Notta株式会社

音声認識および自動AI議事録サービスを展開するNotta株式会社は、総額9.9億円の資金調達を実施した。
今回のラウンドにはMizuho Leaguer Investment、GSR Venturesをはじめとする新規投資家が参画し、既存株主も追加出資を行っている。
Nottaは2022年5月に設立され、音声認識や自然言語処理技術を活用したAI議事録作成サービスを提供している。インタビュー、会議、商談、セミナーなどさまざまなビジネスシーンで発生する音声データを高精度でテキスト化し、自動的に要点を抽出・要約する機能を備えている。従来の人手による議事録作成では多くの工数が必要だったが、AIを活用することで情報共有の効率化や業務負担の軽減を実現している。
主な機能として、多言語対応のリアルタイム文字起こし、AIによる要約、単語登録、話者分離、カレンダー連携、業務アプリやクラウドサービスとの連携が挙げられる。また、ISO27001やSOC2 Type2などの国際的なセキュリティ規格にも対応を進めており、信頼性の高いサービスを志向している。
エンタープライズから個人まで幅広いユーザー層に向けてプランを展開し、ユーザー数は1000万人を突破している。日本国内では法人利用が拡大しており、日経225企業のうち72%が導入しているという。
代表取締役のRyan Zhang氏は大学でコンピューター工学を学び、2006年に卒業。Web広告業界で経験を積んだ後、2015年頃にシェア自転車大手・Mobikeの共同創業者として起業の道へ進む。その後、AI分野での新たな挑戦として、音声認識SaaS「Notta」を立ち上げた。
レンタルオフィスからスタートしたNottaは、5年で国内外のSaaS市場において確固たる地位を築いた。Zhang氏はCEOとして、卓越したリーダーシップと業界理解をもとに、企業の戦略立案から技術革新、ビジネスモデルの洗練に至るまで、幅広く手腕を発揮している。
音声認識・自動議事録サービスの市場は、AIによる音声テキスト変換技術の進歩により拡大傾向にある。Fortune Business Insightsによると、世界のスピーチおよび音声認識の市場規模は、2024年に154億6000万米ドルと評価され、2032年までに8159億米ドルに達すると予測されている。
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)やハイブリッドワークの普及を背景に、会議の文字起こし・議事録作成の自動化ニーズが高まっている。国内ではAI GIJIROKU(オルツ)、スマート書記(ユーザーローカル)などが競合として存在するが、Nottaはグローバル対応、多言語処理、ハードウェア連携の領域で差別化を図っている。法人向け導入実績やセキュリティ対応も競争上の特徴となっている。
今回の資金調達では、以下の3つに充当する予定である。
1. ハードウェアとの連携強化 :AI議事録サービス「Notta」と連携する専用ハードウェアを開発・展開し、利用シーンを拡大。ハードとソフトの両面でユーザー体験を向上。
2. AI技術への重点投資:音声認識や自然言語処理などの高度化に注力。高精度な文字起こし、要約、多言語対応機能を強化し、グローバル展開を加速。
3. 法人向けサポート体制の強化:日本国内の企業ニーズに応え、営業・サポートチームを増強。導入から運用まで一貫した支援で顧客満足度を向上。
SaaS市場では、セキュリティや信頼性、多様な導入ニーズへの柔軟な対応が事業成長の鍵となっている。Nottaの今回の資金調達と体制強化は、AI議事録サービス分野における事業拡大とサービス向上に向けた具体的な一歩といえる。今後の展開としては、専用ハードウェアの開発状況、AI技術の進化、法人サポート体制の拡充など、具体的な事業施策の進捗が注目される。