株式会社ATOMica

コワーキングスペースや大学、企業オフィスなど多様な場にコミュニティマネージャーを配置し、共創の仕組みづくりを行う事業を軸に「社会関係資本経営」の実現を推進する株式会社ATOMicaは、シリーズBラウンドで総額5.7億円の資金調達を実施した。累計調達額は19億円となる。あわせて、今回の調達により、地銀系VCからの出資受入数が累計19社と、スタートアップとしては国内最多(同社調べ)となったと発表した。
ATOMicaは2019年4月に設立。コワーキングスペースや大学、オフィスなどにコミュニティマネージャーを配置し、施設やコミュニティの企画・運営を行う「リアルプラットフォーム事業」と、そこで育まれた人的ネットワークを活用して企業・地域・個人をつなぐ「リレーション・リデザイン事業」の2事業を展開している。

「人口減少と労働力不足により、(採用など)人への投資は拡大しているが、人と人の横のつながりを作り共創を生む “共創のOS”の整備は不十分だ。生成AIの発展により情報はすぐに得られる世の中になったが、相談できる人の存在や人間関係の価値はより一層高まっている。人的資本ならぬ、人と人の繋がり “社会関係資本” が今後経営にとっても重要になっていく」と、代表取締役Co-CEOの嶋田 瑞生氏は語る。
この「社会関係資本」の創出を目指すのが、同社のリアルプラットフォーム事業だ。コワーキング施設オーナーや自治体、大学、銀行などに対し、コミュニティマネージャーの配置を軸に、施設やコミュニティの企画・運営サービスを提供する。施設に常駐して運営を担うコミュニティマネージャーは、顧客管理や予約管理などの実務を担うほか、利用者の大小様々なニーズを聞き出し、人と人を繋げる役目を果たす。
コミュニティマネージャーと利用者の会話ログは、自社開発のコワーキングスペース一括管理システム「knotPLACE」に登録され、他拠点のコミュニティマネージャーと共有される。拠点を超えて、人や機会を繋げるための仕組みだ。
現在、全国28都道府県、62施設に、259名のコミュニティマネージャーが常駐。2019年のサービス開始以来、2025年12月時点で約7600件のニーズを聞き出し、そこから生み出した機会は3400件以上に達しているという。
コミュニティマネージャーの働きかけを起点に、地方自治体や企業、一般消費者に対しサービスを提供するのがリレーション・リデザイン事業だ。求人企業と学生に対し、両者の強みやニーズを把握しているコミュニティマネージャーがインターンを企画する「Coyage」事業や、企業を誘致したい地方自治体と企業をマッチングさせる「Go Local」事業、農産・ものづくり生産者と消費者を繋ぐリテール事業「knot MARCHE」などを展開する。
働き方の多様化やリモートワークの定着を背景に、単なるオフィス環境の整備にとどまらず、人と人のつながりを生む「場」の設計に企業や自治体の関心が集まっている。ATOMicaはこの領域で、コワーキングスペースや大学、企業オフィスなど多様な場にコミュニティマネージャーを配置し、社会関係資本を創出するモデルを構築してきた。そこで生まれる人と人のつながりを、人材・キャリア、地域連携、リテールといった事業へと展開している点で特徴的だ。

今回のラウンドでは新規株主11社を迎え、地銀系VC19社、事業会社・CVC21社を含む総勢50社超の株主構成となった。嶋田氏によると、これまで一貫して株主との連携を重視しており、実際に6-7割の株主と協業実績があり、月次売上の約3分の1が株主との協業から生まれているという。
調達資金は、リアルプラットフォーム事業とリレーション・リデザイン事業それぞれの強化に充当される見通し。「私たちはリアルなプラットフォームを展開しながら、同時に収益を出し続けられる点を強みとしている。足元の“硬さ”と、その上に積み重ねるリレーション・リデザイン事業の “飛距離”。この二段構えのモデルが、収益拡大とスケールを両立できる構造だと考えている。自社での事業拡大に加え、M&Aも活用していく」と、M&Aによるリレーション・リデザイン事業拡大に意欲を見せる。
「コミュニティや社会関係資本という概念は、儲かりにくそうに見える領域だと思う。だからこそ、私たちがスケールしていくことが、同領域への最大の貢献。 “頼り頼られる関係性って良くないですか”、そういったメッセージをもっと多くの人に届けていきたい」と、嶋田氏は語る。
社会関係資本という概念を事業の中核に置くATOMicaが、地銀系VCなどとの広域ネットワークを糧にどのようにスケールしていくか、今後の動向が注目される。










