「第三の工法」建設用3DプリンタのPolyuse、全国展開強化と建築領域参入へ

「第三の工法」建設用3DプリンタのPolyuse、全国展開強化と建築領域参入へ

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ノズルから材料を絞り出し、一層ずつ積み重ねていく。建設用3Dプリンタは、コンクリート構造物をいわば「印刷するように建てる」技術だ。いま、その技術が実証段階から普及段階へと移りつつある。

国内で累計300件超の施工実績を持つのが、株式会社Polyuse(ポリウス)だ。2022年1月に国土交通省管轄工事での活用を実現して以降、公共事業を中心に実績を積み重ねてきた。代表取締役の大岡航氏は、この実績の積み重ねによって、建設用3Dプリンタに対する建設業界の受け止めが変わってきたと語る。

2026年8月には、みずほ銀行と商工組合中央金庫から、デットファイナンスにより11億円を調達したと発表。調達資金は、主力製品である建設用3Dプリンタ「Polyuse One」の開発・普及をはじめ、事業全体の強化に充てるとしている。

Polyuseは2019年6月設立。代表取締役は岩本卓也氏と大岡航氏が務める。建設用3Dプリンタに関連する機械、ソフトウェア、材料を内製化し、機器の開発から施工サービスの提供、導入支援までを一貫して手掛ける。主力製品「Polyuse One」は、設計データをもとに専用モルタル※1を積層し、コンクリート構造物や型枠を自動で造形する装置だ。

Polyuseが開発する建設用3Dプリンタ「Polyuse One」(画像:同社提供)
Polyuseが開発する建設用3Dプリンタ「Polyuse One」(画像:同社提供)

300件の実績 ──「第三の工法」として広がる建設用3Dプリンタ

コンクリート構造物の製造はこれまで、現場で打設する「現場打ち」と、工場で製造した部材を運び込む「プレキャスト(PC)工法」が中心だった。大岡氏は、そこに建設用3Dプリンタが加わり、コンクリート構造物をつくる「第三の工法」として認識される場面が増えていると語る。

「300件ほど積み上がってくると、一過性のトレンドではなく、普及する技術として捉えていただける方が多くなってきた」(大岡氏)

Polyuse Oneは、従来工法で必要だった型枠の製作・組立・脱型工程を削減できる点を特徴とする。建築・土木分野の3次元設計(BIM/CIM)※2との連携も進んでいるという。

大岡氏は「(建設用3DプリンタとBIM/CIMの)相性が良いことが分かっている段階から、『設計段階で具体的にどう使うか』という議論に入ってきている」と話す。実際に、Polyuse Oneを活用した工事が「インフラDX大賞」の国土交通大臣賞を受賞した例もある。導入企業ではBIM/CIMと3Dプリンタを併用する動きも広がっており、3Dモデルを活用した施工計画の検討や完成イメージの可視化などが進められている。

なぜコストをかけてハードウェア・ソフトウェア・材料を内製化したのか

ハードウェア・ソフトウェア・材料の内製化について、大岡氏は、当初からの方針ではなかったと振り返る。当初は要素技術を自社で開発しつつ、必要に応じて海外メーカーからの外部調達も組み合わせる考えだった。

しかし事業を進めるなかで、日本の建設業に固有の規格や、海外メーカーの製品では対応しきれないルールに直面する場面が増えていった。

背景には、日本特有の環境がある。「日本の環境はやはり世界に比べると厳しい。島国で、地震があり、最近は豪雨も増えた。外部環境に晒されるインフラをどう丈夫にするか、100年かけて取り組んできたのが日本の建設業だ」と大岡氏は語る。

公共工事で用いるコンクリートの材料基準や建機の分類など、こうした環境に対応するためのルールは多岐にわたり、災害経験を踏まえて随時更新されていく。

大岡氏は「全て内製化しなければ、ルールが改定されたときに、材料や部品の仕様変更を常に外部に依存してしまう」と話す。開発を自社でハンドリングできるよう、内製化を決断した。

「印刷」したコンクリート構造物(画像:同社提供)
「印刷」したコンクリート構造物(画像:同社提供)

人手・資材が不足する災害復旧の現場でこそ活用──省人化・工期短縮で貢献

大岡氏によると、Polyuseの技術は、災害復旧の現場でこそ真価を発揮するという。

実際に、能登半島地震後の復旧作業でPolyuse Oneが活用されているほか、2026年7月に発生した令和8年熊本地震後の復旧にも活用できると大岡氏はみている。

災害時は、建設事業者自身が被災するケースも多く、人手が一層不足しやすい。加えて、資材や重機の調達も難しくなる。大岡氏は「3Dプリンタ1台と、操作できるオペレーターがいれば、従来のように多くの専門工や資材、重機、日数を用意しなくても施工できる」と、省人化と工期短縮の面での有用性を挙げる。

大和ハウスグループとの連携を機に、土木から建築領域へ

2025年12月のシリーズBラウンドには、大和ハウスグループの大和ハウスベンチャーズが参画した。Polyuseは大和ハウスグループとの連携を機に、これまで土木を中心としてきた事業領域を建築へと広げる方針だ。

「大和ハウス工業は『建築を工業化する』という創業以来の考え方のもと、工場で製造した部材を現場で組み立てる合理的な建築手法を早くから採用してきた。その方向性がPolyuseと一致した」と大岡氏は語る。

全国への設置網の構築と、施工を担う人材・事業者の育成

「Polyuse One」の設置台数については、現在の約50台から、今後3年以内に約250台へ増やすとしている。

あわせて、3Dプリンタを扱える担い手の育成も進める。導入企業には、専属の担当者を配置。3Dプリンタの運用や営業活動、地域での認知拡大などの活動を行っていく方針だ。

「(地域の人材不足等によって)施工が止まったり、遅れたりする状況をなくしたい。北海道から沖縄まで、コンクリート構造物をつくる領域においては、施工能力を均一化していきたい」(大岡氏)

大岡氏は、南海トラフ地震や首都直下地震など大規模災害への備えとしても、地域の施工能力を維持・向上させることの重要性を強調する。

防災や国土強靱化の観点では、国だけでなく、地方自治体や地方整備局、地域の建設会社との連携も欠かせない。行政や自治体への働きかけを続け、各地で3Dプリンタが施工の選択肢として認知される状態をつくっていく方針だ。

同社は今回の調達を通じて、現場で蓄積される施工データをAIが継続的に学習することで、「Polyuse One」を経験を重ねるほど進化する「フィジカルAI」へと発展させる構想を掲げる。施工中の状態をリアルタイムで計測し、そのデータを印刷条件の最適化にフィードバックすることで、将来的には完全自動運転の実現も目指す。

建設用3Dプリンタを一部の現場で使われる特殊な技術から、全国で選択できる施工手段へと変えていけるか。Polyuseは、その普及に向けた次の段階に入っている。

※1 モルタル:セメントと砂(細骨材)に水を混ぜて練り合わせた建築材料
※2 BIM(Building Information Modeling):建築分野で、3次元モデルに部材やコストなどの情報を紐づける手法。CIM(Construction Information Modeling/Management): 土木・インフラ分野で、周囲の地形情報なども含めて3次元で管理する手法。

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