映像データ解析で変わるフィットネスジム運営、日本の労働者不足を支える

映像データ解析で変わるフィットネスジム運営、日本の労働者不足を支える

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KEPPLE編集部

フィットネスジム向け防犯カメラ画像解析サービス「GYM DX」を運営・開発する株式会社Opt FitがシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、アコード・ベンチャーズ、愛知キャピタル、ゼロイチキャピタル、DEEPCORE、NOBUNAGAキャピタルビレッジ、OKBキャピタル及び名南M&A、STATION Aiファンドの7社。

今回の資金調達により、GYM DXのシェア拡大や他業種への展開を目指す。

ジム運営を効率化するカメラ画像の解析サービス

GYM DXは、フィットネスジム内の防犯カメラの映像を活用することで、ジム運営を効率化するサービスだ。

AIを用いて防犯カメラの画像を解析し、ジム会員のトレーニング中の転倒などの緊急時に異常を検知する。ジムの担当者や警備会社に通知を送信することで、施設内の有人による常時監視が不要になる。

異常検知イメージ
導入企業の管理画面では、すべてのカメラ映像を一元管理することが可能だ。安全管理を省人化し、顧客サポートへの注力を促進している。

また、マシンの利用状況や混雑状況を可視化することで、ジム会員の利便性向上に貢献するほか、複数人入館などのマナー違反を防止する。

ローンチから約2年経過する2023年10月時点で、大手フィットネス企業が運営する店舗を中心に1000以上の施設で導入されている。

同社は他にも、フィットネスジム会員との連絡やコミュニケーションを円滑化する「Linker Bell」などを提供する。

今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 渡邉 昂希氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

監視業務を効率化して会員への付加価値向上を促進

―― フィットネスジム運営に関する課題や現状について教えてください。

渡邉氏:近年、フィットネスジムの新規出店が増え、フィットネスへの関心も高まっています。一方で人手は不足しており、ジム内の監視や施設の利用状況把握など、事業者は運営に関する課題を多く抱えています。

また、無人のフィットネスジムでは、熱中症や貧血などで会員が倒れるなどの緊急時に発見が遅れる場合もあり、安全面での課題もあります。加えて、非会員が無許可で会員とトレーニングを行う、トレーニング目的ではなく休憩場所として施設を利用するなど、ジム内の秩序が乱れるようなケースも散見されます。人手不足の中でも施設を常に監視できるよう、GYM DXのようなソリューションが求められています。

マシンの活用状況や会員の入館状況を可視化することで、危険回避以外にも効果的な運営につながります。フィットネスジムの新規出店が増える中、若年層の獲得に苦労しているフィットネスジムは少なくありません。監視カメラの映像データを解析して混雑状況を可視化することで、会員の利便性向上や若年層の取り込みにも効果を発揮します。

マシン利用状況の計測

現場の課題から生まれたフィットネスジム特化ソリューション

―― GYM DXの特徴について教えてください。

ハードウェアに依存せずに映像データを解析する、ソフトウェアの開発技術が当社の大きな強みです。実際にフィットネスジムで利用されるカメラを買い替えることもなく、そのまま利用することもできます。独自のアルゴリズムをもとに映像データをリアルタイムで解析し、管理画面上での配信を実現しています。

フィットネスジムならではの課題にも対応しています。多くのフィットネスジムは多数のトレーニングマシンを備えていることで、カメラの死角が生じやすい施設であるため、汎用的な防犯カメラのソリューションでは十分な対応ができないこともあります。フィットネスジムに特化し、パッケージのサービスとして提供している点は非常にユニークなポイントです。

―― どのようなきっかけからOpt Fitを設立したのでしょうか?

幼いころより長く水泳を続けており、スポーツやフィットネス業界は常に身近な存在でした。また、父が自営業をしていたため、その背中を見て、自身も起業して何かを成し遂げることに関心がありました。

こうした背景から、まずは事業づくりについて学ぶため、ITベンチャーに入社したことが設立のきっかけの一つです。その後は水泳や水泳スクールの魅力を伝えるウェブメディアを立ち上げ、上場企業への売却を経験しました。

水泳スクールと会話をする過程で、プールとジムが併設されていることも多く、間接的にフィットネス事業者との会話の機会が増えていました。その中で、フィットネスジムのコスト削減や省人化など、運営に関する課題をたくさん聞いたんです。業界全体の課題解決に貢献したいという思いから、AIを活用したデータ解析について知人への相談も重ねながら、Opt Fitの設立に至りました。

フィットネスで得た知見を他業種へ

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

機能開発や他業種へのサービス展開、人材採用を目的に資金調達を行いました。例えば入館者の情報をカメラ映像から特定して追跡することで、会員ごとのトレーニング情報を自動蓄積するなど、ユーザーの利便性向上につながる開発を進めます。

また、これまでのノウハウを活かし、他業界への進出も計画しています。まずは製造業の金属加工や食品加工分野で検証する予定です。食品工場で商品を詰めるピッキング作業や、金属加工時の品質管理など、これまでに培った技術を応用します。すでに2つの工場での実証実験を進めています。

こうした取り組みを強化するために、CxO人材やコーポレートのほか、営業、マーケティングの採用を強化し、1年間で現在の2~3倍程度にまで組織拡大することを見込んでいます。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

短期では、地道にフィットネスジムへの導入を拡大し、シェアの拡大に注力します。現在は約1000店舗で導入されていますが、これから2年程度で、全国に1万店舗以上あるフィットネスジムの内、3000店舗以上への導入達成を目指しています。

日本でのフィットネス参加率は約3%と、欧米の約20%と比べてかなり低くなっています。フィットネス人口を増やして業界に貢献すべく、フィットネス業界における当社サービスの認知度を高め、まずはフィットネス参加率を10%以上に高めることを通過点として、IPOも目標の一つとして取り組んでいきます。

また、フィットネスに限らず、日本全体の労働課題の解決に貢献することが重要です。特にIoTや防犯カメラ、ネットワークサービスを提供している企業との連携を強化しながら、フィットネス以外の領域での活用の幅も広げていきたいと思います。

株式会社Opt Fit

株式会社Opt Fitは、AI(人工知能)を活用したフィットネス施設運営DX化サービス『GYMDX』を運営する企業。 『GYMDX』は、フィットネス施設内に専用カメラを設置することで、AIが危険検知や不正入館検知、マシンの利用率分析やリアルタイム混雑状況の配信を行うサービス。 同社はそのほか、スポーツジムやスクールの運営事業者向けに、会員への連絡業務を円滑化するサービス『Linkerbell』の運営などを行う。

代表者名渡邉昂希
設立日2020年3月16日
住所愛知県名古屋市中区富士見町13番19号富士見町八木ビル701
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