企業の興味関心データをもとにした営業活動を支援する株式会社Sales Markerが、シリーズAラウンドの資金調達を実施したことを明らかにした。本調達により、累計の資金調達額は8.4億円に達した。
今回のラウンドでの引受先は、One Capital、サイバーエージェント・キャピタル、ANOBAKA 、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、Relicを含む7社。
今回の資金調達により、組織体制の拡大やプロダクトの機能拡充、そして研究開発によるAIの精度向上を目指す。
商談獲得成功率を高めるインテントセールスを実現
同社が提供する「Sales Marker」は、企業の興味関心データ(インテントデータ)を分析し、ニーズが顕在化された企業に最適なタイミングでアプローチすることができるセールスインテリジェンスだ。Web検索行動から分かる企業のニーズをもとに「顧客起点」で行う営業手法「インテントセールス」の実現を支援する。
成約確度の高い潜在顧客を可視化するセールスインテリジェンスツールだ。企業の興味関心データ(インテントデータ)を分析し、ニーズが顕在化された企業に最適なタイミングでアプローチする営業手法「インテントセールス」の実現を支援する。
Sales Markerは約500万件の企業データや、SNSや人事異動などの公開情報を基にした372万人の人物データ、30万社の部署データをデータベース化した。また、メディアや広告配信プラットフォームとの提携により、企業のWeb検索行動に基づくニーズを「セールスシグナル®️」として分析可能にしている。
企業データベースとWeb行動履歴に基づく興味関心データを組み合わせ、ニーズのある潜在顧客をタイムリーに特定する。潜在顧客のニーズが高まるタイミングでアプローチすることで、商談獲得成功率の向上に貢献できるのが従来のサービスとの大きな違いだ。
アプローチすべき部署や担当者情報まで確認できる。キーマンへの直接のアプローチのほか、具体的な部署名や担当者名を活用してアプローチすることで、キーマンへの接触率が高まる。
顧客のターゲティングのほか、最適なアプローチの方法をAIが自動で提案する。顧客ごとに適切なチャネルや訴求効果の高い文面を提案するなど、効果的なアプローチを支援する「AIセールス」も実装している。
Sales Markerは2022年3月にローンチ。2023年12月時点で導入は300社を超えた。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 小笠原 羽恭氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
サービスを必要とする顧客に効果的な営業を
―― インテントセールスについて教えてください。
小笠原氏:インテントセールスは、企業の検索行動に基づき、顧客起点でニーズに合わせた営業活動を行う概念です。すでにニーズが顕在化している潜在顧客にアプローチすることで、商談や成約を効率よく獲得することができます。
Sales Markerは、こうしたインテントセールスを実現するプロダクトです。実際に導入企業によっては、商談の獲得効率が9倍に向上したり、商談のリードタイムが非常に短くなったりするなどの効果が出ています。
インテントセールスは、2018年頃から海外で注目され始めました。セールステック先進国の米国では、約6割のBtoB企業がインテントセールスに関連するサービスを利用しているとのデータもあります。
日本でも、営業の効率化に注力するイノベーター・アーリーアダプター層を中心に、徐々に認知や取り組みが広がってきています。
―― なぜインテントセールスが注目されるのでしょうか?
従来の新規開拓営業は、業界や売上、地域などの属性データに基づいてリストを作成し、手あたり次第にアプローチする方法がほとんどでした。一方で、実際にテレアポをしてみると、わずか0.5%から1%ほどしか商談には至りません。
見込み顧客に頻繁に断られ続ける営業担当には、精神的な負担がかかります。営業の約8割が退職を考えているという調査結果もあるほどです。営業される側としても、不要な商品やサービスを営業されても迷惑なだけです。クレームに発展してしまうこともあります。
企業の人手不足も背景に、わずかな商談を獲得するために時間を費やすのではなく、もっと有意義な営業活動に注力したいと思う企業は増えています。ニーズが顕在化した状態の企業を狙い撃ちする、顧客ニーズを起点とした確度の高い営業手法が必要とされています。
―― 創業のきっかけを教えてください。
新卒で入社した野村総合研究所では、主に新規事業の立ち上げに携わっていました。その中で、自らのサービスを通じて世の中をより便利で効率的なものにしていきたいという思いが強まりました。そこでコンサルティングファームへ転職し、エンタープライズ向けに新規事業や営業戦略の立案に携わりました。
営業戦略を立てる際には、何万件もの顧客データをもとに各企業の情報をウェブ検索や電話でリサーチし、ニーズや新規サービスの必要性があるかなどを検討するんです。リサーチに時間をかけている間に顧客ニーズは変わりますし、あまりに非効率だと感じていました。こうした経験から、リアルタイムにターゲティングできる仕組みが必要だと思ったことが事業を着想したきっかけの一つです。
COOの荻原は、キーエンスで全国一位になった経験もあるほど営業力があります。一緒にビジネスコンテストにも参加するなど、共同で事業をやりたいと以前から話していました。CTOの陳、取締役の渡邉とは、学生時代からの知り合いです。3人でデリバリーアプリを開発してハッカソンに挑戦し、アジア大会で優勝したことがあります。彼ら3人となら何でも成し遂げられると思い、共同で株式会社Sales Marker(旧CrossBorder株式会社)を創業しました。
今後は事業開発領域に進出
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
Sales Markerは、業種を問わずに多くの企業に導入いただいております。そのため、各企業のニーズや課題に対応できるような機能拡充が必要です。
現在は、AIを活用した仕組みの開発を進めています。AIに今日やるべきことを問いかけると、どの企業のどの担当者に、どのような訴求軸で営業すべきか自動でレコメンドしてくれるようなイメージです。
これらの開発強化やリソースの確保、営業担当者の採用に資金を充当します。ありがたいことにお問い合わせも多く、営業担当者のリソースがひっ迫している状態です。2024年には、毎月5名程度のペースで採用を進めて組織体制を強化します。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
これまでは、インテントセールスの実現を一つのテーマに取り組んできました。2024年には、プロダクトに蓄積されたデータを活用して予測可能なセールスの仕組みを提供することが目標です。どの企業がどのようなサービスを導入する可能性が高いかわかれば、売上目標の達成や売上増加に貢献できると思います。加えて、2028年にSales MarkerのARR100億円を達成することを目標に取り組んでいきます。
戦略を立てるためのセグメンテーションやターゲティングは、常に営業やマーケティングの起点になります。これらの課題を解決しつつ、将来的には事業開発領域にも展開していきます。例えば起業しようと思った際に、データを活用した人材採用やプロダクト開発、市場リサーチができれば、効率よく戦略を考えることができるはずです。
当社は、「既存の枠組みを超えた挑戦ができる世界を創る」ことをパーパスに掲げています。これを自ら体現しつつ、世の中でも実現していきたいと考えています。これまでのやり方に疑問を感じ、新しいやり方に挑戦していきたいと一度は考えたことのある方と一緒に事業を発展させていきたいと考えているため、ぜひ一度話を聞いてみたいと思っていただけた方は採用ページよりエントリーいただけますと幸いです!