AIが5秒で医師標準のカルテを作成—PleapのAI医療クラーク「medimo」とは

AIが5秒で医師標準のカルテを作成—PleapのAI医療クラーク「medimo」とは

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AIを活用したカルテ作成サービス「medimo」を開発するPleapが1.5億円(第三者割当増資:1億円、デットファイナンス:5000万円)の資金調達実施を明らかにした。

本ラウンドに参加したのはANRIとBoost Capital、梅田裕真氏(株式会社メディカルノート 共同創業者)、鈴木達哉氏(株式会社ギフティ 代表取締役)。

医師が診察時に患者との会話をmedimoで録音すると、SOAP(一般に医療の場で用いられるカルテの記録方式)に沿ったカルテが自動で作成される。医師の書類作成工数削減に貢献するプロダクトだ。

medimoイメージ画像

medimoは2023年6月にβ版をリリースして以降、すでに240以上の医療機関が導入する。昨年11月には、千葉県の私立総合病院である亀田総合病院における試験導入開始も発表した。この1月には、薬局向けのプロダクトもリリースしている。

Pleap社の共同代表で、medimoの事業責任者を務める馬氏に事業の背景や今後の展望について話を伺った。

AIが5秒で医師標準のカルテを作成

―― 御社の事業について教えてください。

馬氏: Pleapは、医療現場の書類作成業務を効率化する「AI医療クラーク(医療事務)」を開発・提供している企業です。国による働き方改革の主導があってもなお、医療の現場はかなりひっ迫しており、時間外労働も多くなってしまっています。

その中でも当社が注目しているのが、時間外労働の原因の多くを占める書類作成業務です。診療の合間や終了後に行われるカルテ作成、紹介状の作成、手術前の同意取得書類の記入などは診療に不可欠な業務である一方で、医師の時間を大幅に消費しています。

この課題を解決するために開発しているmedimoは、診察時の会話をリアルタイムで録音し、AIが数秒でカルテを自動作成する仕組みを導入しました。結果として、医師が患者と向き合う時間を増やし、業務負担を大幅に軽減できます。

―― medimoの特徴や利用の流れについて教えてください。

利用の流れは非常にシンプルです。医師が診察を開始する際に、アプリ上の「新規録音開始」ボタンを押すと診察中の会話が録音され、リアルタイムで文字起こしされるようになります。診察が終わると、AIが5秒ほどで自動的にカルテを生成します。カルテには、患者の訴え、診断、処置内容などがSOAPに沿った形で記載されます。医師は内容を確認し、必要に応じて修正を加えることができるのです。

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カルテ作成以外にも、紹介状の作成や手術前の同意取得書類の作成にも対応しており、医療文書全般の業務をサポートしています。特に、音声認識の精度にはこだわっており、専門用語も正確に変換されるように独自の音声データを学習させています。

また、医療機関では外部ネットワークに接続できないパソコンを利用しているケースが少なくありません。そうした場合でも、ネットワークにつながるスマートフォンで録音・作成したカルテを院内で利用しているパソコンに転送し、電子カルテシステムへの貼り付けを容易にする仕組みを開発しました。これは医療機関向けITベンダーがこれまで乗り越えられなかった壁で、オンプレミス型のシステムが多く残るクリニックでは重宝される機能です。

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2度のピボットで立ち返った「医学生だからこそ解決すべき課題」

―― カルテの作成はどれほど医師の負担になっているのでしょうか。

もちろん先生によって変わってきます。診察時にパソコンでカルテを作成できる先生もいれば、患者さんを診ることに専念するため、その場のカルテは最低限という先生もいます。

例えば、私が訪問したクリニックでは、診療が終わって帰宅してから数時間かけてカルテを書き続けるのが日常になっていました。患者への処置が多いクリニックだと、待っている患者の処置に時間を取られて、診察時のカルテ作成が最低限になってしまうこともあるんです。

一方で、カルテは病院運営をする上でかならず書かなければならない書類です。避けては通れない重要な業務になっていますが、その業務負担を減らさなければ患者の医療に対する満足度も上がっていかないのです。

―― 事業の立ち上げに至った経緯は。

Pleapは、私を含めた現役医学生兼プログラマー3名で共同創業した会社です。もともとは、医療課題の解決策を提案するような学生サークルで出会いました。そこで意気投合して、休みの日を使いながらプロダクトを作ってはリリースするようになったんです。それぞれが起業を志していたこともあり、Pleapを創業しました。

創業当初からmedimoの事業を展開していたわけではありません。当初は「脳波をNFT化する」プロジェクトや美容医療領域の事業を検討しましたが、事業としての成長を考慮してピボットしました。「自分たちが真に解決すべき課題は何か?」と自問し、多くのヒアリングを通じて、医療現場における書類作成業務の効率化に取り組むことしました。

2023年6月にmedimoのβ版をリリースし、メディアで取り上げられたこともあってわずか1週間で200件以上の問い合わせがありました。本格的な営業を開始したのは2024年4月からですが、それから9ヶ月で240以上の医療機関に導入いただいています。

AIによる業務削減で「医療に向き合える」世界を

―― この1月には新プロダクト「medimo AI薬歴」のリリースも発表しました。

「medimo AI薬歴」は薬剤師向けのプロダクトです。これまでmedimoを医療機関向けに提供する中で気づいたのが、「これは薬歴にも使えるのではないか」ということ。薬剤師も、患者さんと話した内容を、カルテのように薬歴としてまとめる必要があるのですが、これもかなりの負担になっているんです。そこで、既存事業の面を広げるような形でリリースしました。

―― 読者に今後の意気込みをお願いします。

我々が目指しているのは、「現場で医師と協働するAIの医療従事者」を作ることです。国家財政を圧迫するほどの医療費の半分近くを人件費が占めているわけですが、それでも医療現場には人が足りない。生産年齢人口が減って人材も不足する危機的な状況の中で、AIの推論能力向上や進化は日本の医療にとって大きなチャンスです。だからこそ、まずは属人性の低い定型業務をすべてAIに丸投げし、「どこの病院にかかっても最高の医療を受けられる未来」を実現していきたいと思います。

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