株式会社FiT

2024年のスタートアップによる資金調達総額は8097億円(※プレスリリース情報に基づく速報値)で前年比15.5%増となった。対前年で落ち込んだ2023年から回復し、2022年比でも増加するなど、堅調な一年だったといえる。
(株)ケップルは、スタートアップの動向を把握するうえで、資金調達と同様に重要な指標として「従業員数」に注目。2023年12月~2024年12月の国内スタートアップの従業員数を集計し、スタートアップ動向レポート「従業員数から読み解く国内スタートアップの現在地2024」としてまとめた。今回は、レポートの中からスポーツセクターの従業員数推移や市場動向に関する解説を紹介する。
本記事で触れるセクター別レポートの全文は、ケップルが提供するスタートアップデータベース「KEPPLE DB」のスタータープラン(初期費用・月額無料)に登録することで閲覧できる。
スタートアップ数は増加傾向、技術革新が成長を後押し
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注:上場したスタートアップや閉鎖企業などを含む
健康志向の高まりやテクノロジーの進展を背景に、スポーツ市場は世界規模で成長を続けている。2013年以降設立されるスタートアップ数は増加傾向にある。この分野では、AIやデータ分析などの技術を活用し、スポーツ選手のサポートや、スポーツ観戦環境の整備に取り組むスタートアップが数多く誕生している。
2015年にスポーツ振興に取り組むスポーツ庁が新たに設置されたことも、スポーツ業界への追い風となった。スマートフォンの普及により、スポーツ情報発信サイトや練習スケジュール管理アプリなどのサービスも登場している。
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注:2024年1月時点=100として指数化(セクター全企業の従業員数が対象)
また、プロスポーツの人気が上昇しており、格闘技イベント「K-1」の企画・運営などを行う2013年設立の株式会社M-1スポーツメディアが評価額100億円以上となっている。
新たなニーズとデジタル技術が業界の可能性を広げる
国内では、コロナ禍で一気に落ち込んだフィットネス需要も回復してきており、コロナ前の9割前後の水準となっている。特に女性向けスタジオや24時間営業型ジムの成長が顕著。女性専用のホットヨガスタジオ「loIve」を運営する株式会社 LIFE CREATEは、従業員数を大きく伸ばしている。海外では、自宅でのトレーニングを支援する企業が登場。アメリカのスタートアップTonal Co.は、自宅でのパーソナルトレーニングを可能にする壁掛け型のスマートフィットネス機器の開発をしている。
スポーツIT支援の企業も増加中だ。スポーツ選手のコンディションやトレーニングに必要な情報を一括管理できるプラットフォーム「ONE TAP SPORTS」を運営する株式会社ユーフォリアが事業規模を拡大している。海外ではDapper Labs Co.などによるNFT活用が進む。この会社は、NBAの名シーンをNFT化し流通させるNBA Top Shotを運営しており、2021年にはa16z (Andreessen Horowitz)やGV(旧:Google Ventures)などから2.5億ドルの資金調達を行った。
国内外ともに、サッカークラブの運営を行う企業も多い。サッカーチームはファンの獲得やチーム強化のために多額のチーム人件費がかかり、収益化が難しいという現状がある。こうした問題に対し、海外ではAI技術を用いてチーム強化や経費の削減に取り組む企業が生まれている。
イタリアのSoccermentは、AIを活用したデータ分析ツールとトラッキングソリューションを提供しており、選手やクラブ向けにパフォーマンス指標やスカウティングツールを開発している。こうしたテクノロジーの活用はアマチュアクラブでも試みられており、アメリカのTOCA Footballはスポーツテックを利用したサッカースクールを運営している。同社は2024年に約1億ドルの資金調達を行っており、グローバル成長の加速を目指している。
スポーツ市場が拡大、AI・データ活用型スタートアップが台頭
世界のスポーツ市場は2024年に約5070億ドルに達し、CAGR5.6%で成長。2028年には約6300億ドルまで拡大することが予測されている。
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※プレスリリース情報に基づく
特にIoTやAIなどのテクノロジーを活用したスポーツテックとよばれる分野の成長が顕著である。2023年の世界全体での投資額は370億ドル以上と、2022年の210億ドルから大幅に増加した。市場規模は2023年に約147億ドルと見込まれ、2024年から2030年にかけてCAGR20.8%で成長し、2030年には約551億ドルに達すると予測されている。
スポーツテックの分野では、AIやデータ分析などの技術を活用し、スポーツ選手のサポートやスポーツ観戦環境の整備に取り組むスタートアップが数多く誕生している。政府が2022年に発表した第3期スポーツ基本計画のなかで、スポーツ界におけるDXの推進が明言されているが、実際には未達である。ライブストリーミングやVARなど、スタートアップが参入する余地はまだまだあるといえる。
各セクターの詳細レポートが見られるのは「KEPPLE DB」だけ
本セクターの、2024年従業員数ランキング(2023年12月から2024年12月までの期間を集計)と主要なカテゴリーに属する国内外のスタートアップの動向、掲載企業の一覧は KEPPLE DB でご覧いただけます。
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Writer

高 実那美
株式会社ケップル / Data Analysis Group / Database Division / アナリスト
新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。