真贋鑑定サービス「フェイクバスターズ」を運営するIVA株式会社が、J-KISS型新株予約権の発行による6.5億円、銀行融資による1.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、De Capital、メルカリ、その他複数の個人投資家。融資における借入先は、みずほ銀行とりそな銀行。
今回の資金調達により、3年以内に累計1000万件以上の鑑定実績を目指す。
累計150万件以上の鑑定実績を誇る真贋鑑定
フェイクバスターズは、AIと鑑定士による国内シェアNo.1の真贋鑑定サービスだ。模造品が多く存在するブランドの商品を対象として、撮影された画像をもとに真贋鑑定を行う。実物を店舗へ持ち込む必要もなく、手元のスマートフォンで撮影した画像をもとに鑑定を行うため、送料は不要だ。
画像による「クイック鑑定」のほか、郵送をして、鑑定チームにより専門の機器を用いて鑑定する「コンプリート鑑定」も提供している。
2019年7月にサービスを開始し、2023年8月時点で累計150万件以上の鑑定実績を誇る。同社は個人向けのサービス提供に限らず、フリマアプリを提供するマーケットプレイス事業者とのパートナーシップも拡大している。現在は20社以上、店舗にして700店舗以上の事業者と提携しており、今後は100社以上のパートナー獲得を目指している。
また今秋には、スニーカーの鑑定と組み合わせた、法人向けクリーニング事業の開始を予定しており、順調にビジネスを拡大している。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 相原 嘉夫氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
鑑定ノウハウが蓄積しにくい模造品対策
―― これまで、リセール市場にはどのような課題がありましたか?
相原氏:模造品の流通は、昔から存在する重要な問題です。時代により流通する模造品は異なりますが、近年では特にスニーカーが比較的高価格で、流動性が高くなっています。例えばスニーカーだと、限定販売のプレミアムな商品も増えており、一次流通での購入がかなり難しいです。一次流通で購入できなかった人が、フリマアプリやスニーカーに特化したマーケットプレイスで購入するなど、二次流通でモノを買うような消費行動はかなり定着してきています。
こうした背景から、スニーカーに目を付けて注力している模造品の業者は多く、世界中で膨大な量の模造品が流通しています。それらの流通を防げない背景としては、まずスニーカーの鑑定が難しいことにあります。一部の店舗で鑑定ができたとしても、それは各企業や店舗の努力にとどまってしまい、鑑定ノウハウが広く定着しないのです。また、模造品を見分けることができたとしても、今度はそうした判別ポイントを反映した模造品が流通するため、常に目を光らせることはかなり困難です。
―― フェイクバスターズを始めようと思ったきっかけを教えてください。
父が経営者であったこともあり、以前から起業自体は身近でした。学生時代にはスニーカーの輸出販売のビジネスを手掛けており、事業譲渡を経験しています。仕入のために多くのスニーカーを買い集める中で、模造品が混ざっているかどうかの確認には苦労しました。
鑑定士に鑑定を頼もうとしても、その鑑定士が正しく鑑定をできているかがわからない。複数の鑑定士に依頼をしても、時間や管理コストがかかります。そもそもどの鑑定士や鑑定サービスを選べばいいか、どのように鑑定の依頼をすればいいかわからないという声もあります。そうした状況の中で、これらの問題を丸ごと解決するような鑑定のサービスがあればニーズもあるだろうと考え、フェイクバスターズを始めました。事業としても、無駄な在庫リスクを抱えることもなく優れたビジネスモデルだと思いました。
2017年頃からスニーカーブームが始まり、中国やアメリカを中心に盛り上がり、年間5倍以上のペースで市場が成長した時期もあります。フェイクバスターズのビジネスは模倣困難性が高く、参入障壁が高いため、競合サービスを提供している企業もいません。スニーカーの市場も伸びていたため、こうした市場のダイナミズムに乗りながら事業展開を行うことができました。
―― フェイクバスターズリリース後のユーザーの反応について教えてください。
リユースの店舗だと、お客様がスニーカーを持ち込み店舗で査定します。この際に本物か模造品かどうかの判別に困る店舗も多いのですが、フェイクバスターズでは、法人限定で30分以内に鑑定結果をお戻しするサービスも提供しています。
例えば、アルバイトのスタッフでも、画像を撮影するだけで確実な鑑定結果が手に入るため、模造品を買い取ってしまうリスクをゼロにできる点はご評価いただいています。仮に鑑定結果に間違いがあった際には、生じた損失を当社が補填しています。各企業により使い方は異なるものの、保険的な側面と鑑定の素早さでお喜びいただいています。
従来のサービスと異なり、画像だけで鑑定ができる点は大きな特徴です。個人のお客様にも、送料がかからないことや海外の方にも気軽にお使いいただける点、また鑑定の依頼から鑑定結果が出るまでのリードタイムが短く済むことは、特に喜ばれるポイントです。
―― 鑑定結果の正確性をどのように担保しているのか教えてください。
「100%」の確率で正確な鑑定を行うことは不可能です。フェイクバスターズとしても不誠実にあたるので、そのようには謳っておりません。しかし、可能な限り100%に近づけるための取り組みには全力を上げています。
具体的には、すべての鑑定依頼について、まず初めに独自の鑑定特化AIによる鑑定を行います。その結果、全体の4割程度については、AIによる鑑定結果のみで正確な鑑定を行うことができています。AIだけでは判断しないように設定している残りの6割については、例えばスニーカーの場合は専門の鑑定チームに6名の鑑定士がおり、その6名全員で同じスニーカーを鑑定することで誤った鑑定がないようにしています。どうしてもヒューマンエラーは起きてしまうものですので、テクノロジーとオペレーションによって、ヒューマンエラーの影響がエンドユーザーに届かないようにしています。
こうした取り組みの結果、フェイクバスターズではこれまで累計150万件以上の鑑定を行いましたが、99.99%以上の鑑定が正確であるという実績を持っています。
M&Aも視野にさらなる鑑定体験を提供、中期ではIPOを目標に
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
日本国内でシェアNo.1を獲得し売上も成長する中で、グローバル市場でも同じようにサービス提供をしていきたいと考えています。鑑定人材の増員などの組織づくりや、さらにフェイクバスターズを認知してもらうための最適なマーケティングを通じて成長していくために、資金調達を行いました。
現在はファッション領域の鑑定に注力していますが、今後はM&Aなどを通じて、お酒や絵画など、分野を問わず鑑定をしていきたいと考えています。そのために、プロダクト開発はもちろんですが、私の右腕として動いてくれるようなCXO人材などを採用していきます。
現在は全体で60名強の組織規模となっていますが、大規模な増員をするというよりは、意思決定のスピードに影響が出ないよう、必要なポジションの採用を適宜進めます。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
これまで資金調達をせずに事業展開を行ってきましたが、今後はさらなる成長をしていく第二創業期であると捉えています。仕込んできた取り組みを、ここから一年でしっかりと世に出していきたいです。鑑定件数は中々コントロールが難しいですが、2、3年以内の近い将来には、累計1000万件の鑑定実績を目指しています。
また、現在提携している法人数は20社強、店舗数にして700店舗以上ですが、引き続き事業者との提携を進め、まずは100社を越えるパートナー企業の獲得に向け取り組みます。
新たな取り組みとして、郵送によるスニーカーの鑑定時に、併せてクリーニングも行うサービスを今秋の開始を予定しています。実際にフリマアプリ等で中古商品を買うユーザーも、なるべくきれいな状態の商品が届いてほしいと思っているはずです。今回台湾No.1のクリーニング事業者と提携し、そのクリーニング技術をエンドユーザーに提供することによるクロスセルも狙っていきます。
中長期では、事業開発やM&Aを通じて、ファッション分野に限らず幅広い領域の企業と手を組みながら、2029年頃のIPOを目指しています。
同時に、世界中の税関と取引をすることを目標としています。世の中に流通する模造品が偽物と発覚するのは、税関であることが多いです。税関と協力することで、年間55兆円分流通しているといわれる模造品に立ち向かっていきたいと考えています。
IVA株式会社
IVA株式会社は、国内最大級の真贋鑑定サービス『フェイクバスターズ』を運営する企業。 『フェイクバスターズ』は、偽造品が多く存在しているNIKEやSupremeなどを含めた数多くのブランドを対象とした国内最大の真贋鑑定サービス。鑑定チームや専門機器、AI鑑定技術を用いて鑑定する。
代表者名 | 相原嘉夫 |
設立日 | 2019年4月3日 |
住所 | 東京都渋谷区東2丁目22番5号 |