トライエッティング、累計11.3億円の資金調達を達成──地域大手とAI活用による協業強化へ

トライエッティング、累計11.3億円の資金調達を達成──地域大手とAI活用による協業強化へ

xfacebooklinkedInnoteline

名古屋大学発のAIベンチャー、株式会社トライエッティングが第三者割当増資による資金調達を実施し、累計で約11.3億円の資金調達を達成した。今回の調達には、食品スーパーのアオキスーパーおよび商社の三栄商事が新たに引受先として参加している。

トライエッティングは2016年6月に設立され、サプライチェーン領域における業務特化型の拡張知能(Augmented Intelligence)製品を開発・提供している。主力サービスは、ノーコード予測AI「UMWELT(ウムベルト)」とシフト自動作成AI「HRBEST(ハーベスト)」の2つである。「UMWELT」は、プログラミング知識を必要とせずに需要や売上の予測、生産計画の自動化を可能にし、Excelデータとの連携も特徴となっている。また、「HRBEST」はスタッフの希望や各種制約条件を考慮した最適なシフト配分を自動で作成することができる。

これらのサービスは、製造業、小売流通、物流、福祉・医療など多様な分野で導入が進んでいる。菓子メーカーやスーパーマーケット、障害者支援施設などの現場で、予測や計画業務の効率化、業務の属人化解消を目的に活用されている。導入先には定期航路を運営する船会社やコールセンターなども含まれる。ビジネスモデルとしてはサブスクリプション型のSaaSを採用し、クラウド基盤を活用してBtoB市場への展開を図っている。

代表取締役社長の長江祐樹氏は、名古屋大学の工学系研究成果をもとに共同創業した人物であり、CEO兼CRO(Chief Research Officer)も務めている。創業時の動機には、データサイエンスの知見を産業界や社会課題の解決に生かすという思いがあったとされる。

AIを活用したサプライチェーン業務の効率化は、近年の人手不足やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を背景に、製造・小売・物流現場での需要が高まっている。シフト作成や需要予測、生産計画といった業務は従来、担当者の経験や勘に依存し煩雑さが課題とされてきたが、ノーコードAIやSaaS型サービスの普及により自動化が進んでいる。経済産業省の調査によると、AIや機械学習を活用した予測・最適化市場は2024年には国内で1兆円規模に拡大する見通しとなっている。シフト管理や需要予測AIの分野では複数のスタートアップが参入しており、競争が激しい状況にあるが、中部・東海地域発のベンチャーによる事例は少数にとどまっている。

今回調達した資金は、既存製品の販売強化、研究開発投資、人材採用、組織体制の拡充などに充てる予定である。また、今回出資したアオキスーパーおよび三栄商事と連携し、それぞれ人員や物流計画、生産計画の最適化などをテーマとした実証プロジェクトも推進していく方針だ。いずれも愛知・名古屋地域の大手企業と連携し、地域課題の解決を目指す取り組みとなる。

サプライチェーンAIや予測分析SaaS市場は米国や欧州でも成長が続いており、国内でもAIベンダーや自動化関連スタートアップによる資金調達や上場が相次いでいる。業務現場での導入の容易さや柔軟性、現実の業務課題に即したカスタマイズ対応が競争力の要素となっており、ノーコード型やSaaS型製品を提供する企業間での競争も激しい。そうした中、地場ネットワークを活用した地域密着型の協業や、製造・流通現場への垂直展開が差異化のポイントとされている。

トライエッティングは今後、AI技術を活用した計画業務の自動化分野におけるサービス拡大と、地域大手企業との協業を通じた実証事例の創出に取り組む計画である。

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

投資家向けサービス

スタートアップ向けサービス