調達・購買部門向けのクラウドサービスを運営する株式会社Leaner TechnologiesがシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による資金調達を実施したことを明らかにした。これにより累積の資金調達額は10億円となる。
今回のラウンドでの引受先は、リード投資家として、新たにグロービス・キャピタル・パートナーズ。また、既存投資家のインキュベイトファンド、Coral Capital もフォロー投資を実施している。
調達した資金は、さらなる事業成長を目的として、セールスや開発を中心とした組織拡大に充て、企業の調達・購買部門のインフラを目指す。
調達のスタンダードを刷新し続ける
株式会社Leaner Technologies は「調達のスタンダードを刷新し続ける」をミッションに掲げ、製造業を中心とした企業の調達・購買部門向けにクラウドサービス「Leaner見積」を提供している。
昨今、あらゆる企業活動においてデジタル化が進んでいるが、企業の買い物、すなわち調達・購買活動においては、未だにアナログな業務環境が中心となっている。
特に、調達・購買活動が利益率に直結する製造業を中心に、数多くの業者から価格も異なる中で、最適な購買活動を行うにあたって、複雑な見積プロセスを要して、多くの苦労を抱えている。
Leaner見積は、そのような見積プロセスをデジタル化する、プラットフォームサービス。
調達を行う買い手(バイヤー)は、Leaner見積を導入することで、サービス上でさまざまな売り手(サプライヤー)から、見積を取得することができる。また、見積書や交渉履歴をデジタル上で管理することができ、過去分を含めて価格情報をデータベース化することで、以前の価格からの変動を明示するなど、戦略的な原価低減活動の実現を支援する。
同社によると、2021年4月の正式リリース後、大きく事業を伸ばしており、売上は今年に入ってから月次で約1.5倍のペースで成長、同社を利用する企業数は売り手と買い手をあわせて、既に2000社を超えたという。
今後は、現在40名の組織規模を23年3月までに100名規模に拡大して、さらなる事業成長を目指すとともに、年内には購買プロセスを同じくデジタル化する「Leaner購買」の正式リリースを予定している。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 大平裕介氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
見積りプロセスのデジタル化をスタンダードに
―― 「Leaner見積」を始めたきっかけを教えてください。
もともと前職は外資系のコンサルティングファームに勤めており、様々なプロジェクトに携わっていましたが、私が見た中で最も課題が大きかったのが、調達・購買の領域でした。
グローバルではこの調達・購買の領域でも、ものすごい勢いでデジタル化が進んでおり、近年では、データに基づいた分析や調達・購買の最適化が実現されています。
一方で、日本においては、未だに多くの現場で人が介在してデジタル化が遅れている状況で、同じくデータに基づいた業務や分析で競争優位性を作っていかないと、日本企業はさらに厳しい状況になるという課題感から創業して、当初は企業の購買活動を見える化する分析サービスを始めました。
ただ、実際に深く入り込んでみると、想像以上にデジタル化は遅れている状況でした。日本を代表するような企業であっても、毎日膨大な量の見積書類が、FAXや前近代的なシステムで送られてきます。そして、それらの紙書類を整理・管理する非効率なアナログ業務で、調達・購買部門の担当者は日々忙殺されています。さらに、紙書類と属人的な業務プロセスにより、データを活用するどころか、分析可能な購買データがないというのが日本の現状です。
そのため、お客様にサービスのご案内をすると、ぜひやりたいとおっしゃっていただけるものの、日々の見積業務に忙殺されており戦略的な購買活動をする時間がない。分析をしたくても、そもそも十分な見積データを保有できていない状況でした。
まずは、これまでFAXや紙書類、電話でやりとりされていた見積プロセスを、抜本的にデジタル化するところからチャレンジしなければいけないと考え、「Leaner見積」のリリースに至りました。
―― 今回の資金調達を経て、今後の中長期的な展望を教えてください。
現在、製造業の方々を中心に非常に多くの方々にご利用いただいているので、まずはしっかりと目の前のお客様に価値を提供するため、プロダクトを強化していきたいと思っています。
加えて、お客様と一緒にデジタル化を進めるセールス部門を拡大して、Leaner見積に関しては、3〜4年以内に「いまどき、まだ見積をデジタル化していないの?」という世界を創りきりたいと思います。
日本企業が世界で戦うためのインフラ創り
今日のコロナウイルスの蔓延や不安定な世界情勢により、多くの日本企業が購買活動に苦戦しています。このような苦しい局面に置かれているからこそ、調達・購買プロセスをデジタル化することで、安定的な調達活動を実現し、企業の利益率を高め、競争優位性を作っていきます。そして、それこそが、"Japan as No.1"と称された日本企業を取り戻すことに必要不可欠だと考えています。
現在は、日本の基幹産業である製造業を中心にサービスを提供しています。日本の基幹産業の利益率をグローバル標準以上に高めることが、起業した理由の一つでもありますし、調達・購買を最適に行えるようにするデジタルインフラを作ることが、日本企業が世界で戦っていく上で、必ず必要だと確信しているので、その大きな課題に取り組んでいます。
私たちが掲げる「スタンダードを刷新する」ことはとても長い戦いですし、大変ではありますが、その分、熱狂できることだと思っています。調達・購買部門は一般的に広く知られている部門ではありませんが、間違いなく日本企業の今後を左右する非常に重要な機能です。世の中を大きく、根底から変えていくことに、熱をそそぐことができるメンバーと一緒に働けたら嬉しく思います。