在庫分析クラウド「FULL KAITEN」を提供するフルカイテン株式会社が、第三者割当増資と新株予約権付社債による8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、ジャフコ、三菱UFJキャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、Spiral Innovation Partners LLP、SMBCベンチャーキャピタル、山口キャピタル、宮銀ベンチャーキャピタル、あおぞら企業投資の8社。
今回の資金調達により、新商品の需要予測の精度を高める研究に取り組み、2025年のIPOを目指す。
在庫効率の向上で利益体質な経営を実現
FULL KAITENは、小売事業者の在庫効率を向上させるクラウドサービスだ。
ECサイトや店舗、倉庫などの在庫をAIを用いた予測や分析を行い、在庫配分を自動計算することで、業務負荷低減や利益の最大化を支援する。
2017年のリリース以降、大手の小売事業者を中心に導入が進んでいる。2021年6月より2年間でMRRは約3.3倍、ARPAは約1.7倍成長しており、そのビジネス規模を拡大している。在庫効率の向上により廃棄を減らすことで、CO2排出を抑え、SDGsにも貢献する。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 瀬川 直寛氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
常に頭を悩ませる在庫問題
―― これまで、企業の在庫管理や分析にはどのような課題がありましたか?
瀬川氏:企業が抱える在庫や売れ残りが増えると、その分大幅な値引きや廃棄が必要になります。そのため、小売業界で在庫リスクに頭を悩ませない経営者はいないでしょう。
在庫に関する課題はいくつかありますが、在庫量の予測が難しいことが挙げられます。どの程度の生産が必要か予測できず、過剰に生産した結果、大きな値引きや廃棄が発生してしまいます。
また、適切な在庫配置も重要です。売れない商品の存在に気づかず在庫リスクが悪化すると、大幅な値引き販売による損失につながります。店舗ごとの在庫リスクを早期に予見し、店舗間で在庫を移動して調整することが重要です。加えて、売れ筋商品の欠品により販売機会を失うなど、追加発注の予測も人力では限界があります。
大手企業であっても、各店舗ごとの在庫管理はエクセルを利用しており、フォーマットもバラバラであることは珍しくありません。そのため本部の担当者は、各店舗情報を集計することにかなりの時間がかかり、商品の分析を行う時間を創出することも難しい状況です。
システムを活用した在庫情報の可視化はできますが、そもそもどういった指標を見ながら改善していくべきかわからないことも多いです。FULL KAITENは、こうした経営変革のための指標自体を可視化するため、誰でも改善に活かすことができます。
―― 創業のきっかけを教えてください。
元々、人々を笑顔にできるようなことをしたいと思っており、営業職として働く中できっかけがあり、当初は結婚祝い用の食器のEC事業で起業しました。
その後、子どもが生まれたことをきっかけにベビー服の販売にも参入し、これまでに三度の倒産危機を経験しました。何とか危機を乗り越える中で、データを活用した在庫リスクの予測など、FULL KAITENの原型となるロジックを開発しました。
現在のFULL KAITENデモ画面
当初はこのロジックを自分たちだけで利用することを考えていましたが、妻からの後押しもあり、在庫の問題を抱える企業を支援し、より多くの人々を笑顔にしたいと考え、FULL KAITENの事業化を決意しました。
当初は中小企業向けに設計していましたが、大企業からの反応もよかったため、大企業の大容量データの処理に対応できるよう開発を急いで進め、改良を続けてきました。
在庫効率を高めることで大量廃棄を解決する
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
2021年4月に高速情報処理基盤を持つFULL KAITEN・バージョン3をローンチし、機能の追加などを進めたことで、エンタープライズ企業にも満足いただけることが増えてきました。
今回の資金調達は、まだ販売実績のない新商品の需要予測のサービスを、2023年10月より提供するための体制構築を目的としています。過去に販売した商品と、今後販売したい商品の類似性をマッチングさせたり、過去のさまざまな情報から需要を予測したりする研究は以前から進めており、既存顧客との検証では3億円以上の余剰在庫抑制を実現しました。
事業拡大のために積極採用中で、現在40名強の組織を最大70名まで拡大する予定です。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
短期では、小売業者に需要予測サービスを展開していくことに注力します。正確な需要予測により、「今ある在庫を効率的に利益に変える」だけではなく、「在庫の生産計画を作る」部分まで対応することで、在庫にまつわる課題をカバーしていきます。
その後は利益や販売数を最大化するために、最適な価格設定を予測するサービスの開発を進めます。また、今後はメーカーや商社、卸売業者にも展開していきながら、サプライチェーン全体の在庫の運用効率を高めることが目標です。
こうした在庫の運用効率を日本だけでなく、世界にも広げて行きたいと考えています。そのため2025年ごろにIPOを行い、得た資金をもとに海外展開すべく、市場調査を行う予定です。
当社は、世界の大量廃棄問題を解決するという壮大なミッションを掲げています。長期的なミッションに共感していただける企業と協力しながら、実現に向けて取り組んでいきたいと思います。
フルカイテン株式会社
フルカイテン株式会社は、小売企業の在庫問題を解決するクラウドサービス「FULL KAITEN」を開発・販売している企業。 「FULL KAITEN」は、“在庫を増やせば売上は増えるが、不良在庫も増える”、“仕入れを減らせば不良在庫は減るが、売上も減る” という在庫問題を、在庫問題解決テクノロジーと AI による需要予測で解決するサービス。「FULL KAITEN」のメイン機能は“仕入れ最適化”、“売上増加”、“在庫削減”。仕入れを起点にこれら3機能が連携し、売上増加と在庫適正化の両立を実現する。
代表者名 | 瀬川直寛 |
設立日 | 2012年5月7日 |
住所 | 大阪府大阪市福島区福島1丁目4番4号 |