるソフトウェア「polyfit for CS」のβ版も提供している。学校活動には、通学路見守りや地域イベントの引率スタッフなど、学校が地域住民と連携して進めたいさまざまな業務がある。しかし、その依頼や管理は煩雑で、対応する教員や地域コーディネーターの負担となっていた。
同ツールを活用することで、地域住民は短期のスポット支援活動を継続的に行うことができたり、その活動履歴を活かし、次の活動への参加につなげていくことが可能となる。学校活動に参加することで地域住民は新しいつながりを持つことができ、教員は地域住民の協力を得ることで、「教える」という業務に専念できる環境づくりを目指す。
画像:polyfit for CS 紹介資料より掲載
polyfitは、2023年4月から本格的に導入が始まり、利用校が拡大している。polyfit for CSでは、広島県三原市や大阪府摂津市ほか数自治体と連携して、学校業務の地域移行の実証実験を開始を予定している。同社は今後もPTA、自治体へのさらなる導入拡大を目指すという。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 大薮 聡史氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
最先端のテクノロジーで学校と地域を結ぶ
―― polyfit創業のきっかけを教えてください。
大薮氏:大学卒業後、投資ファンドに新卒入社し、投資信託などの商品の開発や、株式のリサーチアナリストとしてIPO銘柄の分析などに携わりました。その後、ITスタートアップのPLAIDに転職し、IRや経営企画などを担当し、1年でIPOが実現しました。
そのような中で、自身の強みを活かし、新興領域で事業を立ち上げたいとも考えていたんです。いろいろと模索し、PLAIDで得たBtoBの知見を基に、BtoG(Business to Government)や地域コミュニティの分野で、より大きな変化をもたらせると確信しました。
そして、地域社会の中でもまだ誰も解決していない領域はどこかと考え、PTAに着目しました。PTAに携わる方々への50件以上の取材を通じて、解決すべき課題を見出し、副業でPTA向けのソフトウェア開発をはじめました。
開発の目処が立ち、社会課題解決のための大規模なビジネスを生み出したいという思いが強くなり、PLAIDを退職してpolyfitの起業に至りました。
―― polyfitで解決を目指す課題とは?
PTAは、1校あたり平均450世帯以上という大規模なボランティア組織です。現在のPTA活動での集計や名簿作成には、まだ紙ベースのアナログな手法を使用しているケースが一般的です。Googleフォームなどを利用すれば無料で作成できますが、フォーマットの統一が難しく、データの手動集計が必要です。個人情報の管理も含め、作業には多大な時間と手間がかかります。さらに、PTAは役員の任期が短く、改革が難しい状況もあり、DXの進展が遅れています。
polyfitでは、特定のフォーマットに情報を入力するだけで簡単に名簿ができるため、LINEやGoogleなどで独自にフォームを作成する手間が省けます。これにより、大幅な作業時間の削減が可能です。また、個人情報の法令改正に迅速に対応し、無料でアップデートも行っています。
―― どのような背景から、polyfit for CSの開発に至ったのでしょうか?
業務負荷など学校運営にもさまざまな課題があり、離職につながっています。そのため、文部科学省によって学校が地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことを目指す「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」という制度が制定され、教育委員会に導入が努力義務化されています。
画像:polyfit for CS 紹介資料より掲載
しかし、学校や教員にとって、地域住民の方々を管理する仕事は非常に手間が掛かるため、なかなか取り組みが進んでいませんでした。ところが、教員不足や働き方改革の浸透もあり、いよいよ地域住民の協力も得ながら学校運営をしていかなければならない状況です。
このような課題を解決するため、学校と地域住民を結ぶ地域コーディネーター向けのプロダクトである「polyfit for CS」を開発しました。ボランティアイベントの告知や参加者の募集、マッチングを簡単に行える点が特徴です。ツール内で面談情報や当日の連絡を行うこともでき、連絡先を交換する必要もありません。過去の活動状況をデータ化することで、地域住民とのスムーズな連携が可能です。また、同サービスは教員の採用も支援する機能を備えています。
地域で学校運営を支える未来へ
―― 調達資金の使途について教えてください。
100名規模へ組織拡大を目指し、開発エンジニアや公共領域のセールスの採用を強化します。また、CTOやCOOなどの経営幹部の採用も進めています。強力なチームでプロダクト開発と自治体との実証実験を積み重ね、私たちの提供するソリューションの有用性を広く示していくことを目指しています。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
自治体向けのビジネスを拡大し、特に学校業務の地域移行を推進していきます。実証実験の成果を基に事業展開を進め、さらなる成長を目指します。また、地域社会へ移行可能な業務の種類を増やしていき、利用者への提供価値を高めていきます。当社のサービスを通じて生活に変革をもたらし、社会にとって欠かせない存在となることが目標です。
そして、私たちがGovtech領域をリードし、スタートアップ業界をさらに盛り上げていくことに貢献していきたいと考えています。