物語運輸株式会社

変わることで、守られる──伝統工芸の進化と継承
日本の伝統工芸は、千年以上にわたって受け継がれてきた技術と美意識の結晶でありながら、今まさに岐路に立たされている。高齢化や後継者不足、そして大量生産・大量消費を前提とした現代の流通構造により、多くの伝統工芸が市場の主流から遠ざかっている。実際、経済産業省によると伝統的工芸品産業の出荷額は、ピークだった1983年の約5400億円からは減少が続いている。※
一方で、テクノロジーとの融合によって、伝統工芸に新しい命を吹き込もうとする動きが加速している。3DスキャンやAR(拡張現実)によるオンライン展示、NFTを活用した真贋保証と収益化、越境ECによる販路拡大など、かつて想像できなかった形で職人技が再評価され始めている。
政府は近年、伝統工芸や文化財のデジタル化・海外発信を支援する取り組みを進めている。たとえば文化庁は、「文化財研修事業」や「地域文化財総合活用推進事業」などを通じて、後継者育成やデジタル技術の活用を後押ししている。こうした流れの中で、伝統工芸は単なる保存対象にとどまらず、新たな産業資源としての可能性にも注目が集まりつつある。
こうした状況の中、テクノロジーを武器に伝統工芸の未来を切り開こうとするスタートアップの存在感が増している。デジタルと手仕事の融合は、新たな市場価値の創出だけでなく、継承という課題の解決にもつながっている。
本記事では、伝統工芸×テクノロジーに挑むスタートアップの最前線に迫る。
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スタートアップ5選
物語運輸株式会社
企業HP:https://monoun.jp/
日本の職人が手掛けるMade in Japanの逸品を、各商品の背後にある職人の物語と共に届けるECサイト「ナラティブ・プラットフォーム」や、日本の伝統工芸文化を体験できるデリバリー型ワークショッププログラム「ジャパンカルチャースタジオ」、日本の伝統工芸である器に関する歴史、産地、素材、文様、技法などを学び、テーブルコーディネートの技術を習得するための資格取得講座「うつわソムリエ」などを展開している。
2024年11月には、盆栽レンタルの新サービス「BONSAI LUXE(盆栽ルクス)」を開始した。季節に合わせた盆栽の交換やメンテナンスにも対応しており、リースは最短1日から可能。室内外を問わず理想の空間を演出する。
株式会社Culture Generation Japan
伝統工芸や地域文化を活かした事業共創を手がける企業。同社が提供する「Onland」は、日本のものづくりの現場を巡るクラフトツアープラットフォーム。まだ観光化されていない日本各地のものづくり産地を対象に、地域で活動するローカルプロデューサーの案内のもと、その土地に根ざした文化とものづくりに触れる旅を企画・提供している。他にも、選定されたうつわを定期的に届けるサブスクリプションサービス「CRAFTAL」や、クラフトとコミュニティをテーマにさまざまな文化活動を提供する拠点「TOI BLDG.」なども展開している。
2025年1月には、伝統工芸品インテリアのサブスクリプションサービス「CRAFTAL INTERIOR」の提供を開始した。
ニューワールド株式会社
企業HP:https://neworld-japan.com/
日本製品を取り扱うECサイト「CRAFT STORE」を運営し、商品企画・ブランド開発・デジタルマーケティング・物流サポート・国内クラウドファンディング支援を含め、企画から販売まで一気通貫でサポートする。企業の強みやビジネスモデルを整理し、新商品の企画やブランド再構築、販売戦略設計を通じてD2Cブランドの立ち上げを支援している。2023年2月に台湾支店を開設し、台湾市場での調査・テストマーケティングや越境クラウドファンディング支援、ローカライズ施策、海外物流対応などを提供。ほかにも、米国等のクラウドファンディングプラットフォームでのプロジェクト設計、クリエイティブ制作などを行っている。
2025年6月には、ブレスホールディングスに全株式を譲渡し、同社の完全子会社となった。ニューワールドとブレスインターナショナルの事業を統合しシナジーを最大化することで、日本発ブランドの世界展開を加速することを目的としている。
株式会社KASASAGI
歴史的・文化的な素材や伝統工芸品を企画編集し、世界へ発信するプロデュース事業を展開。オンラインショップ「KASASAGIDO」を運営し、全国各地の職人と連携して厳選された伝統工芸をECで提供している。
2025年2月には、一級建築士事務所「KASASAGI STUDIO」を設立。伝統工芸を建築・内装空間に活用する空間設計・施工をデザインビルド型で展開する。
株式会社アルテスペース
全国の伝統的工芸品を販売する「Nihon Miyabi 浅草本店」を運営している。店内では、国内向けの良質な伝統工芸品のギフト商材や、外国人観光客向けのお土産を提供。「Omotenashi Selection(おもてなしセレクション)」では、外国人観光客との対面接客を通じて得た最新のトレンドや人気アイテムをデータベース化し、「外国人 男性・女性」、「年代」「地域」などの複数のデータに基づいて相手に喜ばれるギフトを提案する。

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※一般社団法人日本工芸産地協会 「地域サプライチェーンと小規模事業者の関係 ~工芸業界の場合~」