トレーディングカード鑑定サービス「VALUE SCOUTER SERVICE」(以下、VSS鑑定)を運営する株式会社コレクテストが、第三者割当増資による約1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、XTech Ventures、有安 伸宏氏、中村 洋基氏など。
今回の資金調達により、サービスの認知拡大や機能開発を進める。
資産価値を可視化するトレーディングカード鑑定サービス
VSS鑑定は、AIを活用したトレーディングカードの真贋鑑定サービスだ。現在はポケモンカードゲームや遊戯王オフィシャルカードゲームなど、人気のトレーディングカード4種類の鑑定に対応している。
近年、トレーディングカードはカード価格の高騰から、コレクションや売買を目的とした大人による購入が増えた。一方で、偽物の流通という課題もある。
VSS鑑定ではAIを活用した画像判定に加え、専門スタッフ3名による目視の鑑定をすることで高精度な真贋鑑定を提供する。
また、インターネット上のカードの取引価格をシステムで収集している。鑑定証に記載のQRコードを読み込むことで、カードのリアルタイムの資産価値を表示できる点が特徴だ。
鑑定したカードはアクリルホルダーに密封して返送される(写真:コレクテスト提供)
VSS鑑定のサービス開始は2023年6月。売買やコレクションを目的とした個人からの利用が多いという。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO岩田 翼氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
偽物を購入してしまった悔しさから起業
―― トレーディングカードの売買に関する課題について教えてください。
岩田氏:これまで子ども向けに販売されていたトレーディングカードは、今では単なる子どものおもちゃではありません。大人たちがコレクションとして集めたり高額で売買する、いわば「現代の美術品」のようになっています。
高額なカードが増えると、流通する偽物も増えます。偽物が存在する以上、誰かからカードを購入する際には「万が一偽物だったらどうしよう」と、疑心暗鬼になってしまうことも多いんです。
出品されているカードが鑑定済みであれば、安心して購入できます。未鑑定のカードがオークションなどに出品されている場合は、それが偽物である可能性から、たとえ本物であったとしても本来の半額程度で落札されてしまうことも珍しくありません。
もしも売買目的でカードを集めている人が偽物と気づかずに購入してしまうと、それが本物であると思いこんだまま、気づかないうちに今度はそれを他の人に売ってしまうようなことも起きうるわけです。
だからこそトレーディングカードユーザーは安全でスピーディーに鑑定でき、カードのリアルタイムの資産価値を明確にできるサービスを求めています。実はこれまで、日本でメジャーな鑑定サービスはありませんでした。海外の有名な鑑定サービスを使うこともできますが、鑑定結果の明確な根拠はわかりませんでした。
鑑定証のQRコードを読み込むことでカードの資産価値がわかる(画像:コレクテスト提供)
――創業のきっかけは?
私自身、スマホアプリ上で偽物のトレーディングカードを購入してしまった経験が創業の大きなきっかけです。
アプリ上の画像だけでは、それが偽物か本物なのかはわかりませんが、商品が届いて、箱を開けた瞬間に偽物であることがわかりました。出品者に返金を求めたところ、「あなたが偽物にすり替えていちゃもんをつけているのではないか」と言われ、返金を拒否されるという辛い経験をしたんです。
私は幼少期からずっとトレーディングカードが大好きで、さまざまなカードを集めてきました。「神社仏閣カード」という完全オリジナルのトレーディングカードを作ったこともあります。
それにもかかわらず、返金もされずに偽物だけが手元に残る結果となってしまった。好きなものを汚されたことが許せず、何より他の人に同じような悔しい思いをしてほしくないと心から思ったんです。この経験を機に、鑑定サービスの立ち上げを決意しました。
ユーザーニーズに応えるサービスに
――調達資金の使途について教えてください。
VSS鑑定は2023年6月にサービス開始したばかりです。ユーザーからは好意的な声を多数いただく一方で、VSS鑑定を知っている方はまだ決して多くはありません。ユーザーからの声をサービス開発に活かし、鑑定実績を積み重ねることでAIの鑑定精度や利便性を高めて幅広い人々に私たちのサービスを知ってもらいたいと思います。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
現在展開しているトレーディングカードの鑑定は、一つのきっかけに過ぎません。AIを活用した真贋鑑定の技術やリアルタイムな資産価値の可視化は、トレーティングカード以外の分野にも転用できるはずです。
また、トレーディングカードという軸でも、コレクションや売買、対戦など多岐にわたる楽しみ方があります。買い取りやコミュニティの形成など、トレーディングカードユーザーのニーズに応えるサービスの開発も進めていく予定です。
私自身がトレーディングカードで偽物の被害に遭ったこともあり、お客様に信頼されるサービスを提供することに真剣に向き合っています。私たちの思いやサービスに共感していただける方々と共に取り組んでいきたいと思います。