法人調査プロセスを自動化する「SimpleCheck」提供のシンプルフォームが6.8億円の資金調達

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KEPPLE編集部


法人調査プロセスを自動化するシンプルフォームは、6月15日、シリーズAラウンド6.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
また、企業が行う法人調査プロセスを自動化するクラウド型ソフトウェア「SimpleCheck(シンプルチェック)」の正式リリースを発表した。
 
今回のシリーズAラウンドにおける引受先は、DNX Ventures(リード)。合わせて、過去2回の資金調達にてインキュベイトファンドおよびDBJキャピタルからの出資と、金融機関から累計0.7億円の借入を公表している。
 
今回の資金調達およびプロダクトリリースに関して、同社にて広報を担当する中野氏に、詳しく話を伺った。
 

――まずは、御社の事業についてお聞かせください。
 
中野氏:弊社は、金融機関を中心に、法人を調べたいニーズがあるお客様向けに、SaaSプロダクト「SimpleCheck」を展開しています。
 
法人と取引をはじめる際には、いずれの企業でもまず情報収集して、そもそも取引をしてよいのかを判断することになります。例えば Webで検索したり、行政情報を確認したり、外部サービスを利用したり。「SimpleCheck」はそのような法人調査プロセスを自動化するべく開発したプロダクトです。
 
―― 具体的には、「SimpleCheck」のサービスはどのような課題解決に繋がっているのでしょうか?
 
例えば昨日生まれたばかりの法人が銀行口座を開設しようと思っても、情報が不足しているために、審査で落ちてしまうことがあります。情報の不足により、実際に事業活動をしていることが確認できず、そもそもリスクがあるのかどうかも判別できないといった事態が生じています。金融機関からすれば、情報がありさえすれば取引を開始できたかもしれず、規制の要請による一定の審査水準を維持しつつも、そういった機会を逸失してしまうケースを減らしたいという課題が予てからあったものと理解しています。
 
情報が少ない小さな法人を調べる手立てとしては、お客様から申告を受けてそれを信じるか、担当者がWeb検索などで情報収集するか。それでも情報がなければ判断できずに断ってしまう。
 
現場の負担を増やして情報収集に一層の労力を投じるか、割り切って疑わしいものは断る判断をするしかありません。いずれにしても、スピード感や事業のスケールが阻害されてしまっている現状があり、我々はこういったお客様の課題に向き合っています。
 
そのような情報を私たちがどのようにご提供しているかというと、テクノロジーを最大限活用しつつ、時には多くのマンパワーが必要となる地道な収集活動から逃げないことで、法人データベースを日々増強していっています。
 
お客様から「特定の法人について調べたい」というリクエストをいただき、我々のデータベースと照合すると同時にWeb検索を実施し、当該法人に関する情報を30秒程度でリアルタイムにご提供しています。
 
―― 御社のビジネスの根幹とも言える独自のデータベースに登録されている企業数は、現在どのくらいの規模になっているのですか?
 
全国500万法人、全てお調べいただけます。2015年以降、国の制度として法人番号制度(いわゆる法人版マイナンバー)が始まりました。番号が指定されている法人は500万以上ありまして、それらについては全て検索可能になっています。
 
―― 今回の資金調達に合わせて「SimpleCheck」も正式リリースされましたが、現段階で導入企業数はどれくらいになっていますか?
 
すでに20社弱のお客様に導入いただいています。
 
―― 次に、サービスをはじめられたきっかけについて教えていただけますか?
 
代表の田代の前職での経験がきっかけになっています。
田代と私は、たまたま同じ政府系の金融機関の出身ですが、田代はここで、大企業とスタートアップのオープンイノベーションのハブになる新規事業に携わっていました。
 
大きな企業であり、新たな取引の開始には、上場会社レベルのセキュリティチェックやコンプラチェックを求められます。その中で、先述のような中小企業や新興法人の情報の乏しさという課題を抱えていました。例えば、オープンイノベーションのイベントで新興法人の流入が数十とあるとき、Webで検索をしても全く情報が出てこなかったり。
 
その法人自体は1つなのに、他の金融機関でも現場の若手が同じ課題にぶつかり、恐らく全く同じことを実施し、全く同じように労力を費やしている。各金融機関がこの問題を抱えているなら、その痛みを知る自身が共通の情報基盤を創ることで解決したい、というところが立ち上げの経緯です。代表の田代は「当時自分が本当に欲しかったプロダクトを作っている」と言っています。
 
―― 御社のサービスが、これまでの課題を解決するプロダクトだということがよくわかりました。それでは、今後のサービス展開をしていく中で、マーケットにおける今後のプラス要因があれば、教えてください。
 
マクロ的な観点でいくと、プラス要因は主に2つあると考えています。
1つ目は「非対面化・デジタル化」というところです。
 
情報が無かった中小企業・新興法人の領域は、これまでは実際に足を運んだり、逆に来店をしてもらっていたので、そこに存在し、実際に事業活動をしていることが分かりました。ただ現在ではこれらがオンラインで完結するようになってきています。
 
銀行口座開設もどんどんオンライン化が進み、これは法人の領域も同様です。多くの銀行がWebで法人口座を開設する動きはどんどん広まっています。
 
あとは、AIを活用したトランザクション・レンディングなども、口座の入出金の動きを分析することでどれだけ与信が可能かを判断しています。こういった動きは、今後Web3.0の世界でよりスピーディーに金融取引が完結する流れになったとしても変わらないものだと考えています。
 
しかし、ここで唯一乗り遅れてしまっているのが、定性情報の収集・分析・判断です。「取引相手が何をしているかわからない、この入出金の動きをどう判断すればいいのかわからない」という課題がマーケットにあるので、今後、非対面化・デジタル化が進んでいけばいくほど、我々のプロダクトのニーズが高まっていくと考えています。
 
もう一つは規制の話です。いわゆるAML/CFT(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)に関するところが分かりやすいかと思います。ご案内の通り、テロや犯罪組織にお金を流さないという社会的気運は、国際社会のみならず、日本でも年々高まっており、今後さらなる規制強化が予想されます。プレスリリースにも記載しましたが、実際に金融機関は、2021年8月のFATF第4次対日相互審査の結果を受け、金融庁から2024年3月を期限とした態勢整備を強く求められています。
 
このように、「非対面化・デジタル化」が進み、どんどん情報の収集が難しくなっている側面と、一方で規制強化に対応していかなければならないという状況が、我々のプロダクトの需要が今後ますます高まっていくプラス要因になると考えています。
 
―― 続いて、今回の調達資金の使途とそれを踏まえた今後の展開をお伺いしたいと思います。
 
基本的には組織拡大に充当していきます。プロダクト開発に向き合うエンジニア、お客様と向き合うビジネスサイドのメンバーを拡充していく予定です。
 
プロダクト面では、データソースもまだまだ拡充の余地があり、こういった日々増強されるデータに対して高度な分析を実施、我々しか知らない独自のリスク情報を検知していきます。データ分析や機械学習が益々重要な局面になってきており、ここを担える方々を中心にエンジニア採用を推進していきたいと考えています。
 
また、個人事業主を調べることのニーズもお客様から実際にいただいており、事業が生じるところすべてに貢献していくという我々のミッションにも照らし、法人という切り口に留まらないプロダクト開発に注力していく予定です。
 
―― 組織規模について、現状は何名いらっしゃって、どれぐらいまで増やしていきたいという採用計画はありますか?
 
現在の正社員の人数は15名程度ですが、エンジニアを中心に採用を拡大し、30名程度の組織にしていきたいと考えています。
 
―― 長期的な展望についても、教えてください。先ほどおっしゃっていた個人事業主の他に、広げていく構想はお持ちでしょうか?
 
まずは法人データベースを確固たるものにしていくことを考えているので、当面はその戦いが続きます。その上でさらに、個人事業主にも拡充していかんとしているところです。
 
個人事業主も、事業拡大によって、一定割合は法人になります。金融機関からすれば個人事業主であれ法人であれ、同じように情報を収集し、同じ基準で判断していきたいはずですので、そこに応えていきたい思いがあります。
 
また、先に述べた我々独自のリスク情報の蓄積や一見関係のなさそうな法人間に繋がりを見出していくことを通じて、法人単体に留まらない我々にしかできない分析を高度化していき、お客様により付加価値のある情報を提供していきたいと考えています。
 
―― 最後に、御社からお伝えしたい内容はございますか?
 
我々は、創業から1年半の間、プロダクトの開発と目の前のお客様に向き合うことのみを考え、特段広報活動をせずにクローズドに事業運営してきました。大変ありがたいことに多くのお客様から引き合いをいただいており、まだオープンにしていませんが、大手の金融機関や事業会社の方々とも深いお話をさせていただいている状況です。
では、なぜ今回リリースをしたかというと、まだ我々のことを知っていただけていない将来の仲間となる方々に出会うためです。公に出ていき、エンジニアさんを中心とした組織の拡充に投資していくことが、我々が資金調達をした意味でもあり、私が一番お伝えしたい点です。
一緒に事業を創り上げていってくれるメンバーを増やし、ひいてはプロダクトの一層の成長を実現していきたいと考えています。

シンプルフォームの採用情報はこちら

―― 本日はありがとうございました!今後の展開にも注目させていただきます!


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