DeNAとの資本業務提携で「楽しい買い物」を次のステージへ──カウシェがIPO・成長見据え組織強化

DeNAとの資本業務提携で「楽しい買い物」を次のステージへ──カウシェがIPO・成長見据え組織強化

xfacebooklinkedInnoteline

お買い物アプリ「カウシェ」を運営する株式会社カウシェは、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)と資本業務提携契約を締結したことを2026年3月3日に発表した。

本提携を通じて、DeNAはソーシャル・ゲーム領域で培った知見と人材を提供し、カウシェのプロダクト開発力および組織力の強化を支援する。カウシェは今回の提携を、将来的なIPOとその先の事業成長へ向けた加速手段と位置づけている。

あわせて、2026年3月1日付でDeNAのAIイノベーション事業本部 本部長である住吉 政一郎氏が社外取締役に就任。カウシェ社内では後藤 洋平氏が取締役CFOに、佐藤 俊輔氏が執行役員CXOに就任し、経営体制を強化する。

同社が運営する「カウシェ」は、AIフィード型の「発見型EC」アプリである。アプリ内でコーヒーやミニトマトなどの作物を育てて収穫すると実際に商品が届く「カウシェファーム」や、ユーザー同士が商品体験を共有する「みんなの投稿」機能を備える。欲しいものを検索して的確な商品を探す「合理的なEC」とは対照的に、商品との偶然の出会いや、ゲーム感覚の購買体験を押し出しているのが特徴だ。

「カウシェファーム」:ゲーム感覚で水やりを行い、作物を収穫すると、100%OFFクーポンが発行され、商品を無料でもらえる仕組み。作物に名前をつけることができるなど、ゲーム性が高い。
「カウシェファーム」:ゲーム感覚で水やりを行い、作物を収穫すると、100%OFFクーポンが発行され、商品を無料でもらえる仕組み。作物に名前をつけることができるなど、ゲーム性が高い。

「カウシェ」アプリは累計500万ダウンロードを突破。本サービス開始後のGMVは30倍、売上総利益は252倍に成長しているという。

今回の資本業務提携について、代表取締役の門奈 剣平氏と取締役COOの山田 悠太郎氏に聞いた。

なぜ今、資本業務提携に至ったのか

──今回、DeNAとの資本業務提携に至った背景を教えてください。

門奈氏:カウシェはこれまで順調な成長を続けてきました。ピボット後のDAUは68倍になり、ユーザーの月間滞在時間は平均17.4時間と、主要な大手SNSアプリに近い水準となるなど、量と質の両面で手応えを感じています。

一方で、事業の成長に対して組織側の整備が追いついていない歯がゆさがありました。ピボット後の約2年間は採用を止めており、再開したのは昨年6月からです。開発を加速させるためのPdMやデザイナー、エンジニアが足りず、開発ロードマップが消化しきれないまま期が進んでいたのです。

そこで、株という「現代の武器」を通じて、資本出資と業務提携をセットで組めないかと考えました。DeNAのCVCであるデライト・ベンチャーズには2021年のシリーズA以降、合計3回出資いただき、信頼関係も構築できていました。この関係をDeNA本体との提携という形に発展させていこうと、昨年の夏頃から話し合いを重ね、2月に契約に至りました。

山田氏:カウシェはソーシャル性とゲーミフィケーションを取り入れたサービスですが、ソーシャルゲームのグロースをどう設計するかという観点では、私たちはいわば素人集団です。DeNAの方々と壁打ちをしていく中で、ゲーミフィケーションのサイクル設計やユーザーグロースの型に関する知見が非常に豊富だと改めて実感しました。自前で「車輪の再発明」を繰り返すよりも、世界最高峰の知見を借りてすぐに実践したほうがいい。そう判断しました。

門奈氏:今回社外取締役に就任いただいた住吉さんからは、「カウシェのECは全く合理的でないところが良い」というお言葉をいただいています。「検索して素早く買える」という合理的なEC体験は、多くの先行企業がすでに実現しています。カウシェはその逆張りとして、「買い物は楽しいほうがいい」という体験を追求してきました。その方向性にプロダクトとしての「化ける」パワーを感じていただけたのではないかと思っています。

DeNAのゲーミフィケーションの知見を活用し、ユーザー体験を磨く

──今回の提携はどのような点が特徴的でしょうか。

山田氏:今回の提携では、カウシェ側は経営の独立性を保ちながら、DeNAから人材や技術・知見の面でサポートいただきます。

プロダクト戦略・UX設計の知見をご提供いただくほか、デザイナー・エンジニア・PdMなどの実務人材に出向いただき、AI・MLおよびデータサイエンス領域での技術も提供いただく予定です。

大企業とスタートアップの提携というと、営業網や製造拠点といった有形アセットを活用するケースが一般的ですが、今回は、知見や人材という無形のアセットを軸にしている点で珍しいと思います。

──足元ではどのようにDeNAの知見を活用していかれますか。

山田氏:まったく新しい機能やプロダクトをゼロから作るというより、「カウシェ」の中にすでにある「ユーザー価値の芽」を見つけていきます。

例えば「カウシェファーム」では、アプリ上で友達がいるかどうかでユーザーの関与度が大きく変わります。友達がいると互いの作物に水をあげ合う機能を使うことができ、アプリを開く頻度が上がりますが、いないとやることが途切れがちです。

だからこそ、ユーザーをその状態にどう誘導するかが鍵になります。「体験のどこに楽しさがあり、そこまでの導線をどう設計するか」を見極めるゲーミフィケーションの観点はDeNAの知見がまさに活きる領域です。

ソーシャル×コマース×AIで、日本発スタンダードを狙う

──今後のプロダクト開発については。

山田氏:カウシェのビジネスを支えているのは、ユーザーの圧倒的な接触頻度と滞在時間です。アクティブユーザーの月間滞在時間が平均17.4時間という「量の強み」を持っています。次はそこで得られるデータを活用して「質の強み」を積み上げていく段階になります。

具体的には、データ活用によるレコメンドの質を向上させていきます。

現在は、アプリ内の購買・行動データをもとに機械学習でレコメンドをしていますが、今後はそういったデータの取得範囲を広げることも検討中です。例えば提携カードを発行すれば、アプリ外でカード決済をした際の購買履歴も取得できるようになり、ユーザーの趣向性をより立体的に把握することができます。

また、ユーザーが買い物後に投稿する「みんなの投稿」にも大きな可能性があります。この投稿には商品そのものの評価ではなく、「孫とこのおもちゃで一緒に遊んだ」「この食材で料理を作ったら家族が喜んだ」といった、商品を通じた生活の変化や価値観が色濃く表れています。この投稿を自然言語処理で解析すれば、通常のデモグラフィック情報では見えてこないユーザーのライフスタイルや価値観をデータとして取得することができると見ています。

商品を通じた体験をユーザーが投稿する「みんなの投稿」機能。画像とともに投稿でき、「いいね」数表示やフォローの機能があるなど、SNSを思わせる。
商品を通じた体験をユーザーが投稿する「みんなの投稿」機能。画像とともに投稿でき、「いいね」数表示やフォローの機能があるなど、SNSを思わせる。

TikTokが「動画の質」と「ユーザーの好み」によってフィードを構成し、「ユーザーが知らなかったけど欲しかったもの」に出会わせるように、カウシェでも商品との偶然の出会いを設計していきたい。「自分でも気づいていなかったものに出会えた」という体験を届けることが目標です。

──今後の意気込みをお聞かせください。

門奈氏:この提携を日本におけるトップクラスの成功事例にしていきたいと思っています。現時点でもDeNA側からすでに十数名が並行して関わってくださっており、出向という形に限らず知見を提供いただいています。

正社員約30名の小さなベンチャーが、必要な局面に応じてDeNAの人材リソースを借りながら開発力・企画力・専門性を高めていく。単に資金を調達するのではなく、人と知見という無形の資産を活用してスタートアップが非連続的に成長するモデルを、カウシェが体現できればと思っています。

ソーシャル×コマース×AIという、まだ誰も切り開いていない領域で日本発の新しいスタンダードを作っていく。今回の提携はそのための追い風です。ここからが本当の勝負だと思っています。

KEPPLEオープンイノベーション支援

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

ケップルグループの事業