5.2億円調達のCODEGYMが学費後払いモデルで挑む、プログラミング教育の機会拡充
プログラミング学習サービス「CODEGYM(コードジム)」を運営する株式会社CODEGYMがプレシリーズAエクステンションラウンドにて、第三者割当増資とデット・ファイナンスによる5.2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。合わせて、LABOTからCODEGYMへの社名変更を発表した。
今回のラウンドでの引受先は、Z Venture Capital株式会社、株式会社ベクトル、株式会社デジタリフトの3社。
調達した資金は、広告やマーケティングなど認知度向上の施策に充て、サービス拡充を目指す。
学費の後払いも可能なプログラミングスクール
CODEGYMは、プログラミング教育に関する各種サービスを提供。異業種から転職志望の社会人、エンジニア志望の学生向けのブートキャンプがあるほか、主にビジネスパーソンをターゲットとしたプログラミング学習コーチング事業、法人事業にも力を入れている。
プログラミングスクール事業においては、学習内容と実務の乖離が課題だという。その結果として、卒業生の転職先であるIT業界の高い離職率につながっているとも考えられている。
同社は学習支援サービスとして、主にビジネスパーソン向けにコーチングを通じて学習支援する「CODEGYM Monthly」、転職やキャリアップを目的としたの「CODEGYM エンジニア転職」、協賛金による非営利事業で学生向けの「CODEGYM Academy」などを運営。
中でも「CODEGYM エンジニア転職」は、教育機関の新たな支払い方法として、卒業後の所得に連動して学費を後払いできるISA(Income Share Agreement/所得分配契約)を、日本で初めて採用した。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 鶴田浩之氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
いつでも学ぶ機会にアクセスできるプログラミング学習
―― プログラミング学習サービスを始めようと思ったきっかけを教えてください。
鶴田氏:教育事業は以前から携わりたかったことの一つです。私には不登校を2年経験したバックグラウンドや、コンプレックスがありました。たまたま運が良く、プログラミングを通じて社会との接点や仕事に繋がるスキルを身につけることができました。
プログラミングは、大学生でも、大人になってからでも、いつでも学ぶことができます。人は誰でも挑戦すれば新たな可能性を広げていける。私はそう考えているので、当社は「人の可能性に投資する」というコーポレートスローガンを掲げています。
―― これまで、プログラミング教育にはどのような課題がありましたか?
プログラミングスクールで学んだこととIT企業での実務にはやはり乖離があり、そのギャップに悩んで、スクール出身者の2〜3割は離職してしまうのが現状だと考えています。私たちのサービスの受講生は、IT業界での離職率を少しでも下げ、長期的な視点で活躍できる人を増やしたい。常に人手不足の業界なので、学び続ける力を持った、エンジニアの労働生産性を向上させていく必要があると考えています。
卒業生の活躍で世の中を変えていきたい
―― ISAの仕組みを採り入れた背景についても教えてください。
スクールに入れば上手く行く、と無条件に思わずに、主体性をもって取り組める方を、私たちは支援します。まずは自身の努力があってこそ、そしてそれをサポートする存在があって大きな成果が出ます。教育の本質を考えていくなかで、自社の独自性に繋がっていると考えています。
ISAの採用は、教育のあり方に一石を投じる挑戦にもなると思います。ISAは学生が長期的に成功しないかぎり収益が発生しないため、教育機関にとって受講生に寄り添うという本気度が違います。途中で挫折していつ辞めても金銭的リスクが少ないため、自分の内発的動機付けで残った卒業生は、主体性があり、学ぶ力を持っており、厳しいカリキュラムを乗り越えた一定の優秀さを示すことができると考えています。
お客様と“教育”で関わった結果、お客様の成功の積み重ねによって、世の中をより良い方向に変えていこうというのが、私たちのアプローチです。例えば、卒業生が「開発者」として身近な問題を解決するだけでなく、本人の所属する企業がDX化が進んだり、世の中に影響力のあるプロダクトを生み出すとか、コードが書ける経営者として、卒業生自身が起業することもあるでしょう。そういった長期的な視点を持っています。
誰もが挑戦できる社会を目指して
―― 資金調達の具体的な使途について教えてください。
市場環境が冷え込む中、今回は基本的にバリューアップに向けて力を蓄えていくラウンドで、成長を止めないためのファイナンスというイメージです。主な使途はマーケティングコストや注力部門での新規採用、広告投下やコンテンツマーケティングの強化、PRの相乗効果によってISAの認知度を上げていきます。
また、現在は年間数百名の学生を受け入れています。業務委託パートナーである講師、コーチ陣だけでなく、受講生の満足度や成功に必要不可欠な、カウンセラー、キャリアアドバイザー職の拡充も視野に入れています。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
CODEGYMというテクノロジー教育企業としての展望としては、中学生からアクティブシニア層までペルソナを広げることや、コーディングに限らず、デザインなどカリキュラムの多角化が挙げられます。今後ニーズが高まるであろうサイバーセキュリティなどの教育コースも作ってみたいです。また、海外展開についても、若年層の人口増加が著しい東南アジアを中心に、機会を常に模索しています。
グループ会社全体として、誰もが家庭環境や経済的事情によらず、平等に教育の機会にアクセスし、挑戦できる社会を作っていきたいですね。現在シンガポールを拠点で準備している、ISAの金融事業(教育機関向けの金融ソリューション)を通じて、2028年までに500億円規模のISAによる教育資金の支援ができればと考えています。