アフリカ農業の革新から実現する、脱炭素化と経済の共栄

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KEPPLE編集部


アフリカで農業関連事業を手掛けるDegas株式会社が、第三者割当増資と融資による9.7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、Animal Spirits、GCP-J、博報堂DYベンチャーズ、南都キャピタルパートナーズ、池森ベンチャーサポート合同会社、プライマルキャピタル、エンジェル投資家数名。

今回の資金調達により、既存の農家ファイナンス事業を拡大させるとともに、農家プラットフォームを活用した脱炭素事業のスケール化、およびマーケットプレイス形成事業に注力する。

小規模農家の所得向上を目指すファイナンス事業

同社は、アフリカの小規模農家の所得向上を目指し、テクノロジーを駆使した小規模農家マネジメントとファイナンス事業を展開する。

ガーナを中心に、自社開発アプリを活用し、小規模農家へ種子や肥料など農業資材の貸付や営農支援、収穫物の回収・貯蔵・管理・販売を一貫して行う「農家ファイナンス事業」を運営している。

2023年度は27,000軒に直接貸付を行っており、農家ネットワークとデータドリブンなオペレーションを構築している。実際に、サービスを利用する農家のうち9割の収入が上がっているという。

また、同社は昨年よりネスレと提携し、リジェネラティブ農業(環境再生型農業)の手法確立を目指して検証実験を実施している。リジェネラティブ農業とは、土壌の有機物を増加させることで、生産性を落とさず炭素を隔離する農法手法だ。投下肥料量を減らすことで生産コストを下げるだけではなく、質の高いカーボンクレジットとして小規模農家に新たな追加収入源も生み出す。

現在、1000エーカー(約400ヘクタール)の点在した農地にて、リジェネラティブ農業を展開している。研究機関による土壌調査、地球観測衛星データを手掛ける米国・Planet Labs社との提携による高解像衛星画像の分析を含めた包括的なリジェネラティブ農業の効果の定量化、検証を行う。

また、リジェネラティブ農業の普及において重要となる手法の伝授のため、ビル&メリンダ・ゲイツ財団と大規模言語モデル(LLM)を活用した農法指導用チャットボットの開発を進めている。

さらに同社は、2023年6月に、高品質なカーボンクレジットの創出を通じた、気候変動と社会問題の解決を目指す日本企業中心のアライアンス「JAHQCC(Japan Alliance for High Quality Carbon Credit)」を発足した。

今回の資金調達に際して、代表取締役 牧浦 土雅氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

データとテクノロジーの活用による新たなビジネスモデル

―― アフリカの小規模農家が抱える課題とは?

牧浦氏:アフリカの12億人の人口のうち、大半は農業従事者です。その多くが1~2エーカー(約0.4~0.8ヘクタール)しか耕すことができておらず、貧困層となっています。私たちが対象としている農家のうち72%が3ドル以下で、35%が1.9ドル以下で一日を暮らしています。貧困から肥料を購入できないため、生産性が低く、収入が上がらないという悪循環に陥っています。アフリカで1ヘクタールあたりに採れる農作物の量は世界平均の1/4~1/3です。

―― 御社のビジネスモデルについて教えてください。

小規模農家に対する貸付として、私たちが肥料や種子などの農業資材を農家に提供し、営農指導もし、出来た農作物によって返済してもらうというビジネスモデルです。

私たちと農家の間にキャッシュのトランザクションはありません。トウモロコシの袋が倉庫に納入されるので、そのトウモロコシをネスレをはじめとした大手企業のバイヤーに販売し収益を得ています。農家からの返済率は95%と非常に高いです。

昨年は12万袋のトウモロコシを販売しましたが、全ての袋(50kg単位)にQRタグがついているので、トウモロコシがどういうプロファイルを持った農家が生産したものかがわかるトレーサビリティも100%実現しています。


―― どのようにこのビジネスモデルを構築されたのでしょうか?

本来、農業資材を貸し出して、農作物で返済というのはなかなか難しい仕組みだと思いますが、裏側に大量のデータとテクノロジーを介在させることで実現しました。

250~350農家あたりに1人、フィールドエージェントと呼ばれる現地のフルタイムメンバーがおり、その担当者が各農家を回って自社開発したアプリに登録していきます。本人確認や正しく農業が行われているかを定量的に把握しデータとして可視化することで、再現性の高いオペレーションが構築できました。

また、テクノロジーを駆使している理由として、農家の与信形成があります。私たちの提供価値として、金融機関からお金を借りることができない貧困層の小規模農家に対して、農業への取り組みをスコアリングすることで、独自の与信データを形成しています。


―― 事業を始めようと思ったきっかけを教えてください。

私は13歳で渡英、進学して以来、長らく海外で生活してきました。英国の大学入学前にルワンダに行き、教育関連のNPO活動や農家支援を行ったのですが、ルワンダは都市部がどれだけ発展していても、一歩外に出てみると農村が広がっており、劣悪な環境下でした。

そこから5年程経って2018年夏にまたルワンダを訪れると、都市部はさらに目覚ましい発展を遂げていました。世界的な高級ホテルが建ち、新しいイベントセンターもできていたのです。しかし、郊外を訪れると5年前と全く同じ農村があって、みんな学校教育もまともに受けられていない状況でした。

過去40年間で貧困層が唯一増えた大陸というのがアフリカですし、もちろんこの5年の間に、財団やフィランソロピー、国際機関まで多くの支援活動がありましたが、根本的には何も変わっていなかったのです。

それであれば、違った方法で解決しなければならない。そして、大半が農家なので、農家の改革なしにアフリカの改革はないと考えました。2050年以降、唯一アフリカだけが人口増加し、世界の4人に1人がアフリカ人となることが予測されています。世界の発展のためにこの課題をしなければならないと思い、事業を始めました。

世界の発展のカギとなるアフリカ

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

調達資金により、二つの取り組みに注力していきます。一つはリジェネラティブ農業による脱炭素事業のスケール化です。カーボンクレジットやデータ分析の専門家の採用により、検証実験の組織体制を強化し、さらなるリジェネラティブ農業の加速と、大規模な質の高いカーボンクレジットの発行を目指します。

もう一つは、マーケットプレイス形成事業です。当社では、構築した農家ネットワークに第三者機関からの融資機会や追加収入の機会を提供する事業に着手しています。今期は、欧州系マイクロファイナンス機関と提携し、私たちが形成した与信をもとに農家への融資の誘致を行いました。また、不二製油グループと提携し、シアナッツのサステナブルな調達に貢献することで農家が追加収入を得る仕組みを構築しました。

今回の調達により、第三者からの機会提供やその結果などを可視化したプロダクト開発を拡大するとともにパートナー拡大を行います。学業ローン、農業機械のリース、スマートフォン契約などさまざまな商品を扱うマーケットプレイスの形成を目指します。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

定量的な目標としては、2030年までに3000万人の小規模農家の所得を3倍にすることを掲げています。そのために、農家ファイナンス事業で小規模農家の所得向上に貢献を続けるとともに、テクノロジーを駆使してリジェネラティブ農業を広めていきます。

農家にとって、新しい農法にチャレンジするのはリスクがあり本来は難しいことです。農家ファイナンス事業で培ったネットワークや関係性があるからこそ、新しい農法を導入してくれますし、実現できる新規事業だと考えています。

やはり、世界の発展のカギはアフリカにあると思います。日本にいるとアフリカは遠く感じるかもしれませんが、今動かなければ世界の潮流に乗り遅れてしまいます。もっと多くのプレイヤーに、このアフリカマーケットに入ってきていただけたら嬉しいです。

Degas株式会社

Degas株式会社は、サブサハラアフリカの小規模農家6億人の所得向上に特化した農業関連事業を運営する企業。ガーナを中心に、小規模農家への種子・肥料の提供、営農指導、収穫物の回収・買取、バイヤーへの販売までを一貫して行うネットワークサービス『Degas Farmer Network』を提供している。既存事業アセットを活用し、生産性向上と二酸化炭素の回収を行いながら、カーボンクレジットを創出するリジェネラティブ農業(環境再生型農業)も展開する。また、高品質なカーボンクレジットの創出を通じた、気候変動と社会問題の解決を目指す日本企業中心のアライアンス『JAHQCC(Japan Alliance for High Quality Carbon Credit)』を発足。ゲイツ財団のCatalyzing Equitable AI Use事業に採択され、リジェネラティブ農業の普及のための、LLM(大規模言語モデル)ベースのシステムを共同開発にも取り組む。

代表者名牧浦土雅
設立日2018年11月2日
住所東京都渋谷区広尾4丁目1番18号
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